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BIパッケージを「使わない」という選択もある
BI(ビジネス・インテリジェンス)とは、「各種”情報”を集約・体系化することによって、意思決定・判断・行動につなぐことができる”知識”」のことです。(関連記事:BIとは|graffe.jp) 誤解を恐れず、もっと単純に言えば、「情報を使って意思決定支援をする」ことだと言えるでしょう。
これを実現するために、世の中にはBIツールというものがあります。
BIパッケージは、”考える”ための救世主だった
膨大な情報を扱い、限られた時間内で、意思決定のために必要な情報をレポートとして出力する。これを実現するのがBIツールです。(関連記事:BIツールとは|graffe.jp)
基幹系システムから吐き出される情報に加え、国勢調査やアンケートデータ、さらにはSNS情報、業種によっては天候データなどなど、取り込みたい情報がどんどん多様化していく中で「それらを一気通貫でつないで、知りたい情報を自由自在に提供してくれる存在」が求められました。
大手ソフトウェアベンダーが、膨大な開発費を投じてこの課題に取り組み、ついに解決に至りました。それが、いわゆる「BIパッケージソフト」です。
これにより、情報の多さや、その複雑性を(ほぼ)無視して「知りたい情報を知ることができる」「見たいレポートを見ることができる」という世界が実現されました。
とはいうものの、BIパッケージを動かすためには高性能なハードウェアが必要でした。高性能なハードウェアは、ちょっとヤマダ電機で買ってくるわ、という類のものでもありませんので、BIパッケージと高性能ハードウェアはセット販売されることになります。そのため、大手のソフトウェアベンダーが大手のハードウェアベンダーと組んで(両方持っている会社は1社でまとめて)提供することになります。
その結果、導入コストは非常に高いものになります。従って、誰でも気軽に導入できる、というものではありませんでした。まさに、(資本主義社会を象徴する)夢のツールです。
しかし、時代は流れている
そして、時代は流れます。マシンパワーはどんどん上がりました。CPUの速度も、メモリも、尋常ではない速度で高速化・低価格化が進みました。それにつれて、ソフトウェアも進化します。エクセルは、数年前まで6万行しか扱えなかったのに、今は100万行以上扱えるようになりました。「普通のパソコンで簡単にできること」が圧倒的に増えてきたのです。
が、しかし、1000万レコード、1億レコードというボリュームになってくると、さすがに「普通のパソコン」では難しい部分もあります。(※ちなみに、例えば、tableauなどのセルフサービス型BIツールを使えば、1000万行くらいは余裕でまわりますけれども。)
この状況を大きく変化させたのが「クラウド」です。AmazonのAWS、MicrosoftのAzureなどが有名ですが、これによって「必要なリソースを、必要な時だけ使う」ということが可能なりました。「普通のパソコン」ではなく「凄いパソコン」を安価に使用できるわけです。
こうなったときに、本当に、”知りたいことを知る”ために「BIパッケージ」が必要不可欠なのだろうか、という疑問が生まれてくるわけです。
BIパッケージは「なんでも(やれば)できる」
そもそも、BIパッケージは、「なんでもできる」ということを強みとしています。しかし、冷静に考えてみてください。今となっては、多くのことは「EXCELでも(頑張ったら)できる」んですよね。BIパッケージもエクセルも本質は同じです。「作り込んだら、なんでもできる」んですよ。これが「アドイン(あるいは、アドオン)」とか「カスタマイズ」とかっていう奴ですね。
BIパッケージの導入は(とても単純化すると)以下の流れで進められます。
- やりたいこと=見たいレポートを決める(業務要件定義)
- そのレポートを出すために「BIパッケージの基本機能」でどこまでできるか見極める(Fit&Gap)
- 基本機能ではできないことを「カスタマイズ」したらどれくらいかかるか見極める(見積もり)
- カスタマイズの内容を明確にする(システム要件定義)
