鍵は求心力と柔軟性のさじ加減。新取締役 渡辺 真理が描く急成長への道

AUTHOR :   ギックス

2024年10月、経営基盤本部長の渡辺が新たに取締役に就任しました。株式会社ディー・エヌ・エー(以下DeNA)の人事部門でさまざまなプロジェクトをリードした後、2023年9月にギックスにジョインし、経営基盤強化本部長として全社レベルで「組織と人」に関わる仕組みのアップデートに取り組んできた渡辺。今回は、ギックス入社前のキャリアから入社に至る経緯、入社後1年間の歩みを振り返るとともに、新取締役としての抱負を語ったインタビューをお届けします。

組織と人のスペシャリストとして、DeNAの拡大に貢献

ギックス入社前のキャリアをご紹介ください。

大学時代は研究者志望で、教育学を専攻していました。新卒でアクセンチュアに入社したのも、アカデミックな世界に入る前に5、6年、社会経験を積み、視野を広げたかったからです。その後、思いがけない出会いに導かれ、ビジネスの世界で20年近くを過ごしてきましたが、私の関心の中心は一貫して「人」にあります。

アクセンチュアでは、最初の2年数ヶ月は戦略コンサルタントを経験。プロフェッショナル意識の高い人たちに囲まれて、短期間ながら濃密な学びの日々を送ることができました。基本的なビジネススキルはもちろん、仕事をするということはどういうことか?という基本的な価値観や、妥協せずにクオリティを追求する姿勢など、自分の仕事のスタイルのベースはこの期間に作られたと感じています。

あるとき組織・人事系のプロジェクトに携わったことをきっかけに、「コンサルタントとして専門分野を持つなら、私はやはり“組織・人”だな」と心を決めました。ちょうどそのころ、社内で人事部門のポストに空きが出て、異動希望者の公募があったんです。「一度、実務を経験しておくのもコンサルタントとしてプラスになるはず」と考えて応募し、人事のキャリアをスタートさせました。

異動後の採用中心の人事業務は新鮮で、人と向き合う仕事は自分に向いていることも実感できました。ただ、外資系なのである程度グローバルのルールに則って進めなければいけないこと、プロフェッショナルファームであるが故にコンサルタントやエンジニアという限られた職種を対象とした人事業務になってしまうこと、そして採用以外にも幅広く人事業務を色々経験してみたかったもののそのようなキャリア形成が難しそうだったこと等の理由から、「もっと自由度の高い環境で組織・人事の仕事に向き合いたい」と思うようになりました。

それが転職の契機となったのですね。DeNAを選んだのはなぜですか?

別のコンサルティングファームからDeNAに転職することになった友人が声をかけてくれたんです。人事の実務経験があり、かつコンサルタントの共通言語で会話できる仲間として、私を思い浮かべてくれたようです。

DeNAには2009年に入社し、以降14年間所属した人事部門で、幅広い業務を経験しました。採用活動もグローバルで展開し、特にDeNAが海外進出に注力していた時期にはグローバルHRを立ち上げ、各国の拠点長や人事と連携しながら組織づくりに奔走しました。その後、本社の人事制度や福利厚生の企画・運用、人材育成や研修はもちろん、各種の全社イベントの企画・運営、社内外のブランディングも手がけました。

渡辺 真理(わたなべ・まり)取締役 兼 経営基盤強化本部長
2005年アクセンチュア株式会社に入社。製造業のクライアントを中心に、BPR・PMI・成長戦略などのプロジェクトに従事。2007年より人材採用部にてエンジニアやコンサルタントの採用に従事。2009年より株式会社ディー・エヌ・エー ヒューマンリソース本部にて、一貫して人事業務を経験。人事評価制度の企画・運用、ダイバーシティ&インクルージョンの推進、教育・研修体制の構築、グローバル人事の立ち上げ・推進、自社カンファレンスの企画・運営、カルチャー浸透施策の企画・推進、新卒・中途・グローバルでの採用など、さまざまな人事プロジェクトを牽引。2023年9月、当社入社。

DeNAで今も続くDeNA LIFE DESIGN PROJECT(DLDP)も、渡辺さんが立ち上げられたそうですね。

はい、社員が仕事とプライベートを両立しながらいきいきと働くことを応援する委員会ですね。2012年の立ち上げ当時、そうした活動はITベンチャー界隈ではまだ珍しく、他社からもかなり注目していただきました。立ち上げ当初はDeNA Women’s Councilという名前でしたが、途中で「女性の出産・育児のみにフォーカスする必要はなく、男性の育児はもちろん、介護や自身の病気などで働き方を変えなくてはいけないこともある」と考えて対象を広げ、2019年にプロジェクト名を改めました。

