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ギックスCEO/網野知博と取締役ビッグデータ事業担当/花谷慎太郎が【日経情報ストラテジーセミナー】に登壇しました
日経情報ストラテジー主催のセミナーに株式会社ビューカードの会田雅彦常務取締役と共に、弊社網野と花谷が登壇しました。
開催日時:2014年6月24日(火)13:00~14:25
「チームCMO」と1年で結果を出したビューカード 440万会員のビッグデータ分析で成果を出す
講演は3部構成となっており、第3部のパネルディスカッションに関して発言録を掲載致します。
- 第1部:「中期経営構想2020」に向けた取り組み(講演者:会田雅彦常務取締役)
- 第2部:ビューカードでのマーケティング改革(講演者:網野)
- 第3部:パネルディスカッション「マーケ会議」でのその時 意思決定者とデータサイエンティストに聞く(モデレータ:網野、パネラー:会田雅彦常務取締役、花谷)
パネルディスカッション|”「マーケ会議」でのその時” 意思決定者とデータサイエンティストに聞く
網野:
では、第3部ということでパネルディスカッションに移らせて頂きます。
私網野がモデレータを務めさせて頂き、パネラーとして株式会社ビューカードの会田雅彦常務取締役、弊社取締役 ビッグデータ事業担当の花谷慎太郎に参加して頂きます。
よろしくお願い致します。
ビックデータ活用やアナリティクスを行っていると聞かれる質問は主に3つです。「どんな環境で分析しているの?」「分析チームはどのようにしているの?」「分析結果を活用するやり方や体制はどうしているの?」と言うことです。本日はそこにスポットをあてて、意思決定・実行側の目線と分析・提言側の目線でお話頂こうと思います。
まずひとつ目の「ビューカードデータの分析環境は?」についてですが、ビューカードさんを支援していく上での弊社の分析環境を弊社の花谷より紹介してもらいます。
花谷:
ビューカードさんで分析作業を進めていく上で、最も意識していたことは手軽でクイックに動くシステム環境を構築したいということでした。
旧約聖書に綴られているダビデと巨人ゴリアテの戦いを例にすると、多きな槍を持つゴリアテに対してダビデは投石で挑み勝利します。この物語は、小さな者が強大な者を打ち負かす喩えとしてよく使われています。ダビデが用いた投石のように、クイックに動く安価で簡易なテクノロジーを活用することを意識しています。
網野も公演中に申し上げた通り、大事なことは試行錯誤していくこと、すなわちPDCAサイクルをガンガン回していくなんですが、これは手戻りが非常に多く発生することも意味しています。その際にはクイックに分析を回せることが非常に重要になります。PDCAサイクルを多く回すことがBig Outcomeを生み出すことにつながると我々は考えておりまして、それを実現する為の分析環境を探していました。我々の求めることを実現できるツールが最近では数多く存在します。下記のスライドの赤枠で囲ってあるのがビューカードさんで利用しているツールです。
データの集計や分析にはAktblitzと言うベンチャー企業のツールを使用しています。このツールは、「エクセルのおばけ」とイメージして頂ければと思います。数億件のデータでもエクセル感覚で集計することが可能です。
先ほど網野が講演中に説明した「2次属性データ」を付けて、集計を繰り返すには最適のツールです。Aktblitzで集計したデータをTableauというツールでビジュアライズしていくという運用をしています。このようにツールを適材適所で組み合わせることで、色々なことができるようになりました。ビューカードさんには我々と同じ環境を構築して頂き、我々が実施した分析の定常的な部分を引き継ぐということもしています。
弊社では大量データの分析にはmicrosoftのPower BIやAmazonAWSのRedshift等も定常的に利用しています。他にもSOFIT super realizmやDOMOといったツールもあります。ビューカードさんでクラウド利用が可能になってくれば、今後はこれらのツールも候補にあがります。
網野:
ビッグデータ時代の潮流として安価で簡易なツールがどんどんと出てきていることは非常にうれしいですね。AWSは従量課金なので導入は非常に安価に済みます。たまに大量データを回し続けると、もの凄い金額を課金されるので注意は必要ですが。。。(笑)
我々がビューカードさんを支援する際に利用していたのが、AktblitzとTableauになります。会田さんが「GiXoと同じもの(ツール)を導入して、同じように分析できるようになれ!!」という一言でビューカード社内にも導入が決まりました。一般的にはツール選定にはメリット・デメリットを示す○×表などを作ったり、複数ツールを選定したりしますが、即断即決でしたね。
会田常務:
GiXoの知見を自社にも根付かせることを狙っていたので、GiXoが使っているのはそのまま利用すると決めていました。まあ、私は決めるだけなので楽でしたが、担当者は大変でしたでしょうね。3カ月程時間をかけてGiXoの手法を勉強してもらいました。ツール選定に何も考えてないと言われればそうかもしれませんが、これ位のことは考えましたよ。(笑)
網野:
なるほど(笑)
弊社は日経コンピュータやIT proに取り上げて頂いてからツールベンダーさんからの持ち込みも増えてきました。そして我々がR&D的な感覚でツールを使わせて頂き、良さそうなものをどんどんユーザーさんに紹介できるようになってきているので、そういう点でも日経さんに感謝しています。(笑)