- パッケージを導入し、カスタマイズを加え、要件通りの仕組みを作り上げる(システム開発)
このとき、2の「Fit&Gap」で、Fitする部分=基本機能でできる部分が大きければ、パッケージソフトは最高の威力を発揮します。しかし、Gapが大きいと、カスタマイズ部分が大きくなります。これは何を意味しているのか。そう「手作りのシステム構築」をやってるということです。
これは、パッケージソフトが悪いということではありません。そういうものなのです。一言で言えば、(基幹系システムの場合は特に)パッケージを導入するという意思決定は、業務をシステムに合わせるということを大前提に置いているのです。システムを業務に合わせようとすると、どうしてもカスタマイズが大きくなり、費用と時間が嵩むのです。
一番の問題は「業務要件定義」
さらに問題を複雑にしているのが、先ほど述べた「1.業務要件定義」の部分です。
大変不幸なことに、多くの方は「何を知りたいか」あるいは「何を見たいか」を、最初からわかってなどいません。当たり前ですよね。自動車教習所に通うよりも前に「運転しやすい車はどれか選びなさい」と言われても困るでしょう。まだ食べたことのない料理(例えば、レバノン料理とか)を食べに行く際に「どのメニューが好きか、事前に3つ選びなさい」と言われてもなかなか選べないでしょう。
そんな状態で「要件を決めよう」という話をするのは、パッケージベンダーにとっても、導入を検討している企業にとっても、なかなか厳しい話だと思いませんか?
そして、そうやって「決めきれない」状態のまま数ヶ月間検討を行い、さらに数ヶ月間の開発期間を経て、ようやくできあがったものをみたときに「あれ、そんなはずではないんだけどな・・・」ということになってしまったりもします。
パッケージソフトの辛いところは、「一回作ってしまったら、ちょっとやり直したいと思っても、それは追加カスタマイズになりますよ」というところです。
ひょっとしたら、パッケージじゃなくてもできるんじゃないか?
では、反対に「お金と時間をかけない」ということを前提にするとどうなるでしょうか。
それはすなわち、「BIパッケージを使わなかったらできないのか?」と考えることを意味します。
先述した通り、エクセルのような表計算ソフトも進化し、tableauのようなデスクトップ型BIソフトも現れてきました。そしてクラウドによって、大量データを扱うDB(データベース)を簡単かつ安価に使うことができるようになりました。
要するに、「高価なBIパッケージ」を使わずとも、クラウドDB(AWS/Redshiftや、Azure/SQL Data Warehouse)と、安価なBIツール(tableauやPowerBI)を用いることで、「BIパッケージとだいたい同じこと」場合によっては「BIパッケージとまったく同じこと」ができてしまうのです。
これを、ギックスでは「QuickReplace / クイックリプレース」と呼んでいます。今稼働しているものを、しれっと安価な仕組みで置き換えてしまいましょう。という思想なんですね。(ちなみに、ギックスがシステムの受託開発案件をお受けすることは弊社のリソース面での問題もあってそれほど多くはないのですが、弊社が得意とする「分析環境構築」のケイパビリティが適用可能な場合に限り、適宜、ご支援させていただいています。)
とはいえ、限界もある。
もちろん、そうはいっても限界はあります。例えば・・・
- 基幹系システムと直結/連動させて、リアルタイムで状況を把握したい
- 関連システムとINPUT/OUTPUTを共有したい(APIやI/Fを開発したい)
- レポートを紙に印刷するところまで自動化したい
などの要望は、それを得意とするパッケージソフトを選択した方が良いかもしれません。
ただ、たとえば「リアルタイム性」は、ほんとうにどの程度必要なのか?と考えてみると、実際のところ「1日に1回しか見ていない」とか「見てはいるけど、実は週に1回くらいしかちゃんと考えていない」みたいなことも良くあります。
そういうことを踏まえて「パッケージじゃない選択肢」をしっかりと考えてみるのも「クラウドのメリットを最大限に活かした”現代のBI”」を駆使する企業になるための、最初の一歩かもしれませんよ。
お知らせ:QuickReplaceに関するFAQを開設しました。