行動観察をイノベーションへつなげる5つのステップ(Harvard Business Reviewより)/ニュースななめ斬り by ギックス

AUTHOR :  網野 知博

ビッグデータ時代だからこそ「行動観察」

6月下旬に日経情報ストラテジーの主催で行われた「成果出す会社に学ぶデータサイエンス講座」にて大阪ガス行動観察研究所の松波晴人氏が講演者として参加されておりました。松波さんは「行動観察」の第一人者になります。これまでに「ビジネスマンのための「行動観察」入門」「「行動観察」の基本」と言う本が出版されています。講演後の控え室で松波さんとお話をさせて頂く時間があったのですが、松波さんを中心として1時間以上にわたり密度の濃い議論をさせて頂きました。

その時に何度となく松波さんの口から出ていたキーワードが「リフレーム」「マインドセットを変える」「アブダクション」になります。そんな松波さんがハーバードビジネスレビューの8月号に寄稿記事を書いておられるので、「行動観察」と言うものを簡単に紹介してみようと思います。

なぜいま行動観察なのか??

変化の激しい近年のビジネス環境において、求められるのは「最適化」ではなく、「新たな土俵を生み出す」ことであり、新たな土俵を生むには「新しい仮説」が必要であると述べております。そして、キーワードは「リフレーム」。

リフレームとは「これまでの物事の捉え方を変えて、前向きに新たな仮説を生み、新たな価値を生むこと」だそうです。

しかし世間の誰もが新たな仮説が必要なことを理解していながら、なかなか行動に移せません。つまり、「最適化された現状のフレーム」から抜け出せない状態にあるのです。

心理学の「ジョハリの窓」をビジネス版に置き換えた「ビジネス版ジョハリの窓」と言うフレームワークで見れば、顧客も自社もまだ気づいていない「未知の窓」を行動観察により発見して行こうと言うことになります。

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では、行動観察とはなんでしょうか。

「行動観察」とは何か?

行動観察とは、「観察者がさまざまなフィールドに入って対象者の行動や背景にある情報をつぶさに観察したうえで分析し、本質的なインサイトを導出したうえでソリューションを提案し、実行する方法論」とのことです。そして、行動観察は大人数に行う必要はなく、数人でもそれぞれの人を深く理解する事に主眼をおいているようです。

松波さんの紹介によると、行動観察における具体的なプロセスは次の4つになります。

①発見する:フィールドに足を運んで行動を観察し、様々な事実を発見して収集する。

②再構築する:得られた事実を解釈し、インサイト(洞察)を導きだす。このとき、それまでの解釈のフレームをいったん横において、新たなフレームを創る。

③着想を得る:インサイトを基にソリューションを導くためのアイデアを出す。

④創造する:経験をデザインすることによってソリューションを提供する。

アブダクション、いわばシャーロックホームズのような推論方法

控え室における議論の時に松波さんに疑問に思った点を質問させて頂きました。「行動観察と言うアプローチは誰でも実践できると思うが、観察から気づきを得る際には人によって差がでてしまうのではないか?」

行動観察はアブダクション(仮説的推論)を基礎とする方法論であり、同じ事象をみても、いわばシャーロック・ホームズのように気づける人には気づけるけど、ワトソン博士のような人は同じ状況を観察しても気づけないと言うのが答えでした。

では、アブダクションは後天的に習得可能なスキルなのでしょうか? 先天性なセンスによるものでは万民が行える手法にならないからです。

答えは、現在行動観察を学び実践する全ての人に対してアブダクションの質のばらつきを減らすトレーニングを試行錯誤しているとの事でした。松波さんのような一部の高度な教育を受けた天才だけが使える手法ではなく、我々のような普通の人に使えてこそ広くビジネスの場で普及して行くと思います。行動観察を実践で使って行くためのの5つのステップに関して詳しくはハーバードビジネスレビューをご覧頂きたいと思いますが、ここではステップの図だけ紹介しておきます。

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議論の際に松波さんが行動観察のトレーニングとして最も重要だと語っていらしたのが、「マインドセット」でした。そもそも「マインドセット」を変えて行かないとよい行動観察官にはなれないとのことで、行動観察のスキルだけに留まらず、マインドセットやリーダーシップも含めたトレーニングを現在検討中との事でしたので、非常に楽しみにしております。

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