2年程前から「CMOのIT予算がCIOのIT予算を超える」と言われています。私はこの意見には懐疑的でして、なぜかというと今は安価で簡易に使えるツールが増えてきている中で、CMOが「DBやDWHを新たに構築し、マスターデータを統合し、巨大な分析環境を5億円掛けて作ります、稼働は1年後です」という提案にGOを出すとは思えないんですよね。
精緻なデータでなくてもいいから、3日後にデータが見たいというのが、普通のCMOだろうなと。安価で簡易に使えるツール活用し、分析を進めながら業務やシステムを改善しいき、最終的に精緻なデータを取得する為には大掛かりなシステム構築が必要だとなった時に、システム部に依頼を出すということになるのではないかと思います。
CMOは今まで以上にテクノロジーを活用するようになるが、非常にクイックに安価で簡易なツールをうまく活用していくので、最後に大きな予算を使うのはCIOなんじゃないかな、というのが私の予測です。
続いて、2つ目のテーマ「ビューカードが行っている分析体制の構築方法は?」という話に移ります。
弊社がどうやっているのかより、ビューカードさんがどうしていこうとしているのかを会田さんに伺いたいと思います。
会田常務:
今までは、事業構造とメカニズムと言われても理解しきれなかった部分もあったので、方針としては自社にない資源は外から買うという方針でした。モデルとしてはコンサルティングを依頼して、自分達の知見になった段階で自分達でやる。
鉄道会社を例にすると、戦後の日本はイギリスが新橋に線路をひいてくれるまで、日本は鉄道を作れませんでした。イギリスから鉄道のことを学び、国有化し、自分達鉄道事業を行いました。そして日本が世界初の新幹線を作りました。0から1を生み出すのは大変なので、無いものは買う、買ったら真似る、真似ていく上で自分達の知見にできるかは我々次第、というように考えています。
今回の分析体制だけではなく、他の領域に関しても全般的にそのように考えています。
網野:
論理的に考えても取れる手段としては、「自社の人材を育てる」、「経験者を外部から採用する、つまり中途で人を取る」、「コンサルタントなど外部の人間を契約する」という3パターンになるかと思います。外から見ているとビューカードはこの3つをバランスよく使い分けていると思います。
我々を雇いながら、自社の社員を分析担当にアサインし、GiXoが家庭教師をしながら育てていく。そして、自前の社員も分析が多少進められるようになり、土壌が整ってきた段階で、中途採用を使いながら外部の人を採用して人員を手厚くしていく。
中途採用は今後も積極的に継続していく予定ですか?
会田常務:
この会場で興味を持って頂きお越し頂ける方がいれば、大歓迎です(笑)
網野:
では、最後に「成果(Outcome)につなげるための分析結果を活用する仕組みは? マーケティング会議の運営の仕方に関して」についてお伺いします。
隔週でマーケティング会議を実施しています。
もともとこのマーケティング会議は、「社長も担当者もみんなでデータを共有しながら、みんなで目標に向かって意思決定と実行のPDCAサイクルを一丸となって進めていこうよ。」という想いから、私が提案したのですが、300人強の会社の中で多い時には40人を超える参加者がいて、その場で意思決定を下し、実行担当も決まり、その期限なども決まるというある意味理想的な会議体を行っております。自分で提言しておきながら、でも実現できていることが自分でも信じられないくらいなのですが。(笑)
この取組みに対するメリット、デメリット、苦労等をお聞かせ下さい。
会田常務:
今のところはメリットしかないと思っています。運営する社員の苦労も大人数なので椅子の配置とか印刷物が多いとか、そういう苦労かな。(笑)
オープンな場で議論するか、密室で議論するかといういう話がありますが、私の経験では「正しい結論はオープンな場でしか生まれない」と思っています。そういった意味では、包み隠さずデータを見ながらオープンな場で議論する方が良い結果が生まれると思います。
デメリットがあるとすれば、その場で判断を仰がれる社長は大変だと思いますよ。(笑) 今年で68歳で多面的な角度のデータを見せられて、最後には意思決定を求められるわけですから。結論は「やってみればいいじゃないか」となりますが、これもデータという事実があるから判断できることだと思っています。この一言から生まれるパワーとかその後のアクションの速さはオープンな場だからこそのものだと思います。
それ以外のデメリットはないですね。外部の広告代理店さんにも隠すデータはありませんし、それにより良い提案を頂けるのであれば大歓迎です。別に隠すべきことも何もありません。メーカーの技術開発といった類のものではないので、我々の取り組み自体が外に漏れて困ることはないですね。そう考えると、組織としてはメリットだけですね。
網野:
我々もマーケティング会議を運営する側として、隔週で意思決定のタイミングが訪れることで助かっている面もあります。マーケティング施策は割りとすぐやらなくてはいけないことが山積みだった際に、マーケティング会議に持ち込み、その場で意思決定され、担当者とスケジュールが決まっていく。当然その後は稟議を通してと言うプロセスが発生しますが、それでも実行までに時間がかかることがないというのは非常にやりやすいなと思っています。
意思決定側にお話を伺いましたが、分析・提言側のGiXoサイドからマーケティング会議に関して話をしてもらおうと思います。データサイエンティストと言う位置付けでマーケティング会議を運営する上でどのようなことに気を付けていますか?
