ギックスの本棚|デザインコンサルタントの仕事術(英治出版):画期的な「着想~実現」のための方法論を学ぼう

AUTHOR :  田中 耕比古

知ってる、じゃなくて、やりましょう。

デザインコンサルタントの仕事術

本日は、”IDEOと肩を並べる世界有数のデザインファーム”と評されるfrogの思考の方法論を紹介した一冊「デザインコンサルタントの仕事術」をご紹介します。

積読してた自分を呪いたい なう

本書は、2014年11月に発売されています。そして、僕は発売直後に購入しました。それから1年半近くのときが流れた2016年4月。自宅のデスクの上で他の多くの”積読本”(つまり、読もうと思って買ったままで放置されている本)の中に埋もれたこの一冊を手に取った僕は、激しく後悔しました。

「なぜ、ぼくは、この本をさっさと読まなかったのだろうか」と。

火の鳥を読み解いている場合ではなかったのではないか、とか、バガボンドを必死で読み込んでいる場合ではないのではないか、とか思っちゃうわけです。なんなら、本を書いている場合でさえなかったんじゃないか、とまで思うくらいですよ。ほんとに。

それくらい、僕の魂にグッときた本書「デザインコンサルタントの仕事術」は、僕のようなコンサルティングを生業とする人間にとっては、日々の業務に直結する最高の思考の指南書だと言えます。

アイデアの検出・具現化のための5ステップ

本書は、「デザインコンサルタント」という職業において、どのようにアイデアを見つけ、それを具現化するかについて解説した一冊です。

まずは、帯にも記載されている5つのステップを紹介しておきましょう。

第1部 仮説、チャンス、アイデア

  • 第1章 破壊的仮説を立てる ー 正解するために、まずは間違える
  • 第2章 破壊的チャンスを見つける - いちばん目につかない場所を探る
  • 第3章 破壊的アイデアを生み出す - 想像もつかないアイデアには競争相手もつかない

第2部 ソリューションとプレゼン

  • 第4章 破壊的ソリューションを仕上げる - 「新しさのための新しさ」は無駄
  • 第5章 破壊的プレゼンで売り込む - 聴衆の心をつかむストーリーのつくり方

第一部で、おなかいっぱい。

続いて、それぞれのエッセンスを抽出してみます。まずは、第一部です。

第1章:破壊的仮説は、破壊したい”対象”と、その領域の”常識”を見極め、「常識の180度逆をいく」ことだ

常識の180度逆をいく、の他にも、「常識を否定する」、「常識に対してスケールアップ・ダウンをはかる」が紹介されます。要は、ちょっとぶっ飛んだことを考えようね、ってことです。当たり前のようですが、これはなかなかできないことなので、”無理を承知で一回トライしてみる”というのはとても大切です。

第2章:破壊的チャンスの検出には”現実世界を見つめ”て、”テンションポイント”を見いだせ

一般的に、顧客調査と言うと”ペインポイント”を探しがちだが、顧客自身が痛みを感じていないケースも多い。そういうときには、目立った痛みを伴うというほどでもなく「ストレスを感じているポイント」=”テンションポイント”を探すと良いのです。顧客は往々にして自ら何を欲しているかを明確に括りだせていません。それを見極めるコツがテンションポイントの発見です。ふむふむ。

尚、集めた情報は、取捨選択する前に「可視化」して、グルーピングしておくことを推奨されています。人は、重要な発見(あるいは、重要だと主観的に思いこんでしまった発見)だけに目を奪われてしまいがちですから、その背後に潜んだ細かな発見も可視化することが重要なのです。このあたりが「センス」ではなくて、「スキル」「テクニック」に落とし込まれているな、と本書を評価したくなるポイントの一つです。

第3章:破壊的アイデアは、チャンスを分解して見つけ出した”利点”と”すき間”から考え出すべし

チャンスは、アイデアには直結しません。そこで、まずはチャンスを要素分解し、「誰の、どういう困りごと・要望(すき間)を、どういう機能(利点)で埋めるべきか」という風に考えてみるのです。そして、その”利点”を提供するシーンを想像し、さらに”すき間”を埋めるためのやり方を考えていけば、チャンスはアイデアへと変化します。

さらに、そうして見出された複数のアイデアの、”利点”や”部分”を混ぜ合せてみることで、より洗練されたアイデアとなる、と本書では述べられます。

ここまでで、僕としてはお腹いっぱいです。日々の業務で、この3つのステップを意識していくだけで、僕のアイデア発想力は「効率的に」なるなと感じます。正直なことを言うと、これらのステップをこなしても、僕の場合は「高度な発想」にはつながらない気がしています。しかし、体系的に物事を考えるための手法というものは地図みたいなものです。迷子にならないためのツールなのです。よって、本書が、もし、あなたを”より高み”に連れて行ってくれないとしても、一読に値する書籍なのは間違いない!と僕は思うのです。(もちろん、目的地が定かでない方が読めば、間違いなく”高度化”にもつながります。)

第二部はさらりと。

おなかいっぱいになったので、第二部はさらっと流します。

第4章では、アイデアをプロダクトに落とし込む話が語られます。基本的に「具体的なモノ」が成果物としてでてくる想定ですので、デザインシンキングの手法が取り入れられていますね。早いタイミングで荒くて良いからプロトタイピングして、実際のユーザーに触らせてフィードバックを得よう、という意味では、リーンスタートアップの思想にも近いです。ただ、ここで重要なのは、想定ユーザーからのフィードバックを「馴染みが無い拒絶」と「本質的な拒絶」に分けて考える、ということです。うん。ほんとに大事だと思います。これ。

第5章では、そのプロダクト(ソリューション)をプレゼンする、というお話です。端的にいえば9枚のスライドにまとめて、9分間で説明せよ、というお話です。その9枚とは、①共感「1-1.現状⇒1-2.観察⇒1-3.物語」→②緊張「2-1.洞察⇒2-2.チャンス⇒2-3.比喩」→③信頼「3-1.ソリューション⇒3-2.利点⇒3-3.エトス」で構成されます。なんのこっちゃと思う人もいれば、この見出しだけで「おおぅ!」となる人もいるでしょう。いずれにしても、目を通しておいて損はないですよ。

 

過去、いろいろな本を紹介してくるなかでも語った通り(ゼロ秒思考しかり、5mm方眼しかり)「知ってる」で立止らないで「実際にやってみる」が重要です。本書も、日々の業務に役立つノウハウが詰まっていますので、読んで満足せず、また、知ってることしか書いてないから意味がないと断じることもなく、しっかり実践してみるとよいのではないでしょうか。若手からプロまで幅広く使える一冊だと思いますよ。

デザインコンサルタントの仕事術
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