”考え方”を考える|正解の探し方のコツ:当てに行くな。考え抜いて振り抜け。

AUTHOR :  田中 耕比古

正解は自分で見つけるものである

本日は、日々の業務における「正解を探す」という行為について考えてみたいと思います。

当てようとすると当たらない、寄せようとしても寄らない

仕事をしていく中で「正解を探す」という場面に出会うことがあるでしょう。例えば、部長から「来週の部長会の資料、たたき台つくっておいて」と言われた場合、「上司の思っている資料のアジェンダ・組立てってどういうものだろうか?」という”正解”を探すわけですね。あるいは、クライアントに「ちょっと店頭欠品について困ってるんだよね。だから、なんか、いい提案してよ」と言われた場合にも「どういう提案をしたら受けるだろうか?」という”正解”を探すことになります。

しかし、この「正解を探す」という行為は、”正解が既にどこかに存在している”という前提で進めてはいけません。

そもそも、相手の中にも答えはない

良くある失敗として「上司やクライアントが考えているであろう”正解”に当てにいく」という仕事の進め方があります。これは、定型化された仕事や単純作業ならまかり通りますが、「考える仕事(=ホワイトカラーの仕事)」においては悪手中の悪手です。最悪です。

なぜならば、相手の中に「確固たる正解」があることの方が少ないので、当てようにも当てようがなく、寄せようにも寄せようがないのです。いや、ほんとに。

「なんか違うんだよなー」「もっとなんかないかなー」「んー、なんか、こう、斬新なの欲しいなー」「もうちょっと考えてみてよ」とか言ってる人は、まったくイメージが付いていません。断言できます。そんな状況の人に対して”寄せる”ってのは無理です。時間の無駄です。

では、そんなときはどうするべきか?

仮説検証型じゃないと、物事は進まない

答えは簡単です。「自分で、コレだ!と思うものを決めて、それをブツける」のです。これしかないです。もちろん、外すかもしれません。でも、いいじゃないですか。だって、当てにいっても、寄せにいっても、どうせ、外すんですから。(笑

この考え方は、いわゆる「仮説検証」をしていることになります。先述した状況における「仮説」は、以下のようなものとなるでしょう。

  • 部長会資料の仮説:前回部長会で報告した内容のその後の進捗・成果、前回部長会以降に新たに始めた取り組みとその結果、今後取り組んでいく打ち手や施策 を説明したら、出席者(他部署の部長職)の興味・関心にも合致するし、発表者(自部署の部長=この作業の依頼主)の言いたいことも漏れなく言い尽くせるはずだ。
  • 課題解決提案の仮説:自社の在庫管理ソリューションはあるが、それをそのまま提案してもクライアントの課題にミートするかどうか分からない。なので、まずは”困りごとの背景”、”具体的にどういう状態になりたいのか(=解決後の姿)”をヒアリングしながら、一般論(あるいは、一つの例)として、自社のソリューションを紹介すれば、課題の詳細を把握しつつ、自社ソリューションのスムーズな売り込みも可能だろう。

これでお話をしに行って「全然違う」とか言われたらしめたモノです。「何が違うのか」とか「どこは合っているのか」とかを質問しましょう。目の前にたたき台はあるわけなので”一家言ある人”なら、いろいろな思いを吐露してくれるはずです。(ただ、ここでも「なんかちがうんだよなー」「もうちょっとないかなー」という人は沢山いると思いますが、そういう場合にも、「どっか、絶対に違うところありませんか?」とか「一番違和感があったのはどこですか?」とか「ちょっとはいいなーと思ったとこはありませんか?」と食い下がるべきです。ここで、ノーヒントで帰ると、次回も同じ結果になるのは目に見えています。)

「考え抜いて、一旦”決めて”くれる人」は重宝される

ここで忘れてはいけないのは、決して「単なる思い付き」ではなく「全身全霊で考え抜いた仮説」をつくることです。そして「部分」だけで終わらず、「全体」「流れ(ストーリー)」まで作りきることが大切です。また、そのために、先に調べられるものはちゃんと調べておきましょう。さらに、最初に思いついたアイデアの他にも、もっと良いアイデアがないのかを考えてみるのも有用です。

