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高度なことをしようぜ、という悪魔の囁き
本日は、”初心者”が陥りがちな、「基本を無視して、高度なことをしたくなる癖」について考えてみたいと思います。
道を究める vs ちょっと試してみる
何かを究めようとするとき、日本では「道」という言葉を使うことが多いです。剣道、柔道、弓道、華道、茶道などですね。剣道や柔道の上位概念として、武道という言葉もありますし、それらの精神性に関しては武士道という言葉もあります。
「道」は、長く険しいです。簡単に目的地に到着することはありません。延々と歩き続けることが求められます。
しかし、世の中には「道」を究めるのではなく、「ちょっとやってみる」という思想が横行しています。これは、環境が変わってきたためであり、必ずしも悪いことではありません。例えば、スキーやスノーボード。昔は、自分で道具を一式購入して、不便な山道(しかも雪道)を自分で運転していくということで、相当の「覚悟」が必要でした。そのため、一度買ったら、それなりの期間をやり続ける前提でした。しかし、現在は、GALA湯沢のように、新幹線で目の前まで行けて、現地で道具を一式レンタルし、滑るだけ滑って終了、ということができます。こうなると「ちょっと試しにやってみる」ということが可能になります。
かくいう僕も、この記事を読んで、感化され、ポータブルDJマシンなるものを衝動的に購入してしまいました。昔からクラブ通いなんてしたこともないんですけど、「音楽をミックスする」という行為に対しては興味があったんですよね。そんな僕にとって「色んな機材を沢山買わなくてもこれ1台(とスピーカー)でOK」というのは非常に魅力的で”気軽に”トライしてみたわけです。
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ちょっとやったら、できるつもりになっちゃう
Amazonで衝動買いすると、翌日には届いてしまうわけですね。そうすると、ちょちょちょいっといじってみることになります。週末に2日間ほどいじってみると、いろいろ面白いな、と感じました。
参考にしたサイトは、このあたり。
こういうのを読みながら、あれやこれやを試していると、「あ、なんか、ちょっとできたかも」と思うわけですね。
しかし、当然ながら、それは「知識ゼロ」から「初心者」になったに過ぎないわけです。この時点で「おれ、できるじゃん」と思うのは、”勘違い”って奴です。
ただ、まぁ、趣味の世界でどれだけ勘違いしても、他人には迷惑を掛けません。勝手に勘違いしていればいいんです。問題は、これを「仕事」においても踏襲してしまった場合です。器用な人ほど、その傾向が強いです。気を付けましょう。
「基本」をおろそかにして「応用」は無い
その勘違いが最も厄介なのは、自己流で始めて何かができたからと言って「それって、”できてる”わけじゃないんだよ」ということへの理解のなさです。
例えば、料理。自己流でも、それなりに美味しいものは作れるようになります。しかし、それだと「作れる料理と作れない料理」の差が大きくなります。野菜の切り方や、調味料を入れる順番などを”知らない”まま、好きな料理を好きな味に仕立てているに過ぎません。それは「料理ができる」というよりは、「自分の口に合った食べ物を、自分で用意できる」という方が正確です。(それが「悪い」ということじゃないですよ。一般的に、料理は”仕事”じゃありませんからね。)
本当に基本ができていれば、応用が効きます。一方、基本ができていないと、応用しようにも”軸になるもの”・”起点になるもの”が定まっていませんので、なかなか困ったことになります。(いわゆる「軸がブレる」ってやつです)
この「まず基本があって、次に応用がある」というのは、仕事において極めて重要です。プレゼンテーションのやり方、営業スタイル、ミーティングのファシリテーション、言葉遣い、など、あらゆる状況で「基本」があって、応用があります。端的な例は「言葉遣い」ですね。例えば、上司やクライアントなどの目上の方に対して、敢えて”ため口”を混ぜて距離を縮める、というテクニックがあります。しかし、これは超応用技術です。こんなことを、敬語も使いこなせないのにやっちゃうと、大怪我をします。
