”考え方”を考える|タスクの「重要度」と「緊急度」:”重要”な仕事に注力しよう

AUTHOR :  田中 耕比古

緊急度の高さに惑わされてはいけない

本日は、タスクの「重要度」と「緊急度」について考察します。

重要度と緊急度の 2 x 2 マトリックス

タスクに取り組む際に、そのタスクが「どれくらい重要か=重要度」と「どれくらい緊急なのか=緊急度」の2つの尺度を理解しておく必要があります。

なぜ、この基準が大切なのかを先に申しあげておきますと、人は「緊急度が低いと、重要度が高くても後回しにする」傾向があるのです。別に、全てのタスクが納期に間に合うのであればそれでも良いのですが、こういう仕事のやり方をしていると「重要度の低いタスクは全て期限内に終わったが、重要度の高いタスクが納期遅れを起こした」なんて事態を招く原因になるものなのです。そのあたりを詳しく見ていきましょう。

右上=最優先、左下=後回し

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重要度が高く、緊急度も高いタスク(右上)は、最優先で処理されるべきです。一方、重要度が低く、緊急度も低いタスク(左下)は、後回しでOKです。なんなら、そのまま忘れてしまっても良いかもしれません。(僕の場合、できることならやらないで済ませたい仕事、という分類にしてしまいます)

ここで、問題になるのは、左上=重要度が高いが緊急度が低いタスクと、右下=重要度は低いが緊急度が高いタスクの、どちらを優先すべきかという問題です。って、まぁ、この2象限で迷うことになるのは2×2マトリックスを描いた時点で、予想がついていることなんですけどね。(笑

左上(重要だが後でもいいタスク)と右下(急ぎだが重要でないタスク)なら”左上”

ここで、右下の「急ぎだが重要でないタスク」を優先してしまう人は「作業者」です。例えば、死ぬほど忙しくてタスクが溢れまくってる時は「緊急度が高くても重要度が低いタスクを捨てる!」という判断が必要なわけす。にもかかわらず、重要度ではなく緊急度だけで判断するのは、作業者視点から抜け出せていないってことになります。大局観をもってみれば、(例外はあるにせよ)左上の「重要だが後でもいいタスク」を優先すべきです。

なぜならば、緊急度は時間とともに変化します。時間経過とともに、緊急度は上がるわけですね。一方、重要度は時間経過による影響は殆ど受けません。そうすると、基本的な考え方として「左にあるタスクは、いずれ右に行く」ことになります。

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ということは、左上の「重要だけど後でもいいタスク」は、すなわち「放っておくと、最優先タスクになってしまうタスク」です。

一方、右下の「急ぎだが重要でないタスク」は、すなわち「かつては後回しだった(なんならやらずに済ませたかった)タスク」です。もちろん、右下には突発的に飛び込んできた「それほど重要じゃないが、とにかく急ぎのタスク」というものもあるとは思います。が、多くの場合は、先ほど述べたとおり「かつては後回しだった(なんならやらずに済ませたかった)タスク」だったものが、時間の経過とともに緊急度が上がってきてしまった、というもので占められます。

戦略とは、捨てること。

”仕事のコツ”として、重要度にかかわらず、一瞬で終わるタスクは、タスクを聞いた瞬間にその場の勢いで終わらせてしまう、という技もあります。これは「左下だったものが右下になった」のではなく「とつぜん右下に飛び込んできた」というものの処理方法としては最適だと思います。ただ、これをやると、全てのタスクを捨てられなくなってしまいます。

世の中に「BPR=ビジネスプロセスリエンジニアリング」というものがあります。(ご存じない方は、業務効率化のための手法、というようなイメージをしていただければ十分です。)その際、幾つかの「効率化の型」があるのですが、そのうちの一つに「その作業をやらない(やめてしまう)」というものがあります。高い金払ってコンサルにそんなこと言われても困る、という方もいらっしゃるでしょうが、世の中、この「やらないという判断」ができないが故に、本当に必要かどうかを考えずにとりあえずやってしまっていること、が結構あります。具体的に言うと、承認・決裁プロセスが何階層にもなっている、みたいな場合に、それ、2階層だけ残して後はやめちゃえばいいんじゃね?って話です。

