攻略法を考える前に「やり遂げる意思」を持とう
本日は、ワニブックスより出版されている「人生ドラクエ化マニュアル」をご紹介します。恵比寿を散歩しているときに、偶然、ワニブックス社の目の前を通りかかり、そのショーウィンドーに飾られていた本書のタイトルに惹かれて、amazonで速攻購入した一冊です。
本書の概要
”人生”、その中でも特に”仕事”というものに対する見方を変えて、「これは、ゲームなのだ」と考えてみたら、いろいろ楽しくなるんじゃないか? という一点突破型の書籍です。
「ロールプレイング・ゲーム」というフォーマットを踏襲し、人生をゲーム的に捉えるための視点の置き方を「アイテム」もしくは「呪文」として表現し、アイテムをゲットする/呪文を覚える、ということで、全てのアイテムを集め、全ての呪文を使えるようになったことで、人生が”ゲームのように”楽しいものになる!というコンセプトで書かれています。
ちなみに、著者のJUNZOさんは、エニックスの社員だった時代に、この「人生ゲーム化理論」を構築し、自らの人生をゲーム化するべく、起業独立をしたのだそうです。
要は”認識”の問題
詳細なテクニックについては、本書をお読みいただくとして、基本的な思想は「捉え方を変えよう」ということです。具体的に例を挙げると、
- 人生を「ゲーム」だと捉えよう。
- 「ゲーム」には「目的」がある。達成したいことを「目的」に設定しよう。
- 嫌な上司や、厄介なクライアント、面倒なプロジェクトなどは「敵」だと思って、攻略方法を考えよう。
- 「最終目的=ラスボス」なので、その前に「中ボス」「小ボス」を設定して、順番に攻略していこう。
- 目的達成にも”達成感”はあるが、それ以前に、ゲームプレイ(=日々の生活)そのものを楽しもう。
こんな感じです。これは、つまり「現実世界のAという事象を、ゲーム世界のA’に置き換えて捉えてしまおう」ってことなわけですね。
この中で、一番大事で、一番難しいのが、最後に挙げた「ゲームプレイ(=日々の生活)そのものを楽しむ」だと思います。
「やらされ感」から逃れられるかどうかは別問題
本書は、自分自身が「ゲームマスター」として、世界を牛耳ることが前提です。そうすることで、ゲームの目的を自ら設定し、そのための苦難を前向きに乗り越えていけるわけです。
しかし、それができるかどうかは、残念ながら別のお話です。なぜなら、こういう本を読むことで人生を(少しでも)変えようと思う人の大半は、現状「やらされてる感」に苛まれている人だからです。その「受け身な自分」に慣れた人、語弊を恐れずに極言すれば「言われたことをこなせばお金が入ってくるので、いやいやながら”仕事”をしているものの、その報酬の少なさには不満がある」ような人にとっては、「モノの見方・捉え方」を少し変えたからと言って「やらされてる感」からの脱却は難しいと思うのです。
ロールプレイングゲームも、結局のところ「誰かに敷かれたレールの上を、そこから外れない程度の自由度で走る」というものに過ぎません。その「レール」を自分で敷設する、ということが「ゲームマスター」の仕事なわけですが、それは「圧倒的な主体性」を持つことを意味します。
これは、この本を読んでも解決しません。では、どうしたらよいのでしょうか?
答えは「逃げない」こと。それに尽きる。
その答えは、結局のところ「逃げないという強い意志」にしかありません。現状をゲーム化してもしなくても、現状が辛いから逃げるという姿勢では、そこに成長はありません。基本思想として”立ち向かう”ということが求められるわけです。
ロールプレイングゲームには、弱虫のキャラが良く出てきます。うじうじして、何かというと逃げるわけです。そんなキャラも、どこかでブレイクスルーを迎え、前向きに”立ち向かう”キャラになります。(失われた記憶が戻った、主人公の支援によって”試練”に合格して意識が変わった、などが典型例ですね。)まれに、”最後まで逃げ続けるキャラ”もいますが、そういうのは、ストーリーの中でケチョンケチョンな扱いをされるものと相場が決まっています。
どっかのエヴァンゲリオンの初号機パイロットじゃないですが「逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ」なわけですよ。
与えられた仕事はなんなのか。それに対して、自分はどういう価値を出しているのか。それは、期待されている価値を充足しているのか。自分の後工程の人が、自分の作業結果によって手戻るようないいかげんな作業をしていないか。などなど。考えるべきことは沢山あります。これらと向き合うことを放棄して「つまらない仕事だ」「上は文句ばかり言っている」などと不満を述べるような態度・姿勢では、人生をゲーム化したところで、楽しく生きていけるとは思えません。
とはいえ「戦略的撤退」は、アリよ
とはいうものの、世の中には、本当にブラックな職場環境というものはあります。例えば、僕も1週間の睡眠時間が(土日も含めて)30時間程度だった時期があります。もっと言うと、その1週間の労働時間は18時間×5+9時間×2=100時間超みたいな感じでした。そういう環境が4週間・8週間と続くようならば、さすがに「逃げること」を考えてもいいと思います。(僕は、1.5ヶ月でそのプロジェクトを離脱しました。)
ただ、その状況に陥ったのも、僕自身がハンドリングを誤った結果だと当時から思ってました。当事者として、自分が失敗したなという反省を抱きながら離脱したわけです。(もちろん、不可避な部分はあったとも思いますけどね。ただ、今の僕ならば、もう少し上手くプロジェクトを運営できただろうと思います。なので、スキル不足・経験不足によって、チームメンバーにも苦労をかけてしまったなぁと反省する次第です。)
自分の精神と体を守るための撤退は、何も恥ずかしいことではありません。ヤバいと思ったら一目散に逃げましょう。(このあたりの見極めについては、僕のアクセンチュア時代の先輩である古賀洋吉さん(Drivemode社 CEO)のblog「愛の日記」の「長距離ドライブのように」を読んでいただくとよいかなと思います。)
ただし、そうでない場合(古賀さん的に言うと「充実ゾーン」or「ぬるま湯ゾーン」にいる人)には、「当事者意識をもって、立ち向かう・チャレンジする姿勢」を持っていただきたいと思います。そして、その姿勢を保つことこそが、人生というゲームを楽しみ、クリアするために最も重要な「勇者の資質」だと僕は思います。
ということで、本書「人生ドラクエ化マニュアル」を購入する際には、みずからの”ロトの証”として、この「立ち向かう気持ち・チャレンジする気持ち」を懐にしっかりと携えてから、人生のゲーム化に邁進することを強くお勧めします!