出光興産と昭和シェルの合併:シナジーってなんだろう?/ニュースななめ斬りbyギックス

AUTHOR :  田中 耕比古

コスト削減は大事だが、売上増に効くかが勝負の鍵

本日は、週刊東洋経済 8/22号より「出光興産と昭和シェル ”対等統合”の期待と不安」をななめ斬ります。

関連記事(東洋経済オンライン):

記事概要

上記関連記事リンクにもある通り、出光と昭和シェルが2016年上期をターゲットに、経営統合を目指しています。取得総額は約1700億円。業界2位の出光が、業界5位の昭和シェルを買収するということで、業界再編の動きとしては非常に注目されています。

尚、明らかな吸収合併であるにもかかわらず、名目上は対等統合とされている経緯を、東洋経済では以下のように報じています。

出光と昭和シェルの統合交渉は1年ほど前から水面下で続けられてきた。しかし14年末、「出光が昭和シェルを買収する」という一部報道が出たことによって、暗礁に乗り上げた。「出光にのみ込まれれば、統廃合に追い込まれるかもしれない」と、昭和シェル側の大手特約店が猛反発したからだ。

今年3月に香藤繁常氏から昭和シェルグループCEO(最高責任者)の座を引き継いだ亀岡剛氏は、「出光の子会社になることはない、と全国の特約店へ説得に回った」

こういうのをメディアがすっぱ抜くのって、経営側からするとマヂやめてほしいーという話が沢山あると思うんですが、とはいえ、都合のいい情報だけ載せてもらうというわけにもいかないのが難しいところですよね。

尚、統合の狙いとしては、規模、収益力改善(出光)、海外展開推進(昭和シェル)の3つが挙げられています。

出光・昭和シェル連合が誕生すれば、石油製品の販売シェアは3割弱と、JXホールディングスに次ぐ規模へ拡大。

出光は業界内でも生産効率が随一と評される昭和シェルの精製設備を手にすることで、下流の収益力が増す。

昭和シェル側は、外資であるロイヤル・ダッチ・シェルが筆頭株主から外れることで、長年”縛り”となっていた海外への事業展開が可能となる。

それらのメリットが得られる一方、製油所の被りが少ないことや、ガソリンスタンドの両ブランド併存を当面維持することから、コスト削減の余地はあまりないのではないかと評されます。また、企業文化も大きく違うため、統合効果をどのように出すかは課題だろうと記事は締めくくられます。

シナジーってなんだろう

世の中には、「シナジー」という便利な言葉があります。wikipediaから引用します。

相乗効果(そうじょうこうか、シナジー、英: synergy)とは、ある要素が他の要素と合わさる事によって単体で得られる以上の結果を上げること。反義語は相殺、中和。

相乗効果により、全体の最適化、効率化が発揮される。自然、経済、社会、など様々な分野で、この効果は測される。主によい意味として使われる為、事故や災害では使われることはない。

出所:wikipedia

はい。「まぁ、いろいろいいことあるよね」的な意味だとご理解ください。って、そんな適当な感じで良いのか?って話になるわけです。

要は「売上増」か「コスト削減」ですよ。

シンプルに考えれば、全ての「シナジー」は”売上増”か”コスト削減”かのどちらかしかありません。ブランドとしての認知度が上がる、という場合も「認知されるから買われやすくなる=売上が上がる」か、「すでに認知度が高いので、認知施策の広告投資が要らなくなる=コストが下がる」か、と言う風に分解できます。

今回の場合、コスト削減余地が少ないのではないか、というのが大きな論点になっています。しかし、もしも、コストはそのままで売上を増やすことが出来れば「増えた売上は全て利益」ということになります。

もちろん、記事内にあるように、燃料油の国内販売量は1999年をピークとして、現在で3割減少しているなどの厳しい事情はあります。だから海外展開だ!という話も納得感はありますが、それって販路拡大なども含めてコスト増は避けられません。そもそも、国内市場において、出光興産・昭和シェルの2社合わせてシェア28%”しかない”わけですから、他社シェア72%のうち10分の1を剥ぎ取れれば7ポイントUP=28%→35%で売上2割5分増し!ということになります。凄い!!!

そんなに上手くいくわけないだろ、というのはごもっともですが、別にコスト削減だけが命なわけではないです。一般的に、コンサルティングプロジェクトなどでも、効果が見えやすい「コスト削減」に目を向けがちです。「売上を上げる」というのは効果を読みにくいんですよ。でも、売上増の方が、本来的には企業の成長を後押しすることになります。それをどうやって実現するか、を考えることが”戦略”です。

そういう戦略を明確に描いた「統合」であれば、(コスト削減に手を付けないはずはないので)いろんな打ち手が考えられると思うのです。

ちなみに、経営統合しても、ガソリンスタンドのブランドが併存するのであれば、「統合しました!」とか「ロゴ変更します!」とかいうブランド関連に投資する必要は無いと僕は思います。その類の広告を展開する場合にも、単なるブランドの認知向上ではなく、それによって売上を増やす効果を取りに行くような施策を混ぜ込んでいただいて、東洋経済さんをぎゃふんと言わせられるような”統合効果”を創出していただきたいと思います。

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