clock2015.04.13 08:26
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「仮説探索型分析」と「仮説検証型分析」:分析のアプローチは2つだけ

AUTHOR :  網野 知博

分析のアプローチはたった2つしかない

分析のやり方には大きく2種類のアプローチがあります。「仮説探索型分析」と「仮説検証型分析」になります。「2種類以外にも他には無いのか?」と聞かれるとドキッとしますが、とりあえずビジネスのシーンで活用する分析はこの2つだけで困ったことは無いと答えたいと思います。笑

仮説検証型分析のアプローチ

まず、「仮説検証型分析」のアプローチです。これはコンサルタントが非常に好むアプローチになります。プロジェクトが立ち上がったタイミングで、まずはチームメンバーが集まって議論を始めます。「クライアントってこういう特徴があるのではなないか」「顧客からこういう利用のされ方をしているのではないか」「こういう使い方をしてくれている顧客が優良顧客なのではないか」「その顧客にはこういう攻め方をしていくと企業が成長していけるのではないか」などなど。各業界のエキスパートと各業務領域のエキスパートが集まって議論をする場合、語弊を恐れずに書くとだいたい8割以上の確率で仮説があたっています。そのような仮説を立ててしまえば、あとはそれをデータを持っていかにして証明していくのかという話になります。

 分かりやすい例を紹介しようと思います。クレジットカードはリカーリング利用者は優良顧客であるという通説があります。リカーリングとは、月額引き落としの利用になります。最たる例が公共料金などになります。(携帯電話、電気、ガス、水道、NHK、NTT、保険など)

 クレジットカードは顧客にメインカードとして使ってもらえるか、特定の領域のみで使ってもらえる特定カードになるか、利用もされず、財布にも入ってこない保有されるだけのカードになるか、大きく3パターンです。当然クレジットカード各社はメインカードを目指してしのぎを削っています。最近では消費者はクレジットカードをある特定のカード(通称メインカード)に集約させていき、クレジットカード利用により獲得できるポイントをなるべく集約させることが王道となっております。そのためメインカードか否かの一つの試金石が、リカーリングになります。クレジットカードの利用を極力メインカードに集約させるということは、公共料金の支払いもクレジットカードで行い、その利用するカードはメインカードに集約されるからです。

 ここで電子マネー搭載のクレジットカードのケースを考えてみましょう。電子マネーの金額がある一定水準を下回った際に自動的にチャージされるオートチャージ機能搭載されているクレジットカードの場合、このオートチャージを一つのリカーリング的なサービスと捉える事ができます。

「リカーリングを利用している顧客は一般的に優良顧客である。このクレジットカードの場合電子マネーへのオートチャージが一種のリカーリングとして捉えられる。よってオートチャージを利用している顧客は優良顧客なのではないか。」と言う推論的な仮説を立案できます。

 このように仮説を立てればオートチャージ利用者と非利用者を比較して顧客の優良度を分析する、現在オートチャージ利用者が以前オートチャージ利用者でなかった場合、オートチャージ利用後に顧客の優良度が上がったかどうかを分析する、などを行えばこの仮説は正しいかどうかの検証ができます。これが所謂仮説検証型分析のアプローチになります。仮説を立ててしまえば、データを用いて何かしらの検証ができるので、世の中でも仮説検証アプローチが有効であると言われるのはご理解頂けると思います。

仮説探索型分析アプローチ

では、このような仮説が思いつかなければこのオートチャージ利用者が優良顧客であるという事実に気づけ無いのでしょうか。

もう一つのアプローチが「仮説探索型分析」になります。

 仮に顧客のアクションに対して全てフラグが付与されているデータベースを完備させていたとします。例えば、オートチャージを利用している、ETCを利用している、プライオリティパスを利用している、などクレジットカードには付帯サービスがありますが、その利用の有無を全てフラグとして付与させていたデータベースを構築している場合、「仮説探索型分析」を行うことでたどり着くことができます。

 体系的に全パターンで「○○のサービスを利用している人の顧客の優良度」と言うものを全て見ていけば、いつかはオートチャージを利用している人は顧客の優良度が高いことに気づきます。その時に、その分析結果を解釈して「ああ、もしかするとオートチャージってクレジットカードのリカーリングと同じ位置づけで捉えれば良いのかもしれないな。」「よってオートチャージ利用者は優良顧客なのではないかな。」と言う仮説をもとに、多面的に分析してその仮説を検証すれば良いのです。

おかしなところはな、向こうから数字が目に飛び込んでくるんや

 「仮説探索型分析」のコツはとにかく数をこなすことです。レントゲン写真で初期の肺がんや小さい骨折などの症状に素早く気づくコツは、正常な健康体のレントゲン写真をそれこそ大量に見まくることだと聞いたことがあります。「仮説探索型分析」も体系立てて、多面的にデータ分析の結果を見続けることで、小さな違和感に気づくことができます。その違和感を「こういうことではないか」と解釈することが初期仮説への第一歩になります。

 偉人の言葉を借りると、稲盛さんは「おかしなところはな、向こうから数字が目に飛び込んでくるんや」とおっしゃったということです。まさにその一言に「仮説探索型分析」のコツが凝縮されています。

どちらか、ではなく、どちらも

以上を読んでわかると思いますが、「仮説検証型アプローチ」はピンポイントに仮説を証明していけば良いので非常に手っ取り早いと言うメリットがあります。また、仮説が間違っていたら、次の仮説に移れば良いので時間を無駄にすることもありません。一方、「仮説探索型アプローチ」は体系的に見ていく必要があるので、非常に時間がかかります。また、優良顧客の判別であれば、事前にそれに必要となるフラグを全て付与したデータセットが必要になります。それでも、今まで気づけなかった仮説にたどり着くことができるので、大変ではありますが、仮説探索型アプローチも非常に有力な手段になります。

そういう点ではどちらが優れている、優れていない、と言う議論ではなく、2つのアプローチがあるという事を理解して使い分けることが重要です。

最後に余談になりますが、「仮説探索型分析」と「仮説検証型分析」のこの2つなのか?と言う問いに、あえて切りだすと「現状把握型分析」というものもあります。分析結果を見て、自社の状況がこのようになっているのだと理解していくということになります。ただ、現状把握して、理解した後に、そこから何かを解釈して、こういうことではないか、と言う仮説につなげていくことが一般的なため、弊社では「現状把握型分析」も「仮説探索型分析」に包含して捉えています。本当に現状を把握して終わりということはあまりないからです。

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