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「質問をするとコンピュータが答えてくれる」という機能を「クラウド上のサービス」として使う。
こんにちは、技術チームの岩谷です。今日から新しい連載が始まります。本連載ではIBMの質疑応答システムである「Watson(ワトソン)」を、同じくIBMのクラウドプラットフォームである「Bluemix(ブルーミックス)」から利用する方法を説明します。
この連載の中で、
- Watsonをご存知のかたは、「Watsonの機能をクラウドから利用できるようになって便利である」
- クラウドをご存知のかたは、「クラウド上で提供されるサービスとしてWatsonという高度な質疑応答システムがある」
- どちらもご存知ないかたは、「コンピュータによる高度な意思決定システムがサービスとして手軽に利用できる」
という事をご理解いただければと思います。
「東京のお土産はどこで買ったらいい?→浅草です。」「上海の空港は?→浦東国際空港です。」こんなアプリケーションが簡単に手に入る
まず、今回の連載で説明する内容のアウトプットを先にお見せします。Watsonのデモサイト「http://watson-qa-demo.mybluemix.net/」にアクセスしてください。以下の画面が表示されます。入力欄が二つあります。一つ目の入力欄に”Travel”を、二つ目の入力欄に”Where should I buy souvenirs in Tokyo?” を入力して、ボタン「Ask」押してください。
以下のように画面が切り替わりました。どうやらプログラムが「Ask」の内容を処理して回答を返したようです。
上記で行われたことを簡単に説明すると、
- コンピュータに対して、Travel(旅行)に関するカテゴリで「私はお土産を東京のどこで買うべきでしょうか?」という質問を行って
- それに対してコンピュータは「観光客向けの小物を買うなら、一番よい場所は浅草仲見世や表参道です」という回答を返した
という流れで処理が行われた事になります。
「質問者が人間の使う言葉でコンピュータに対して質問をすると、コンピュータがまるで人間のように答えてくれる」というシステムがここにはあります。ちなみに同じように質問で「What is the Airport of Shanghai(上海の空港は?)」という質問をしてみてください。コンピュータは「Pudong International Airport(浦東国際空港)です。」という答えを返すでしょう。
Watsonとは? Bluemixとは?
このようなシステムは「質疑応答システム」と呼ばれており、中でもIBMの「Watson(ワトソン) ※1※2」が世界的に有名なプロダクトです。このWatsonは従来一部の企業でのみ利用されているシステムであり、一般ユーザの利用にはとても敷居が高いものでありました。しかしさきごろ、このWatsonの機能をインターネットから気軽に利用できるクラウドサービスをIBMが公開しました。
この「Watsonのクラウドサービス」は「IBM Bluemix(ブルーミックス) ※3」というクラウドサービスの一部として提供されています。Bluemixとは「自分で開発した業務アプリケーションをクラウド上で簡単・便利に稼動させる」ための「プラットフォームサービス」です。この場合の「プラットフォーム」とは「アプリケーションを実行するために必要な基盤」と解釈してください。Bluemixはこれを「フルマネージドのクラウドサービス」として提供しています(フルマネージドのクラウドサービスに関する説明はこちらをご覧ください)。
※1…Watsonはよく「人工知能」という表現をされることがありますが、IBM自身はWatsonを「コグニティブ・コンピューティング・システム(Cognitive Computing System)」と呼んでいます。これは人工知能という言葉を狭義にとらえた場合「Watson内部の処理が人工知能にあたるか否か?」という議論があるためであろうと思われます。ちなみに上記の「コグニティブ」とは「経験的な知識に基づいた」という意味で、Watsonが自身に入力されたデータやで自身で出力したデータを自己学習していくことによって、より高度な質疑応答を実現している事から命名されています。
※2…今回はWatsonが「英語で質問をすると回答を返してくれる」機能を紹介しましたが、Watsonの機能はもちろんこれだけではありません。Watsonには様々な質疑応答の機能が備わっており「そのほんの一部の機能」がクラウドサービスとして公開されているのだとご解釈ください。今回紹介した機能の他にクラウドから利用できる機能としては「文章を送るとその文章が何語で書かれているかを教えてくれる機能」や「言語の翻訳機能(英語⇔スペイン語など)」「文章を送ると書いた人の性格的特性を類推してくれる機能」などがあります。
※3…上記WatsonとBluemixとの関係を基盤階層的に表すと以下の図のようになります。「Bluemix」という基盤の上で「業務アプリケーション」を自分で開発し、その業務アプリケーションから「Watson」の機能を呼び出す。すなわち「Watsonは部品」であるという事をご理解いただければと思います。
次回、この質疑応答システム「Watson」を、クラウドプラットフォームサービス「Bluemix」から利用する方法を説明します。
次回の連載では、
- Watsonを利用するサンプルアプリケーションのソースを入手して、
- ソースをBluemix上に搭載して
- ほんのちょっとカスタマイズして
- カスタマイズ済アプリケーションを実行する
という流れを説明していきます。