つまらないことまで気にしてしまうのがコンサルタントの悪い癖
今回はニュースななめ斬りシリーズながら、「番外編」として私が街中で見たふとした疑問とそこから繰り広げられる仮説(妄想)を取り上げてみようと思います。息子とデパートにお買い物に来て、玩具売り場でふと見た商品に衝撃を覚え、しばし子供を完全に放置し数分感の妄想に入ってしまった事件がありました。
まずはこの写真を見て下さい。
都内にあるおもちゃ屋さんの幼児用の玩具です。JALとANAの飛行機があり、どちらの機体も全く一緒の形に見えます。違うのはロゴと尾翼の色の部分だけ。でも貼ってある値段を見ると、200円の価格差があります。なぜ200円の価格差があるのでしょうか?
店員さんに聞いてみましたが、価格差に対して明確な理由がありません。あまりくどく聞くと、値切ろうとしている怪しいお父さんではないかと誤解を受けるので、そこはじっと我慢です。少なくても店員さんはそんな事は気にしたことも無かったようです。
なぜ違うのかの仮説を立ててみる
では、なぜ両者に価格差があるのか、全くの推論になりますが仮説を立ててみました。
- 原価が高い説
JALの機体は尾翼におなじみのロゴマークのシールが貼ってあるだけですが、ANAの機体は尾翼から胴体にかけてブルーのペイントらしきものがあるので、その分だけ原価が高いと言う仮説です。工業生産品の原価率はだいたい3割程度と言われていますので、このペインティングだけで60円もの原価が発生しているのでしょうか?そうだとしたら、価格差200円は妥当なラインかもしれません。とは言え、ほぼ同じような商品に対して200円=12.5%も高い価格付けをするのもでしょうか?
- ブランドによる強気の価格戦略説
3ヶ月程前の調査になりますが、日経BPコンサルティングのブランド価値評価調査「」と言うものが発表されていました。こちらによると、旅行業界関連のBtoBで、ANAが12位(前回14位)、JALが49位(前回130位)と言うランキングになっていました。ブランド力と言う観点では、現時点でANAの方が圧倒的に高い数値をたたき出しています。このブランド力をもとに、玩具メーカーが強気の価格戦略を仕掛けていると言う考えもあります。ANAの方が人気が高いので200円くらい高くても皆買ってくれるだろう、と。
また、そのブランド力の差の派生も考えて見ると、、、もし仮に玩具メーカーが各航空界社にロゴ/ブランド利用料を支払っていたとしましょう。その場合に、ブランド力が高いANAが強気なブランド利用料を設定しているとの考えもあります。
ここで話を少しずらしますが、実は多くの方は主に使う「メインのエアライン」と言うものを決めています。日本の場合ですとJAL派とANA派です。とは言え、どちらも併用するハイブリットの無所属の方、飛行機に搭乗しない方々もいるのですが、マイレージカードの影響もあり、多くの方は飛行機の宗派を決めています。ではJAL派、ANA派、(無宗派と乗らない人も含めて)それぞれの派閥の方は子供にどちらの飛行機のおもちゃを買うでしょうか?もしかすると、200円の価格差を考えると、JAL派だけでなく、無所属や使わない方々もJALを買うかもしれません。ANAは関係なく、青好きな方でも、色違いだけで全く同じ製品で200円、12.5%の価格差は許容しにくいものかもしれません。大半がJALに流れる可能性があります。実は私はANA派ですので、なくなく200円を受け入れる事になるのですが、まあおもちゃはJALでもいいかなと思う可能性もあります。
背後に狙っているマーケッターが存在したら感動もの
実際に、なぜ200円に価格差が存在しているのかは実はどうでも良いのですが、(その答えが知りたかった方はごめんなさい。是非直接メーカーに問い合わせて結果を私に教えてください)これによる影響を少し考えてみました。航空業界などは典型例ですが、2〜3社で市場を独占する業界に関して数年前にある調査したことがあります。例えば、コーラ系飲料ならコカコーラとペプシコーラとか。航空業界もANAとJALになります。幼少期に触れるブランド価値の重要性を把握したものなのですが、自分が初めてその商品・サービスを使ったと記憶している商品・サービスは、その後に当該商品・サービスをメインで使う○○派になる傾向が高かったのです。言われてみれば当たり前なのですが、例えば初めて乗った飛行機がJALであると答えた人の多くは、今のメイン航空会社はJALであると答える人が多いのです。(残念ながら実数はここでは紹介することはできませんが。。。)
私はANAをメインで使っており、結果的に私の息子も飛行機はいつもANAを乗る事になります。結果的に、うちの自宅にある飛行機グッズは、ANAに乗った際に頂いたものや空港で息子にせがまれて購入したものも含めて、ANAグッズが大量にあります。そのため、うちの息子は2歳の時から、青いANAのゴロを見ただけで、「飛行機だ!」と反応していました。一方で、JALのロゴやルフトハンザ、シンガポールエアラインのロゴだけを見ても、それが飛行機なのかどうかは理解できませんし、反応もしません。おそらくうちの息子は何事も無くこのまま成長して行けば、ANA派の人間になると想定されます。ですが、私が息子をあまり飛行機に乗せる機会が無く、また本当はANAの方が好きだったがおもちゃが200円安いと言う理由でJALのおもちゃを買い、結果息子がそのおもちゃで遊び続けて鶴の赤い丸いマークは飛行機なんだ、という認識が芽生えて飛行機=赤い鶴のマーク=JALとなったら、もしかするとJAL派に育つかもしれません。
エアライン各社が玩具メーカーからロゴやブランド使用料を徴収しているのかは分かりませんが、上記のような事を考えると、玩具メーカーに対してブランド衆知費用を支払ってでも自社のロゴ/ブランドを広めて行った方が得かもしれません。稲盛改革後のJAL社は非常に業績も好調ですし、最近も機内Wifiを取り入れるなどANA社に先んじていち早く行動に移す姿も見えてきています。もしかして彼らが幼少期からのブランド認知戦略において200円を玩具メーカーに補填していたらそれはそれで凄い事だな、と勝手に一人妄想をしていました、と言う小話でした。