余談ですが、弊社が提供するデータビジュアライズサービス「graffe」のレポーティングも「基本から始めて、応用に進む」という思想で組み立てられています。一事が万事、ってことですね。
”守破離”で行こう
さて、そういう「まずは基本を押さえ、崩すのはそれから!」という考え方は昔からあります。代表的なのが「守破離(しゅ・は・り)」でしょう。
まずは師匠に言われたこと、型を「守る」ところから修行が始まる。その後、その型を自分と照らし合わせて研究することにより、自分に合った、より良いと思われる型をつくることにより既存の型を「破る」。最終的には師匠の型、そして自分自身が造り出した型の上に立脚した個人は、自分自身と技についてよく理解しているため、型から自由になり、型から「離れ」て自在になることができる。
当記事の冒頭で述べた「道」という概念は、この「守破離」という考え方と非常に相性が良いです。
仕事においても同じです。型を守るところから始めましょう。
守る前に「知る」ことから始めよう
しかし、ここで大切なのは「守る」ためには、まず、型を「知る」ことから始める必要があるということです。
自己流でやっちゃう人の多くは、この「知る」というステージを軽視するんですね。上司や先輩に教えてもらってもメモを取らないとか、分からないことを質問しに行かないで自分で適当にやっちゃう、とか、そういう行動をしてる人は「知る」を怠っています。反省しましょう。個人で仕事してるなら、別にいいと思うんですけど、会社組織でチームプレイをするなら型を知り、型を守るところから始めたほうが、絶対に効率が良いです。(個人的には”起業する”も含めた、個人で仕事する場合にも、一応型はあると思うんです。ただ、成功するかどうかの不確実性が高すぎて、その型に意味があるかどうかが良くわからない、というだけかなと。とはいえ、大勝ちしたいなら型破りはアリですが、小さく食いつなぎたいなら基本に忠実な方がいいですよ。ほんとに。)
会社や仕事の内容によって、1ヶ月がいいのか、1年がいいのか、3年が良いのかはわかりませんが、少なくとも一定期間は「染まる」覚悟で、「知る」「守る」を徹底した方が良いです。
自分の例で恐縮ですが、僕は新卒でSEになってから2年間は、徹底的に社会人らしく&SEらしく振る舞うこと(=「守」)に注力してました。3年目にアメリカ駐在をしたあたり、「破」を意識し始め、「離」で戦略コンサルタントへの転職を決めました。で、アクセンチュア戦略グループに入ってから、1年くらいは「知る」に注力してました。右も左も分からなかったので、守るに至らなかったんですよね。で、1年くらい経ってからは少しずつ「守」ができるようになってきて、3-4年目くらいで「破」を意識し始めました。でも、「離」に至ったのは、IBMに転職し、さらには、ギックスの起業を決めたあたりだったように思います。
振り返ってみると、社会人としての型を「知る」のに3ヶ月くらい、それを2年くらい「守」する。SEとしての型を「知る」のに半年~1年くらい、それを2年くらい「守」する。戦略コンサルの型を「知る」のに1年くらい、それを4年くらい「守」する。という感じで、結構な時間を「型を知る」「型を守る」に費やしていたことになります。
この「型」を体に叩き込んだ時期が、今の僕を形作っているんだなと実感しています。この経験は、5年後、10年後に役立ちました。型を知り、守るという行為は、かの名言”コネクティング・ザ・ドッツ”のひとつのドットを打つ行為なんです。型を無視した自己流のドットは、コネクトしようとしても足場になりません。基本に忠実なドットは、他のドットと組み合わせたときに、非常に強い足場になります。他のドットと組み合わせる、ということが「破」であり「離」なのです。
ということで、皆さんも「守破離」のなかで、魅力的に見えてしまう「破る」や「離れる」にトライしたいと逸る気持ちをグッと押さえて、一見つまらなく見える「守る」や、その前段階の「知る」にしっかりと意識を向けてみてはいかがですか?まずは、強固なドットを打ちましょう!
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