何のためにお金を払っているのか、を勘違いしてはいけない
本日は、ライザップ社長のインタビュー記事「ライザップの「素人」批判 社長を直撃すると…」を題材に、費用対効果の考え方について考察してみます。
記事概要
記者の「高いんじゃないか」「トレーナーが素人なんじゃないか」という疑問に対して、ライザップの親会社・健康コーポレーションの瀬戸健社長が回答するという内容です。(元記事は、AERA 2015年7月20日号より抜粋 とのことです。)
元々の記事も短いのですが、僕の興味は、この1点に絞られます。
――基本的なコースで入会金を含め約37万円。高すぎませんか。
瀬戸社長:よく1回いくらという計算をされますが、私たちはトレーニング自体に対してお金をもらっているわけではない。35万円(税別)はあくまで理想の体形実現への対価だと考えています。
はい。そうですね。要は、35万円で理想の体型を買う、と思った時に、高いと思うか安いと思うか?という話なわけですね。
費用対効果とは?
以前、別の記事でもRoI(Return on Investment)の話をしましたが、どれだけのリソースを投入して(Invest)、どれだけの成果(Return)を得るか、というのが、費用対効果もしくは投資対効果と呼ばれる考え方です。
ここで大事なのは、「何を得るために」「どれだけリソース(お金や時間)を投入するか」という2つの指標を明確にしておくことです。
具体的に言うと
- 体重を10kg減らすために、35万円払う
- 割れた腹筋で異性にモテるために、35万円払う
- メタボによる医療リスクを軽減するために、35万円払う
- モデル業で稼ぐために必要な理想体型を得るために、35万円払う
みたいなことでしょうね。
35万円を安いとみるか高いとみるかは、「リターンをなにと置くか」で決まるわけです。太ったことでモデルとしての仕事が減っている人は、35万円投下しても十分リターンは得られるでしょうし、医療リスクという意味でも中長期値に考えると元がとれそうです。
もう一歩踏み込んで、投下リソースの大きさも精緻に考えよう
と、ここで終わると、ありきたりなお話なので、ギックスらしさを見せるべくもう一歩踏み込んでみることにしましょう。それは何か?「リターンの定義」と同様に、「投下するリソースの大きさ」も精緻にしてみよう、ってことです。
本当に「35万円の出費増」と考えるべきなのか?
つまり、「35万円(+税)」が、純粋な出費増なのか?というものです。僕は、ライザップに通ったこともなければ、回し者でもないし、アフィリエイトで儲けようとしているわけでもないのですが、35万円払うけど、その代わりに削減されるコストがあるんじゃないか?というのは、以前から気になっていました。
ライザップの基本的な思想は「炭水化物食べない」「アルコール飲まない」「清涼飲料水飲まない」「果物食べない」という食事制限の上に成立している(と僕は理解してます)ので、これらの結果「交際費・飲食費」が大きく削られるはずなのです。とくに、不摂生をしている人ほど、この削減効果は大きいです。
例えば、5千円の飲み会に週1回行き、自宅では週4日缶ビールを2-3本ずつ飲み、ラーメンなどの高糖質・高脂肪な食事に毎日800~1200円程度支払っていて、行きもしないジムに毎月1万円の会費を支払っている人がいたとしましょう。それらの行為を一切やめたとすると、2か月間で13.5万円の出費削減となります。
と、すると、35万円の出費と差し引きして、実際の追加支出は20万円程度と考えることができますね。また、月あたり7万円程度の節約となっているわけですから、この禁欲生活をコース終了後3ヶ月(合計5ヶ月)続ければ、ライザップ費用がトントンになるとも言えます。
そう考えると、RoIの「I」の部分が当初想定よりも大幅に小さくなりますので、「35万円は高い」という理由で断念していた人も、ライザップに行くという選択肢を選びやすくなります。
ちなみに、先ほど述べたとおり、この削減効果は「不摂生度合いが高い人ほどデカい」です。僕みたいな人間のクズは、飲み会は週に2~3回。晩酌も本数がもっと多い+ワインとか飲んじゃう日もある、ジムも無駄に高価格なものに入っていながら殆ど行かない、という不摂生度合いでしたので、2ヶ月で25万円とか削減できてしまいます。いや、まぢで。ライザップ、行ってもいいんじゃないか?と思いますよね。
とはいえ、自力で鍛えるよりは、当然ながら高い
一方で、「自力で鍛え上げる」という道を選んだとすると、「どうころんでも、ライザップは高い」という結論になります。
最近、弊社内の課外活動として「ギックス腹筋部」という部活動を立ち上げているのですが、そちらのトレーニング機材は「プッシュアップバー(3,132円)」と「アブホイール(2,700円)」の2種類です。あんまり安いのを買うと品質に不安があるので、しっかりしたつくりに定評のあるadidasのものを購入しました。
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売り上げランキング: 1,348
adidas(アディダス) アブホイール ADAC-11404
売り上げランキング: 2,344
余談ですが、「ギックス腹筋部」の場合、モチベーション管理のために、Tarzanの 5/28 2015 No.672 (580円)を”経典”として崇め奉っています。
内容とかよりも、この表紙の写真を日々目にするだけで、圧倒的なモチベーションが湧いてくる、という仕組みです。ええ、気持ち悪いですよね。知ってます。
もちろん、2ヶ月間、この2つのトレーニング機材を使って鍛えたからといって、ライザップと同じ効果を得られるとは限りませんが、RoIでみると、こっちでやりきった方が当然ながら圧倒的に【効率が良い】ということになります。
何に対する「対価」なのか?
