良いコンテンツを、きちんと調理する
本日は、スターウォーズ英和辞典〈ジェダイ入門者編〉 をご紹介します。
「読み物」として楽しむもの
帯の最下段に「基礎学習に最適!中学レベルの英単語約1000語収録」と書いてある通り、「基本のキ」レベルの単語しか掲載されていません。ですので、英和辞書としての実用性は極めて低いです。
正直いうと、Amazonで予約したタイミングでは、もうちょっと「ガチの英語」が学べるのかなと思っていたので、これには拍子抜けしました。
日本語の副題「ジェダイ入門者編」という言葉は、英語では「FOR PADAWAN LEARNERS」と書いてあります。これが「英語の入門者」という意味だということなのでしょうが、購入時にはレベル感が良くわかりませんでした。ちなみに、PADAWAN LEARNERS(パダワン)というのは、ジェダイ(正確には、ジェダイ・ナイト)になる前の段階を指します。映画エピソードI~Ⅲでは、幼い子供が大半ですので、「そのくらい初歩の初歩」ということなのでしょうね。きっと。
しかしながら、英語の辞書としてではなく、読み物として考えると、スターウォーズファンには十分満足が行く仕上がりだと思います。
例えば「join」の項
join (動) ・・・に加わる、参加する
join the rebellion 反乱に参加する
という感じで、世界観をイメージした例文が書かれ、さらに
【FORCE PHRASE】
Join me, and together we can rule the galaxy as father and son.
私の仲間になれ。そして父とむすこで銀河を支配しよう。
自分を倒しに乗り込んできたルーク・スカイウォーカーに大して、「真実」を告白し、ともに銀河系を支配しよう、と逆提案するダース・ベイダー。高低、帝国へのちゅせいよりも強い、実の息子への本気の「愛」が伝わってくる
といった、映画の中の実際のセリフおよび、そのシーンや背景を紹介してくれます。
あるいは、「tie」の項目をみてみると
Ask C-3PO ということで、C-3POが、TIE fightersの種類を解説してくれます。こんなに種類があったんですね。知りませんでした。
ですので「わからない単語をひく」というような使い方には適しませんが、「読み物」としては十分楽しめるしろものだと言えるでしょう。
コンテンツ再編集の好例
以前、絵本「おやすみなさいダース・ヴェイダー」を酷評しましたが、その際に述べた「コンテンツの浪費は悪」という意味では、本作は、正しく再編集していると思います。
また、ターゲットが幅広いことも、商業的に成功しそうに見えます。(もし、子供向けを狙ったのだとすると、ちょっとズレてるなと思いますが、大人にきちんと刺さる作りになっているように思います。)
コンテンツそのものは既存のものですが、それを、どういう切り口でまとめるか、が、どれほど大切なのかを痛感しますね。
尚、本書を出版している学研は「END GAME - THE CALLING」というゲームとリンクした書籍を出版するなど、「出版界」に積極的に新風を吹き込んでいるように思います。今後、どういう作品を出してくるのか注目したいところですね。(※ END GAMEは、種族の生き残りをかけた若者たちが殺しあうお話で、普通に「小説」として読むこともできます。しかし、本の中に多くの暗号が仕込まれていて、それを、インターネット上で解明していく、というイベントに参加することも可能なのです。おもしろいでしょ? 興味のある人はGigazineの記事 http://gigazine.net/news/20141008-endgame-google-ar/ をどうぞ。)
そんな学研が作り上げた本作は、スターウォーズを「そこそこ知ってる」くらいの人が、非常に楽しめる良作です。ゆっくりパラパラとめくってみると楽しいと思いますよ。(ちなみに、一点だけ不満を言うと、日本オリジナル!と謳われている挿絵は、ちょっと僕のイメージと違いました。なんだか残念です。皆さんはどう思われますかね?)