あなたはそのアイデアに気づけるか
-ヒット商品を生むフレームワーク-
「どのようにしたらヒット商品を生むことができるのか」。残念ながら確実にヒット商品を開発する手法は存在しないが、“気づき”を促すフレームワークを活用することによってヒットする確率を上げることは可能である。商品開発・マーケティングは深く広い領域であるが、本稿では商品開発プロセスの源流となる「アイデア発想」につながる“気づき”に的を絞って、その手法を解説する。
(2008年秋東洋経済THINK!記事)
どうしたらそのアイデアに気づけたか?
「どのようにしたらあなたは『iPod』(アップル社)というアイデアに気づけていたか?」「どうしたらあなたは『Wii』(任天堂)というアイデアに気づけていたか?」「どうしたらあなたは『オシャレ魔女 ラブandベリー』(セガ)というアイデアに気づけていたか?」。ここで問いたいのは「それらがなぜヒットしたのか?」ではなく、「どうしたらそのヒット商品(のアイデア)に気づけたか?」である。
人によって発想の着眼点は異なると思うが、ある程度汎用的に「ヒット商品(のアイデア)に気づける」ように思考パターンの分類を行った。
14パターンのうち5つは“パクリ”という分類に括られる。パクリ、つまりすでに存在するものの模倣からアイデアを発想するやり方である。例えば「パクリ・リセグメント」。少年向けに「甲虫王者ムシキング」(セガ)というトレーディングカードゲーム方式のアーケードゲームが流行っていると知っていれば、「同様に少女向けもヒットするのでは?」と考えて「オシャレ魔女 ラブandベリー」に気づくことができるであろう。
意外とユニークなのが「パクリ・リネーム」。水なしで飲める下痢止めとしては「ロペラマックサット」(佐藤製薬)が既に先行商品として販売されていたが、「ストッパ下痢止め」(ライオン)というキャッチーで商品名から一発で機能がわかる非常に訴求性のある名前で勝負してヒットした。機能は変わらなくても名前だけでヒット商品に変わるのだ。
「一点突破」と「ハイエンド」は違いが難しいかもしれないが、「一点突破」は“ある一面”だけは競合と比べて著しく差別化を図ったもの。「ハイエンド」は高価格ではあるが、高品質なもの。例で言えば、ものすごく辛いスナック菓子という「暴君ハバネロ」(東ハト)は「一点突破」、「こだわりおむすび」(セブン-イレブン・ジャパン)や「ザ・プレミアム・モルツ」(サントリー)などは「ハイエンド」である。これは分類学のツールではないので、「高機能で高価格な商品」「味で勝負しているが高価格な商品」などのアイデアが発想できれば、「ハイエンド」でも、「一点突破」でも、分類はどちらでも構わない。
競合と比べて低価格ではあるが、品質は保持しているという「低価格」は王道だが、盲点なのは、業務用などで普及している高機能な商品を廉価版で提供する「デチューン」。プラネタリウムは大規模な施設に行って見るというのが常識であったが、「ホームスター」(セガトイズ)では家庭用プラネタリウムというものを実現してヒットさせた。
再度確認すると、「実際のヒットメーカーたちがどのようにしてそのヒット商品に気づいたのか」を知るためのものではなく、「自分たちがどうやったらそのヒット商品に気づけたのか」を考えるために作ったツールが図表7のヒット商品の“思考パターン”である。当然いくつかのパターンを組み合わせて出てくるアイデアもあると思うが、このツールをアイデア発想のチェックリストとして活用することで新たなヒット商品のアイデアをたくさん発想してほしい。
では、次回は実際にいくつかのケースを見てみよう。
(その⑤につづく)