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2014年のプロ野球全打席データをクロス集計していきます
2014年のプロ野球の打席データを全量(約6.6万件)手元に置き、さまざまな切り口でクロス集計して、プロ野球全体の打席の傾向を見ていく「プロ野球データでクロス集計 with Tableau」の連載シリーズ。
過去3回に渡りカウント別の打率と、余裕時・追い込まれ時の打率ランキングについては紹介しました。今回からは点差別の打席・打率についてみていきたいと思います。
火事場泥棒&焼石に水な打者?
野球の起源とも言われるクリケットの元日本代表選手で、広島カープの大ファンである弊社CEOの網野は、この連載が始まったあとに「『火事場泥棒』&『焼石に水』な打者のランキングを見てみたい」と私に声をかけてきました。網野の定義では、『火事場泥棒』は大差で勝っているときの、火事場のどさくさ感がある状況でよく打って打率を稼ぐ打者。『焼石に水』は大差で負けていて、今更打ってもという状況の時によく打って打率を稼ぐ打者とのことです。
確かに、わが愛する阪神タイガースを応援しているときも、タイガースの打者が『火事場泥棒』的、もしくは『焼石に水』的に打っても、「そこじゃなくてもっといい時に打てよ!!!」と思ってしまいますね。。。。球界全体の中で『火事場泥棒』『焼石に水』な選手はどの選手なのか知りたくなってきました。
というわけで、今回の連載シリーズでは、2014年プロ野球の全6.6万件の打席データをクロス集計していきながら、『火事場泥棒』『焼石に水』な選手を見ていきましょう。
火事場泥棒 / 焼石に水 / クラッチヒッターの定義
まず最初に「火事場泥棒」、「焼石に水」な打者は上記のとおり大差リード時、大差ビハインド時に打つ打者とし、「火事場泥棒」的&「焼石に水」的でないシーン、すなわち打ってほしい場面で打つ人のことを「クラッチヒッター」と呼ぶことにしましょう。
次に「火事場(大差リード)」「焼石(大差ビハインド)」「クラッチ(ある程度僅差)」な状況の閾値、すなわち大差と僅差の境目の点差を、”試合をあきらめてしまいそうな点差”という観点から定義します。ここでは満塁ホームランを打っても届かない点差、すなわち5点差以上差がついている点差を”試合をあきらめてしまいそうな点差”とおきましょう。それに従うと、5点差以上で勝っている時を「火事場(大差リード)」、5点差以上で負けている時を「焼石(大差ビハインド)」、4点差以下の負け状況&同店&4点差以下の勝ち状況を「クラッチ(ある程度僅差)」となります。表にまとめると以下のようになります。
火事場泥棒 / 焼石に水 / クラッチな状況での打率
では、この定義に沿ってプロ野球界全体での、「火事場(大差リード)」「クラッチ(4点差以内)」「焼石(大差ビハインド)」な状況下での打席数、凡打数、安打数、打率を見てみます。2014年プロ野球全6.6万打席全体を集計すると以下のようになりました。
打率順を比較すると、「火事場(大差リード)」>「焼石(大差ビハインド)」>「クラッチ(4点差以内)」となりました。なかなか面白いですね。このような打率順になる理由を推察していきましょう。『相手投手の質』と『相手投手の必死度』で説明できそうです。
まず「火事場(大差リード)」はチームが大差でリードしている状態です。この状況では相手ピッチャーは一軍、二軍を行ったり来たりしている二線級のピッチャーが投げているケースが多いです。2014年の阪神でいったら一軍に定着しきれなかった玉置投手や二神投手に相当するでしょうか。『相手投手の質』という観点でいうと、エース級の投手と比べると質が高くない投手と言わざるを得ないですね(玉置投手、二神投手ごめんなさい。今年壁を破って1軍でバリバリ活躍されることを期待しています!!)。一方で『相手投手の必死度』という観点でいうと、一軍に定着するために投手はものすごく必死で投げています。必死度はマックスです。それでも打者の打率はこのケースが一番高いんですね。
次に「焼石(大差ビハインド)」を考えます。この状況は相手から見ていると大量リードしている状況なので、中継ぎ投手を無駄遣いしないようにエースを含む先発ローテーションピッチャーが投げているケースが多いです。阪神でいうと、メッセンジャーが5対0以上の大差で勝っている状況で投げている感じなので、『相手投手の質』は高いです。ただ『相手投手の必死度』という観点でみると、大差でリードしている状況なので、どうしても気が緩みやすく『相手投手の必死度』はそこまで高くないと言えるでしょう。
最後に「クラッチ(4点差以内)」の状況です。この状況は、試合が竸っている状況なので、相手ピッチャーは一線級のことが多いですし、緊迫感の中で必死に投げています。つまり『相手投手の質』も高いですし、『相手投手の必死度』も高いです。阪神で言えば、メッセンジャーがガチで必死で投げている状況です。それは打ちにくそうですよね。
このようにまとめると、今回確認した「相手投手」という観点での打率に影響する因子は、『相手投手の質』が第一因子で、『相手投手の必死度』が第二因子といえ、二つを比べると『相手投手の質』が支配的な因子と言えるかと思います。考えてみると、野球は打者が頑張って打っても7割はアウトというスポーツで、ピッチャーの支配力が高いスポーツと言えます。その『ピッチャーの質』が打率に大きな影響を与えているとデータから言えることも合点がいきますね。
一方で、プロ野球選手はアマチュア野球界では屈指の選びに選び抜かれた選手たちですが、その中でも一線級と二線級のピッチャーのときの打率でここまで差ができるのは、プロ野球が如何に厳しい世界であるかを表しているように思います。本当に厳しい勝負の中に紙一重の何か微妙な決定要因があるんでしょうね。それを掴めるか掴めないか。阪神でいうと、7年目で大ブレイクした大守護神、藤川選手の例もありますので、玉置投手、二神投手、今年応援してます!(と書いていたら、玉木選手、急変との記事が飛んできましたね。この調子で頑張ってください!)
というわけで、今回はプロ野球全体でみた状況での打率を出しました。次回から二回にわたって、セ・リーグ、パ・リーグの各シチュエーション別打率ランキングを出して、「火事場泥棒」な打者、「焼け石に水」な打者をバイネームで見ていきます!
【連載記事】プロ野球データでクロス集計 with Tableau
第1回 2014年 全6.6万打席の紹介
第2回 カウント別の打率
第3回 カウント別打率ランキング 【セリーグ】
第4回 カウント別打率ランキング 【パリーグ】
第5回 大差な時に打つ打者(概要)←本日
第6回 火事場泥棒・焼石に水な打者 【セリーグ】
第7回 火事場泥棒・焼石に水な打者 【パリーグ】
第8回 計算フィールドの利用