絵本は絵本でも「発想えほん」なのである。
本日は、前作「りんごかもしれない」が話題となった、ヨシタケシンスケ氏の絵本「ぼくのニセモノをつくるには」をご紹介します。
あなたは「ぼく」を説明できますか?
実は最近、チーム作りについて密かに思い悩むことが多かったりしまして、いろいろ考えております。ちなみに、「密かに」なんで誰も知りません。僕もさっき知りました。はい。
で、そのチーム作りのベースにあるのってなんだろうなーって思うと、結局のところ「チームメンバー個々人が、自分をちゃんと知ること」なんじゃなかろうかってなことを思うわけです。(その結果、買ったばかりのiPhone6でドラクエ8をやっても、脳の仕組みを書いた本「海馬」を読んでも、哲学書「幸福論」を読んでも、目黒のさんま祭りに行っても、結論が「自分と向き合え」「自分を見つめ直せ」になってしまっているのかもしれません・・・。単純だなぁ、僕ってば。)
そんな「自分と向き合え論」がマイブームな僕が、昨日、TSUTAYA TOKYO ROPPONGIで偶然みつけたこの絵本は、「是非、自分と向き合ってほしい人にお勧めすべき本」として、なかなかよろしいのではないかと思った次第なのです。
というのも、自分と向き合え系の本は、一歩間違えば自己啓発本になってしまって、それはそれで間違った方向に導いてしまいかねないなぁ・・・と、推薦するのを躊躇ってしまいます。かといって、ビジネス寄りの本を薦めると、僕の伝えたかった「己と向き合え」という部分ではなく”事例”や”テクニック論”ばかりに目を向けてしまいがちで、結局自分と向き合ってなんてくれないんですよね。マンガとかもそうです。面白い、って方に行ってしまうので、期待した効果とは違うんですよね・・・。(ま、そもそも、向き合ってほしい人というのが、短視眼的発想だから余計にそうだってことなのでしょうけれど。)
そんな中で、本書は、「絵本という形式で、子供にもわかる」「”自分”を説明可能とするための問いが並んでいる」という、直球ど真ん中ストレートで単純明快、という、僕のマイブームにピッタリ合致する最良の一冊なわけです。
「ぼく」を誰かに説明するために
本書は、パーマンにでてくるコピーロボットを四角くして等身大にした感じの”おてつだいロボ”に、「ぼく」の代わりをさせようと思いついたところから話が始まります。ただ、見た目はコピーロボットっぽいこの”おてつだいロボ”=「ロボ」は、鼻を押したら完全コピーになってくれるような便利な機能はついていません。(ちなみに、パーマンのコピーロボットを知らない方はコチラ(wikipedia)をどうぞ)
そこで「ぼく」は、「ロボ」に、「僕は〇〇」ということで、ひとつずつ説明していくわけです。
最初は、当たり前のところから始まります。
- 名前、家族構成
- 外見の特徴
- 好き嫌い
- 得意不得意
しかし、徐々に、深い所まで踏み込んでいきます。
- 行動特性
- 機能(他社に与えられる便益)
- 今後の成長性・可能性
そして、本質的な「自己分析」に入ります。
- 他者からの評価
- 他者との関係性
- 自分が ONLY ONE な存在であること
ここまでを”真剣に”自分で考えられれば、まずは「自分と向き合うこと」を完全に理解した、と言って良いと思います。
他人に説明できないことは、自分も理解できていない
他人に説明する、ということは、非常に難易度が高いことです。特に、抽象的な概念を他人に伝えるためには「言語化」しないといけません。
もちろん、さらに効果的に伝えるためには、図式化なども必要になりますが、まずは「言語化」ができていないと話になりません。この辺りを勘違いしている人は、結構危険です。言葉にできていないもの=曖昧な理解 なので、それをそのまま図式化すると、バッチリ論理破綻してる図表ができあがります。ご注意ください。いや、ほんとに。
閑話休題。そういう意味で「誰かに説明する」という試みは、自分の理解のために非常に重要です。僕が「思考の型シリーズ」として”考え方”を言語化しているのも「誰かに伝えるという取組み」の一環なわけですね。しかし、実は、それによって自分の思考様式が言語化されていき、それらが自分自身のなかに体系として蓄積されていくことが実務上とても役立っているのです。(コンサルタントにとって、如何に効率的に考えられるか、が品質向上+労働時間短縮を両立させる鍵なのです。)
ページ数にして、たった31ページ。絵本ですから、字も少ないです。しかし、さらっと読み飛ばすのではなく、きちんと実践してみてください。「しってる」と「できる」は別物です。そして、絶対に「嘘をつく」のはやめましょう。別に、誰かに発表するわけでもなければ、その結果で面接の合否が決まるわけでもありません。まずは、自分自身で自分自身を正しく理解してしまいましょう。飾り立てるのは後から何とでもなります。あなたのUVP(Understandable Value Propositon=顧客の肚に落ちる提供価値)を見つけ出すところから始めるべきなのです。
上記に従って本書で”自分と向き合うコツ”を押さえた方は、以前ご紹介したコチラの記事(ギックスの本棚/ゼロ秒思考)をご参照いただいて、今度は「思考を深める」ところに注力すると、かならず「自分自身をより深く理解できる」ようになると思います。ご健闘を!