目次
Power BIで実践するPOSデータの事業構造分析を公開
この連載では、2013年11月に弊社CEOの網野が出版した「会社を強くするビッグデータ分析」「Part2 分析の実践」の部分を「Power BIでPOSデータを使って事業構造分析を実践する」という具体的な実践例を紹介しながらアップデートしていきます。
前回(第1回)は、事業構造分析の概要と分析ステップについて紹介しました。第2回の本日は、その分析ステップに沿って弊社で利用している分析ツールを紹介していきます。
事業構造分析の分析プロセスと弊社で利用している分析ツール群
前回紹介したとおり、事業構造分析を実施するプロセスは以下の6ステップになります。
データを収集し、それを格納・前処理を実施した上で、分析方針を検討する。検討した分析方針を満たすようにデータを加工し(すなわち2次属性をつけ)、それをクロス集計してビジュアライズするというのが事業構造分析における一連の分析プロセスです。
このようなプロセスで実施する事業構造分析ですが、弊社の中で重視しているポイントがあります。それは何度も『試行錯誤』するということです。例えば、1周目のプロセスでクロス集計したあとに、次は別の軸・切り口でデータを集計しなおしたいということは分析を実施していると頻繁に、というよりむしろ『必ず』起こります。一回のクロス集計だけで満足行く結果が得られたということはほとんどありません。
そういった意味で分析環境として、スムーズに試行錯誤できる環境を整えるということは、非常に重要です。弊社では、スムーズに試行錯誤できるかをチェックポイントに置きながら、様々な分析ツールを試してきました。そして、その取捨選択の過程を経て、現在でも弊社で利用しているツールを事業構造分析のプロセスに照らし合わせて紹介すると以下のようになります。
AktblitzII/AWS Redshift/Tableau/R/Power BIの紹介
以下、上図で紹介したそれぞれのツールの特徴を簡単に紹介します。
AktblitzIIs
AktblitzIIsはプログラム言語を必要とせず、ビッグデータのJOINやUNIONが高速でできるソフトウェア。PCにインストールして利用可能。インメモリーDBで利用しているのでとにかく高速処理・集計が売り。
AWS Redshift
Amazon Web Servicesの提供するクラウド上のデータウェアハウスサービス。大規模データの高速集計・定型的な処理に圧倒的な強みをもつ。利用にはSQLの知識・スキルが必要。
Tableau
高速のデータ視覚化ツール。反応速度が非常に早く、サクサク動き、プログラミングは不要。属性つきデータのクロス集計の試行錯誤には特に有用。ダッシュボード機能も充実しており多様な表現が可能。
R
R言語はオープンソースでフリーの統計解析向けプログラミング言語。王道の使い方は統計解析ではあるが、メモリーを豊富に詰んだマシンではビッグデータ分析は可能。無料なのは大きな利点だが、R言語の知識がないと利用できない。
Power BI
エクセルのアドオンで使えるので、エクセル利用者にとってのハードルは低い。プログラミング言語は不要。データ連携からビジュアライズまですべてのプロセスを網羅できる機能を有する。
簡単にソフトウェアの特徴を紹介しましたが、それぞれのソフトウェアの良さを知ってもらうためには、読者の皆さまご自身が試用版を導入して、どのようにデータを扱えるかを体験いただくのが一番かと思います。我々もセミナーで上記ソフトウェアのデモを実施する機会が多いのですが、参加者の皆様から「デモをみるとソフトウェアで何ができるかを把握できる」とのフィードバックを頂くので、やはりお試しいただき、実際に何をできるのか見ていただくのが一番でしょう。(ちなみに、また3月にも日経BPさん主催の「分析ツールの選び方」に関するセミナーを実施する予定ですので、ご興味がある方はぜひ参加くださいませ。)
本連載の紹介用にPower BIを選んだ理由
さて、今回の連載「POSデータでの事業構造分析」の紹介にあたって、紹介用の分析ツールとしてPower BIを選んだのですが、なぜPower BIがよかったのでしょうか。
本連載でPower BIを選んだ理由は「分析プロセスのすべてのステップを網羅的に把握できる」かつ「使うのにプログラミング能力を必要としない」からです。
Power BIがあれば、他のツールと組み合わせることなく単独で、事業構造分析を実施することができます。AktblitzII、Redshit、Tableauといったツールは、それぞれ得意な機能面ではPower BIより優れた面がありますが、ツールをいくつか組み合わせないと事業構造分析ができません。今回の連載では、ツール間を行ったり来たりするよりは、シンプルに一つのツールでの実施内容を伝えれたほうが、寄り道することなく、分析の実践をダイレクトに伝えることができると考えました。
一方で、RはPower BIと同様にすべてのプロセスをカバーできる機能を有していますが、Rを使うにはR言語というプログラミング言語の知識・スキルを習得する必要があり、利用のハードルが少し高くなります。
ですので、「一つの分析ツールで一貫して分析が実施できたほうがよい」という伝えやすさの観点と「利用のハードルが低く簡単に使えたほうがいい」という利用しやすさの観点から、本連載で紹介する分析ツールとしては、Power BI選択しました。
少し補足しますと、他のツールでの事業構造分析のパフォーマンスが劣っているから、今回の他のツールは紹介に選ばなかったというわけではなく、むしろそれぞれのプロセスにおけるパフォーマンスでは他のツールのほうが優れている面があって、より複雑なことをしたい、より速度を上げて効率的に実施したいという場合には、ツールの組み合わて事業構造分析を実施したほうがよいケースも多いです。弊社の場合、データ量が非常に莫大で、複雑なデータ処理が必要なケースが多いため、ツール組み合わせで事業構造分析をしていることが多いことはお伝えしておきます。逆に言いますと、Power BIは初めて事業構造分析に取り掛かるという場合に最適と言えるかもしれません。利用のハードルが低く、それだけで全プロセスをカバーできるという特徴がありますので。
本日は、事業構造分析に利用できるツールを紹介した上で、今回の連載ではPower BIを使っての事業構造分析を紹介していく理由について説明しました。次回は、ではそのPower BIの各機能を、事業構造分析のステップに即してどう使っていくかを説明します。