例えば、「前回部長会の資料」をちゃんと読んでおくのは良策ですね。調べられるものは、調べておいて損は無いです。

あるいは、「自社ソリューションをとりあえず持っていこう」という考えから、「いや、いきなり紹介しても厳しいから、なんか手はないかな?」と考えるのも良いですよね。「他社も含めて、いろんなソリューションを一杯紹介してみた方が、課題を聴き出しやすいかも!?」というアイデアもあるかもしれません。(僕がやるなら、素直に業務上の課題と、課題解決後の理想の姿をヒアリングしに行きますが、業務解釈力などに不安がある人は、自社他社問わずにソリューションを山ほど持って行って、どれかハマりそうですか?というような議論をしてしまうのはアリです。)

こういう「考え抜いたもの」を持ってきてくれる人は、上司やクライアントにとって「思考のアウトソーシング先」として重宝されます。自分で考えなくても、それなりに考え抜いてもってきてくれるわけですから、そりゃ便利ですよね。

仕事において「便利だ」と思われるのは有用です。(ただ、無償で何でもやってくれるから便利だ、というのは別の話なので間違えないでくださいね。あくまでも”お仕事として”のお話です。)

レビュアーは常に有利。それは諦めよう。

とはいえ、どれだけ考え抜いていったとしても、「一発OK」というのはなかなか難しいです。目の前に「何か」があれば、人は色んな意見が言えます。なので、いろんなアイデアが出てくれば、それはそれで「ありがとうございます!」と受け取って、より良い”正解”を一緒に目指していくべきです。

レビュアー(資料などをレビューするひと)は、常に有利です。先ほど述べた「何か」は既に目の前にあるわけですから、それを見ながら、ああでもないこうでもないと考えるところから話が始まります。ひどい場合には、「とりあえず、説明して」と言っておきながら説明は一切聞かず、その「何か」を眺めながら発想を膨らまして、突然「ごめん、もういいわ」と言って自分の考えを語り始める人もいます。結構たくさんいます。これは、仕方ないことです。諦めましょう!!

それでも、上司やクライアントの頭の中で、それまでクリアになっていなかったものが「たたき台」によって精緻になっていったのは、たたき台をつくったあなたの成果です。胸を張りましょう。世の中の物事には、いくつかむずかしさがあります。ひとつは「ゼロを1にすること」です。そして「1を10にする」のももちろん難しいです。この場合、あなたが「ゼロ→1」を担当し、上司やクライアントが「1→10」を担当しただけのことです。(※0を0.1にしかできなかったのだとしたら、もうちょっと頑張りましょう)

その上で、”便利な奴”から脱却しよう。

とはいえ、便利な奴だな、で人生を終えるわけにもいきません。同じ上司やクライアントと一生付き合い続けるのは、まぁ難しいです。まずない、と言っても良いでしょう。

そこで「便利な奴からの脱却」を図りましょう。便利だな、と重宝される人材は、いろんな情報に触れる機会を得られます。そこで得た情報を、自分なりに解釈することを怠らないようにしましょう。そうすることで「得られた情報をどのように活用すべきか」という訓練ができます。そして、当然ながら、ここにも”仮説検証”が走るわけですね。この情報は、こういうことを意味するのではないか?と思って、実際に物事がそのように動くかどうかを(自分に関係ない部署のことだとしても)watchしておけばいいのです。

そうやって情報処理能力を鍛えていけば、論理的な判断ができるようになります。(正確には、判断する能力と、それを判断結果を実行に移して責任を取る能力は別物ですが、まぁ、それは一旦横においておきましょう)

ここまでくると「自分でいろいろ考えて仮説をつくれる便利な奴」から「適切な情報で適切な判断を下せる有能な奴」へと、周囲の評価が変わるでしょう。”自分で考えて仮説を作る”ということも”適切な判断を下す”ということも、多くの人は不得手です。この2つの能力さえあれば、それだけで、どの業界に行ったとしても一生食うには困りません。

ということで、まずは「寄せに行く」「当てに行く」というスタンスを捨て、「振り抜く!」意識をもって仕事にあたってみてはどうですか?

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