くどくどと述べてきましたが、今回の話は「何にお金を払っているのか?」という問いの設定が重要だ、と言っているにすぎません。シンプルですよね。人は弱い生き物なので、自分の力だけでは頑張りきれないものです。頭の中で分かっていても、頑張れないんです。
そういう人は「頑張らせてくれる人」が大事なんですよね。冒頭で取り上げた記事から引用します。
――一部週刊誌では、トレーナーが「素人」といった批判が報じられました。採用基準は。
瀬戸社長:お客様のやせたいという願望をかなえるためには、高度な知識や食事指導が重要です。ただし、どれだけ良い指導をしても三日坊主では意味がない。本当に必要なのは、お客様に2カ月間、最後まで一緒になってやりきってもらうスキルです。人間性や情熱を重視して選んでいて、採用率は3%です。
そう。大事なのは「2か月間、モチベーションを維持させること」なんですよ。35万円は「2か月間、頑張り続けるため」に支払われます。これは高いとか安いとかの話以前に「そうじゃないとできないなら、払うしかないお金」なんです。
というわけで、ライザップはビジネスとしては間違ってませんし、頑張れない人を頑張らせるというサービスは、意味があるものだと思います。
でも、ぼくなら「自力」を選ぶ
ここまでの話に鑑みて、僕が至った結論は「自力で頑張る」になります。理由は2つあります。
1.自分の人生の舵取りは、自分で行いたい
ひとつめの理由は、自分の人生の舵取りは自分で行うべきだからです。関連記事でも述べましたが、誰かに何かを決めてもらって生きるのは、可能ならば避けたほうが良いです。自分の人生は、自分で決められることは、自分で決めて自分でコントロールすべきだと思います。
”誰か”に言われれば頑張れるなら、”自分”に言われても同じように頑張れるはずですよね。
多くのベンチャー企業経営者がトライアスロンやマラソンに興じるのは、「自分との戦い」だからだと僕は理解しています。彼らは、自分で何かを選択し、それを自分で遂行します。
自分で自分を律することができない人が、会社や組織を率いることは難しいと思います。人間である以上、聖人君子ではいられないかもしれませんが、できる限り”己を律する”ことができる人間でいたいと、僕は思うのです。
2.同じ金額を、別のことに使った方が満足度が高い
もう一つは、完全に「お金の使い方」の問題です。先ほど、飲食交際費の削減効果や、自力でやった場合の投資抑制の話をしましたが、”自力でやる”ということは、この両方の効果を一度に得ることになります。
要は、2ヶ月で13.5万円の出費削減効果を得つつ、ライザップにいったつもり貯金が34万円できるわけです。合計は約50万円ですよ。
自制心だけで50万円ですよ!!しかも、別に「痩せない」ということではなく、自力で頑張って痩せる、という前提です。
50万円あれば、夫婦二人でハワイに1週間旅行できちゃいます。自力だと腹筋が6パックにならなくて、4パック止まりだったとしても、「6パックで自宅でゴロゴロ」するよりは「4パックでハワイでのんびり」を僕は選びます。あなたも、そう思いませんか?
選択するのは、自分自身
とどのつまり、キチンと考えて「その金額を支払うのは、自制心のなさを補うため」だと理解さえすれば、あとは合理的な判断ができるはずだ!ってお話なんです。
自分の自制心では4パックにもなれないと思うなら、6パック目指してお金を払うのも良いでしょう。あるいは、自力でも一定の効果は出せるだろうと思うなら、その費用を別のものに振り分けた方が良いです。(あるいは、4パックなんてありえなくて、絶対に6パックにならないといけないという熱い想いがあるのならば、お金を払うしかないでしょうね。)
ありきたりな結論ですが、決めるのは自分自身です。
ということで僕は禁酒してます。ジムも解約しました。そして、1ヶ月半で4kg減量しました。(昨年、2.5ヶ月で7kg落とした後に、10か月で4kgリバウンドしました。そのリバウンド分をこの1ヶ月で再度落としきったわけです。)当面、禁酒を継続し、減量(あと-1kg程度)と筋肉増強を自力で目指したいと思います!仕事も、ダイエットも、筋トレも、敵は自分自身なんですよね。