要するに「やらなくていいならやらない」ということが、効率的に物事を進める最大のコツなんですよね。「戦略とは、捨てること」なのです。

何をやらないか、は会社や事業、職種によって違う

とはいえ、何を捨てるか=何をやらないか、言い換えれば、”何が重要でないか”は、各社の事業内容や状況、あるいは当該部門や部署の業務内容によって変わります。「自分にとって重要じゃない」と思っても、「会社・部門・チームとして非常に重要」ということもありますので、そこは、しっかりとコミュニケーションをとって判断しましょうね。一人合点は、危険ですよ。

きちんと、社内の共通認識(コンセンサス)に則った「重要度判断」を行って、捨てるべきものを見極めましょう。(もちろん、常に”例外”は存在します。それは受け入れましょう。)

応用:どんな仕事が多い職場か、でリソース配分を変えよう

重要度の低いタスク(つまり、下半分)は捨ててしまう、というのが基本である、ということを書いてきましたが、物事には常に「応用」があります。(「具体例と概念化」の話と同じです)

例えば、職場によって、4象限のうち、どのタイプの仕事が多いのかは違うわけです。ですので、その状況を踏まえてリソース配分をしていくことが重要です。

Case 1. 重要且つ急ぎの仕事(右上)が多い職場

右上が非常に多い、ということは、とにかく忙しいわけです。そして、その状況にあるということは、左上(重要だが急ぎじゃない仕事)が沢山待ち構えていることを意味します。もちろん、突発的に右上が登場することも多いのでしょうね。

そういう職場では、「基本」としてお話ししたことを徹底して行う必要があります。つまり「下半分は絶対にやらない」ということです。とにかく、右上を徹底的に潰しましょう。そして、一瞬でも時間が空いたら、気を緩めず、手を止めず、即座に左上を潰しに行きましょう。

Case 2. 突発案件(右側)ばかり飛んでくる職場

本来的には好ましい状況ではないのですが、とにかく、緊急性の高い仕事がバンバン飛び込んでくる職場があります。こういう職場では、重要性の判断をしている余裕がありません。そういう場合は、スピード勝負になりがちですので、納期が迫っている順に対応していくことになります。

但し、こういうタイプの職場がうまく回るのは、「重要かどうかに関わらず、ひとつのタスクの処理にかかる時間はあまり変わらない」という場合に限られます。作業時間が案件ごとに大きく異なる場合には、スケジュールを立てて、しっかりと”プロジェクト”として運営していくことが求められますので、納期が迫っている順に着手していると、致命的なミスに繋がります。

そんな場合には、突発案件を受けない、という対策しかありません。(いろんな事情はあるでしょうが)現実的な納期を依頼者との間で握って、現実的なスケジュールをたてましょう。もちろん、それでも突発案件がゼロにはならないので、常に、突如現れるであろう右上案件のための”余力”を残せるようなスケジューリングを心がけるべきです。

Case 3. 大半が、重要度が低くて納期に余裕のある仕事(左下)の職場

普通に考えれば、重要度が低い仕事ばかりだとしても、相対的な「重要度の高低」は設定できるはずです。とはいえ現実的に「重要度の低い仕事ばかりくるなぁ・・・」という職場もあるでしょうし、そういう傾向が強い職種も存在します。特に、納期に比較的余裕がある仕事(左下)の比率が高かったりすると、優先順位がよくわからなくなります。

そんな状況で、左下のもののうち、納期が迫って右下に近づいたor右下になったものだけを潰していく、という仕事スタイルは危険です。左下を積極的に潰しましょう。

ここで「右下になるまで待つ」というスタイルを貫くと、突発的な右上=最重要タスクがきた瞬間に溢れます。これは最悪ですね。あいつ、普段ヒマなのにダラダラ仕事して、たまに大事な仕事をお願いしたら、納期に間に合わないんだぜ、的な評価を頂戴すること間違いなしです。時間的に余裕のあるうちに(つまり、左下のうちに)可能な限りケリをつけておくことが重要です。

以上、タスクの優先順位づけにおける「重要度」と「緊急度」の考え方をご紹介してきましたが、タスク管理手法として理解するのに留まらず、「二軸に分解して考える」という思考の型の一例としてもご活用いただけますと幸いです。

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