圧倒的な身体能力で押し切る
この連載では、バガボンドの主人公、宮本武蔵の”戦闘”シーンを抜き出し、武蔵の成長について読み解いていきます。
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野性の力で、数的優位もねじ伏せる
関ヶ原の合戦に、立身出世の野望を抱いて参加した武蔵(たけぞう)と又八。しかし、現実はそんなに甘くありません。二人は、落人(おちゅうど)となってしまいます。
そして、ろくに食べ物も食べられない状況が続き、精神的にも肉体的にも限界を迎えた頃、3人の残党狩りに出会います。この戦いは、2vs3と数的不利な状況です。しかも、又八は、ほとんど役に立ちません。しかも、こちらは丸腰で、相手は刀を携えて鎧を着ています。
しかし、武蔵は、そんな不利な条件をものともせず、圧倒的な怪力で3人を押し切ります。
使った武器は、岩と木の枝。
一人目を、頭突き→頭を掴んで木にたたきつける というコンボで瞬殺。二人目は、上から巨岩を投げつけて頭にぶつけたところに、木の枝をフルスイング。折れた枝を喉元に突き刺します。三人目は、おそらく戦意を喪失した状態だったと思われますが、頭を岩で押しつぶしてしまいます。
戦略とか戦術とか、まったくありません。野性の力で押し切った、という感じです。
武蔵は、戦いの最中、こう言い放ちます。
俺を殺す気なら、殺してやる
そして、生き残ったあとに、興奮冷めやらぬ面もちで、こう呟きます。
ヘボ侍めっ 死んでたまるかっ この俺がっ
この新免武蔵(しんめんたけぞう)がっ
自分は死なない。相手を殺す。という意思、気迫ですね。圧倒的な不利な状況でもひるまないその精神力は、まさに獣です。
この戦闘においては、武蔵の戦闘力は「怪力」と「覚悟」だけであるように思えます。この時点では、剣技があるのかなどは全く分かりません。未知数ですし、粗削りだなという印象を受けます。
自分の「地力」は何か?
この戦闘で考えるべきは、自分のベースとなる力は何か?ということでしょう。
武蔵にとっての野性的な怪力と、絶対に勝つという覚悟。自分にとって、これに相当する能力は何なのかを見極める必要があります。武蔵の友人である又八は、これを見誤り、得意ではないフィールドに踏み込んでしまったことが不幸の始まりだと言えそうです。
僕の場合、考えることが極めて好きです。シンカホリックという言葉を作ってしまったくらいです。自分が好きなもの、自分が得意なものを、活動の中核に据えておくことが、非常に重要だと思うんですよね。
まずは、基礎能力をしっかりと把握することからはじめましょう。さて、あなたの「地力」はなんですか?