DWH(データウェアハウス)を動的にしてしまえという考えかた
前回の事例の際に少し触れましたが、経営管理系の分析は、大変な割には、
動的な分析と書くと、一般的なBIツールはドリルダウンしたり、スライシングしたり、ダイシングしたりできますよね、と言う話になります。確かに一般的なBIツールはある程度動的に分析していくことができるのですが、すでに分析したい軸がある程度出ていた中でのドリルダウン、スライシング、ダイシングになります。でも、現実的にはそれを超えた分析をしたくなることが多々あります。
BIツールなどを導入する際のお約束事としては、BIツール構築前に、どのような指標(KPI: key performance indicator)を見るべきかを明確にして、そのKPIを見るための範囲内ではいかようにでも切り直せるという思想のもとに作っていくことが多いと思います。古くからある事業で、もうすでに何を分析すべきか、どのような指標をどのようなタイミングで見ていくべきかが明確な場合はこのように事前に全てを定義して分析していくことも可能だと思います。一方で、昨今は事業環境の変化も激しく、また今までと同じ視点だけで見ていても見えてこない世界があります。すると、本来見るべき事業構造をきちんと見切れていないケースなども出てきます。
余程の天才なら、最初に何を見るべきかを全て見きれるのかもしれませんが、少なくても私は凡人ですので、最初から全てを見切ることが出来ません。そのため、分析が進んで行き、俯瞰的な地図と詳細な地図の精度が上がれば上がるほど(鳥の目と虫の目)、更に気付きが湧いてきて、更なる別の指標で分析を行いたくなります。仮に気づきが進んだ時に、新たな分析をするためにBIツール(場合によってはDWH)を組み直すことが必要になり、数ヶ月という歳月や数千万と言う費用がかかるのでは試行錯誤も出来ませんし、新たな分析を行うことも気軽に手軽にできなくなります。
弊社はチームCMOやチームCxOと言う名前のサービスで、データ分析/インテリジェンスをベースとして戦略コンサルティングなどの提言を行うサービスを提供しています。クライアント企業に対する弊社の理解が進み、クライアント企業の戦い方がわかればわかるほど、更に別の切り口で分析を行ったり、出てきた指標をモニタリングしたりしたくなることが増えていきます。再度書きますが、天才ではないので、最初から分析すべき全ての切り口を見切ることはできないのです。クライアント企業との数回の打ち合わせを行い、また最初の数週間の分析サービス提供していく中で、更なる分析の切り口が見えて来ます。そのために、もっと動的な分析を行いたいと言うニーズが湧いてくるのですが、それに対応できる仕組みを作っていきました。(と言うより、私が「あれも見たい、これも見たい、しかも今すぐに」と常日頃から我儘を言うので、それに対応できるようにしないとデータエンジニアもデータサイエンティストもテクノロジストも死んでしまうと感じたからなのかもしれません。笑)
経営者の「粗くても良いから今すぐに地図が見たい」と言うニーズに応えたかった
結果として弊社では私が理想としている以下の図のようなサービスを行える仕組みが整いつつあります。
私がやりたいこととしては、クライアントの戦略を立案する際になるべく精緻な「事業構造の地図」を作成し、クライアントの経営層が望む目的地に到達するための戦略オプションをいち早く作ることです。クライアントの経営者もそうですし、私自身も、事業構造を分析するために、1年半もの歳月と数億円という投資をかけて分析環境を構築することは非常にナンセンスと考えております。だったら、ローデータを弊社に預けて頂けさえすれば、非常に短期間のうちに、どのように分析するかを弊社で考えて、まずは粗いながらも事業構造の地図をお持ちして、いきなり戦略の議論をお話しましょう、と言う流れにすることは必然でした。
また、データ/インフォメーション/インテリジェンスをもとに戦略を作り、実行策も考えれば、結果として、どのような指標(KPI)を、どのような頻度でモニタリングすべきかも見えてきます。Planするためのデータ/インフォメーション/インテリジェンス。そして、Doしながら、Check-Actを高速で回すためのデータ/インフォメーション/インテリジェンス。実際に実務を行いながら必要にかられて作っていった構想がダイナミックDWHになります。
ダイナミックDWH
クライアントの経営者と戦略を議論したり、現在の状況を正しいインテリジェンスとして伝えようとすると、分析したい軸と言うのは常に動的に変化していきます。データアーティスト視点やストラテジスト視点で分析していく中で、既存の固定的なDWHで分析していくには限界があり、言い方は悪いですが場当たり的にでも分析できる仕組みを作って行った結果がダイナミックDWHになります。
いつでも新たなローデータを入れられる、いつでも新たな2次続性データを追加して、付与できる、いつでも分析に必要となる中間テーブルを作り直せる、結果として、いつでも見たい軸で分析し直せる、と言うものです。これらは一昔前のDWHやBIの考え方からしたらご法度に近い、非常に無駄も多い手段になると思います。また、マンパワーもかかります。ですが、テクノロジーの進歩とハードウェアの圧倒的な価格破壊により、そのような手段をとっても投資対効果が得られるようになりました。今まで色々な軸で分析を行っていない、事業構造分析をやりきれていない企業でしたら、少なくても1年〜2年程度の試行錯誤の期間が合っても良いと思います。その間は手間もかかりますが、見るべき軸が定まっていないのに、自動で分析できる仕組みを作っても意味がありません。その後に見るべき指標が固まってきてから、通常の静的で、セミオートマチックな分析システムを構築していけば効率化が進みます。
弊社は分析軸が定まっている企業に対してサービスを行っていくことはあまりなく、新たな切り口を模索するところからご支援するために常にこのダイナミックDWHが必要になっています。
今回は少し脱線してダイナミックDWHの考え方に関して説明をしてきました。次回は本の内容に戻り、ビッグデータを競争力強化に使う方法その②である、「大きなPDSと小さなPD(CA)∞サイクルを回す」に触れていきます。
次回に続く。