剛には硬、柔には軟。
この連載では、バガボンドの主人公、宮本武蔵の”戦闘”シーンを抜き出し、武蔵の成長について読み解いていきます。連載第6回の今回は、沢庵和尚によって遣わされた、おつうとの(心理的な)戦いです。
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武蔵、捕縛される
辻風黄平との戦いを経て、自分の中に「何のために生きているのか」という疑問を抱えた武蔵ですが、その後も、山狩りの侍・村人との攻防を繰り返し、心身ともに疲れ果てます。
そんな極限状態の武蔵に、沢庵和尚と共に、幼馴染の「おつう」が、武蔵と向き合うことになります。
おつうは、武蔵の幼馴染で、武蔵のことを怖いとも思いません。そして、おつうからも「鬼、悪蔵(あくぞう)」と罵られる覚悟をしていた武蔵に対して、そんなことは一言も言わずに、彼を人間として扱い、彼に頼ります。
武しゃん お甲ってどんなひと?
(中略)
また捨てられたよ あたし
みなしごで、両親に捨てられたおつうが、又八から捨てられたと泣きながら抱き着いてくると、武蔵は、戦意を無くし、ただ呆然と立ち尽くすのみです。そして、その戦意喪失が、緊張の糸を切り、そのまま意識を失い、沢庵によって捕らえられるのです。
ちなみに・・・
尚、このエピソードでは、おつうの回想として、武蔵が旅の武芸者を殺した話がでてきます。相手が油断していたとはいえ、反撃の隙を与えず、相手の刀を奪って頸動脈を掻き斬ります。それが13歳の時の出来事ですので、尋常ならざる強さをうかがい知ることができます。(この時点では、武蔵の生い立ちはほとんど語られていませんので、めちゃめちゃ強い野生児、ということだけが伝わってきます。)
そんなエピソードを語りつつも、武蔵のことを怖くないと言う おつう は、なんだか不思議な感じがする女性です。
武蔵も人の子
さて、そんなおつうに「友人」として頼りにされたことで、武蔵の体を覆っていた闘争心は解け去り、沢庵によって捕縛されるわけですが、こうなった原因は、決して「おつうが幼馴染だったから」ではありません。その原因は、「おつうが、敵意ではなく好意をぶつけたから」と考えるべきです。
侍も、村人も、武蔵に接する際に「敵意」を向けます。敵意をぶつけられた武蔵の態度は硬化し、相手の敵意を数倍に増幅して跳ね返します。
これは、武蔵に限らず、僕たち皆同じです。また、戦闘に限らず、仕事においても、日々の生活においても同じです。初対面でいきなり攻撃的な発言をする人や、相手が目下だからと偉そうに振る舞う人は、敵しか作りません。人当たりが良いのに越したことはないのです。
強いボールを投げつけると、相手も強いボールを投げ返してきます。優しく投げれば、優しく返ってきます。例え、相手が武蔵のような悪童、悪鬼と呼ばれるような存在であっても、同じことなんですよね。
ということで、僕も2016年は「初対面の人に”Facebookの投稿の感じだと、超怖い人なんだと思ってました。意外といい人なんですね”と言われないようにする」を目標にして頑張っていきたいと思います。みんなみんな、大好きですよ!I love you all!
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