立ち上げのきっかけは2012年、産休・育休を経て、時短で復帰する女性社員が急増した時期に、本人とマネージャーの双方を対象に面談や研修を行い、時短社員の活用がスムーズに進むようサポートしたこと。当初は3カ月限定のプロジェクトでしたが、活動をリードしてきた私は「このまま一過性の活動で終わってしまえば、育休後の復職を支援するだけの施策で終わってしまう。もっと広義の意味での女性活用推進について継続的に議論できる場が必要だ」と感じ、恒久的な活動にしたいと会社に掛け合いました。実は、アクセンチュア時代に参画していたWomen’s Initiativeという活動を少し参考にさせてもらったりもしたんです。

2012年当時は「時短の社員が一度に何人も復帰するなんて、どうマネジメントしていいか分からない」と戸惑うマネージャ―も多かったDeNAで、DLDPの活動が今も続き、各自の事情を踏まえた働き方についてオープンに話し合える空気感ができたことは大きな変化。あのとき声を上げて、本当によかったと思っています。

ギックス入社の決め手は「手触り感」。今のフェーズだからできるチャレンジを

長年活躍されたDeNAを離れ、ギックスに移られた理由を教えてください。

一言で言うと、全く新しい経験をしてみたくなったのです。DeNAに対しては愛着も強かった一方、14年間同じ会社にいると経験と人脈で仕事を回せる部分が大きくなっていることを感じるようになりました。DeNA自体も規模が拡大し、事業内容も多様化してきた中で、会社一律で進める施策で本当に良いのか、私の中で正解が見えづらくなっていた面もあります。

ギックスの前管理本部長の加部東とは、アクセンチュア時代の同期です。コロナ明けに久しぶりに会ったのをきっかけに、ギックスの今後に関する相談を受けるようになり、「上場前に一通り制度は整えたが、これから規模が急拡大していくフェーズでの組織の在り方」について何度か壁打ちをしました。

私にとっては、これがスタートアップらしい「手触り感」を身近に感じる機会になりました。もともとスタートアップに興味はあったのですが、大企業からスタートアップに転職した知り合いから「経営陣と合わなかった」「独特のカルチャーに馴染めなかった」「経営が立ち行かなくなってしまった」という話をたまに聞いていたので、慎重になっていたのです。ギックスの場合、会社に関する話は洗いざらい加部東がすべて共有してくれましたし、アクセンチュア時代の先輩に当たる代表の網野のことも知っていました。加部東に誘われたときは「面白そう」「これまでの経験が役に立ちそう」という気持ちのほうが勝っていました。

昨年9月、管理本部長として入社されました。決め手は何だったのでしょう?

実は入社のオファーを頂いた時点では、本部付で人事領域をメインで見る担当になるはずだったんです。「人事周りで整えなくてはいけない部分がいろいろあるから、どんどん進めてほしい」と言われ、DeNAの規模感では決してできないチャレンジができることにワクワクしてお受けしました。

ところがその後、管理本部長としてのオファーに急遽変更(笑)。当初は正直、驚きましたし、迷いもありましたが、考えてみれば、経験値のある分野は人事全般と広報少々に限られている私に、いきなり管理部門全体を任せるとは思い切った決断です。この期待に応えていくことが、私にとって一段視座を上げるチャンスになる、と捉え直しました。

9月に正式入社する前に、4カ月ほど副業としてギックスで働く期間を設けたおかげで、管理本部のメンバーと関係性を築けたことも大きかったです。入社時点では、管理本部の現状と課題がおおむね頭に入っており、どこから着手していくべきかもほぼ整理できていました。

多方面のプロたちが、成長にまっすぐ向き合える環境をつくる

ギックスでの渡辺さんのミッションと入社後の取り組みをご紹介ください。

ミッションは大きく二つあります。管理本部から名称変更した経営基盤強化本部(以下、経基本部)のマネジメントと、もう一つは言わばCHRO的な立ち位置で全社の組織・人周りを整えていくことです。

入社当初から、経基本部には各分野のプロフェッショナルが集まっており、各部署の業務はわりと整っていました。上場プロセスを経たことで、会社組織としての形が出来上がっていたのだと思います。ただ、部門間の連携やメンバー同士の相互理解に関しては伸びしろがあると感じたので、入社後一ヶ月かけて地盤を整えました。具体的には、メンバーと議論しながら本部のミッションや半年後の状態目標を定めたり、会議体を整理してメンバー間のコミュニケーションの機会を増やしたり、部門横断で取り組むべきプロジェクトの進捗を見える化したりしたことで、より自然に連携が取れる体制ができたと考えています。

全社に対しては、今後の組織拡大を見据え、早急に対処が必要なところから仕組み化を進めてきました。具体的には、人事評価制度のアップデート(各職階の定義の明文化・キャリアパスの新設・報酬テーブルの見直し等)※、プロジェクトのアサインメントのルールづくり、組織や個人の状況を定点観測するサーベイの導入などです。もともと最小限の管理工数で済むオペレーションが確立されていて、これまでのフェーズにおいては最適化された状態にあって素晴らしかったのですが、事業や組織の拡大を見据えてアップグレードすべき時期に来ていると判断しました。

※職階とキャリアパス https://gixo-org.notion.site/10bdc22aa7458026ba16ca2fe9e1c3aa

加えて、今年の春頃からは7月の新年度スタートに合わせ、「経営のリズムづくり」にも取り組んできました。中期経営計画や年度毎の事業計画を年初に全社に明示した上で、四半期ごとに振り返って次四半期に向けた方針を共有することで、各人が自分の持ち場を守りながら全社一丸となって目標達成に向けてまっすぐに向かえるようにすることが目的です。また、この機会にビジョンを再定義し、ミッション・行動指針・カルチャーと共に位置づけを再整理した上で改めて展開したほか、各Divisionのミッションの明文化や、全社員の個人目標を見える化する施策も導入しました。さらに、取締役会、執行役員以上が出席する経営会議、全社員が出席する事業会議を始め、各会議体の目的や情報の流れを再整理し、よりスムースに経営が回るための基盤も整えました。

こうした取組は、まさに経営基盤を強化する活動です。管理本部という「管理」のための組織から、経営基盤強化本部という「経営を下支えする」ための組織へと変革している真っ只中にいると日々感じています。名前に恥じない部署にしていくべく、チームが一丸となって取り組んでいます。

今回の取締役就任にあたっての思いをお聞かせください。

取締役を私が務めることになるとは、打診を頂くまで想定していませんでした。ただ、コンサルティング事業からスタートしたギックスが今後よりスケールするビジネスモデルへと進化していく上で、組織・人周りをうまく整備していけるかどうかは重要なポイントです。事業内容にも人材にもどんどん多様性を持たせて、各人の強みを最大限に活かすことによって会社全体で大きな成果を積み上げていくことに思い切って取り組む、その意思表示の一つが今回の人事なのだと受け止めています。

これまで取締役に多様性がなかったことについては、網野自身も危機意識を持っていました。クライアント企業のカウンターパートである経営層や部門長の方々も今後は多様化が進むはずですし、当社内でも様々なケイパビリティを持つメンバーが増える中で、ボードメンバーもバックグラウンドや属性に多様性を持たせないと戦っていけないのでは、と。

網野は今回、「数合わせのための女性取締役などではなく、実のある形でやりたい」と、真摯な思いを語ってくれました。私自身、とても共感できましたし、私なりの視点を経営により活かしていきたいと考えています。

今後の抱負をお話しください。

ギックスは完成された商品・サービスを販売する会社ではない分、会社の成長はメンバーのパフォーマンスが全てと言っても過言ではありません。社内外問わず、魅力的な人材に魅力を感じてもらえる会社であることが、成長の大前提です。

かつてコンサルティング事業一本だった時代は、人材の採用や育成、評価も一軸で進めることができました。阿吽の呼吸で通じ合える少数精鋭のメンバーが集まっていたおかげで、最低限のルールのみで足並みをそろえられたことが、ギックスの強みの源泉だったと思います。

一方、プロダクトである「マイグル」サービス事業も軌道に乗り始め、社内にさまざまな強みを持つプロフェッショナルを増やしていこうとしている今、会社が求心力を保っていくためには、より多様なケースに対応した施策づくりやルール整備が求められています。ただし、仕組みをつくり込みすぎると柔軟性が失われ、事業のスピードダウンを招きかねません。最適なさじ加減をいかに見極められるかが鍵になります。

受け継がれてきた価値観の核は今後も大切に守りつつ、業態や環境の変化に応じ、新しい風も取り込んでいける組織をつくりたいと考えています。

多様なメンバーがそれぞれの強みを発揮しながら大きな成果を出し、しっかり報いられることでモチベーションをさらに高めていく――そんなサイクルの中で、全員がギックスの成長にまっすぐ向き合えるような会社であり続けるために、これからも全力で組織づくりに取り組んでいきます。

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