花谷:
意思決定がその場で行われるので、分析手法よりビジネスインパクトを常に考えています。網野の講演でもありましたが、ビジネスインパクト、事業の競争力強化につながる分析ですね。Order of Magunitudeを意識しています。それに派生して、分析の精度等は意思決定に耐え得るものであればいいと考えています。分析は細かくやろうと思えばいくらでも細かい数字を追うことができます。事業に与えるインパクト、分析の精度、それにかかる時間・工数、この3つのバランスを意識しながら、意思決定に必要なラインを常に見極めるようにしています。すごい分析や大変な分析を自慢する場ではなく、意思決定を行う会議体ですからね。
網野:
我々は分析結果だけをマーケティング会議では提出しているのですが、とは言え、花谷も非常に大変だった分析にはちょいちょい「これすごく大変だったんですよね」というようなアピールしてる気がしますが。(笑)
意思決定をする際に、どの単位まで緻密に分析をしなければいけないのかという見極めが必要ですよね。マーケティングと言うのはもともと実行策の段階でざっくりの確率論になるので、その意思決定の分析に対して、小数点のパーセンテージですごく精緻に分析してもあまり意味が無いと考えています。つまり、方向性が見えた段階で意思決定にかけた方がいいのかなとも思います。一方で、携帯キャリアの基地局の故障予測を大量なログデータから機械学習を行い分析するなどは精緻な分析が必要と思われます。我々が行っているのは今はマーケティングなので、その辺りの割りきりは花谷がこだわっているポイントだと感じています。
これは川又さんにも取り上げて頂いたのですが、マーケティング会議での大きな意思決定をひとつご紹介します。
オンライン入会のシステム導入をマーケティング会議で決定しました。その際の意思決定側とサイエンス側でどのような思いがあったのかを伺いたいと思います。
どんな意思決定だったかというと、入会申込みサイトから、実際の申込に至るまでの離脱率がものすごく高かったんですね。ぶっちゃけで言いますと、当時のオンラインサイトはとても使いにくいものでした。使いにくくて数字でもそれがでている。我々としては、「離脱率を提示して、変えましょうよ」と提案しました。しかし、ビューカードさん側には申込みページは基幹システムを同期して作っていたので、回収は6、7年に一度しかできなく、また次の改修期間まで1年程待たないといけないという事情がありました。まず最初は申込みフォームを改善し、見た目を変えました。しかし、画面遷移の複雑さ、多さは変えられないので、どうすべきかという議論になったわけです。結果として、基幹システムと切り離して実行しようという結論になりました。そして、社長と会田常務にその場で「やろう」と判断して頂きました。基幹システムを切り離すというのは、重い決断だと思うのですが、どのように考えて決断したのですか?
会田常務:
数字があり、決めで済む意思決定だったので、経営者は決めるだけですむので大変ではなかったですよ。どう考えて判断したかと言われれば、離脱率を見れば、やるべきだとすぐにわかったとしか言えませんね。(笑)
ただ、オペレーションがきちんと回るのかと言うところで、これは全社一丸となってそのやり方を考えてくれました。新しいやり方ができるのか否かではなく、これをやるためにはどのようなやり方にすべきかと言う発想で考えてくれました。これまでとカード発行期間を変えずにお客様にカードを提供できるのかという点が懸念でしたが、マーケティング会議の場で、担当部署の若手が「やります!」といってくれたことで踏み切ることができました。
網野:
データサイエンティスト側からこの件に関して何かありますか?
花谷:
事情はわかるが、離脱率を見ると申込サイトを刷新すべきだというのは一目瞭然でした。オンライン入会者はビューカードの理解度が高い優良顧客というのもありましたし、今後はオンラインのマーケティング施策を強化するという方針もありましたしね。ここはかなり強い想いを持って提言しました。
網野:
我々も数字は絶対正しいと思ったものの、基幹システムにまで手を加えるという意思決定は相当怖かったのですが、マーケティング会議で決断頂けました。弊社は分析を実施して示唆を出すことや実行策の提案をすることはできます。しかし、意思決定をすることはできません。決めて実行してもらわないと価値がでない役割です。そいう意味では、内部で分析体制を持つ企業さんでも同じで、データサイエンティストや分析チームを抱えても、結局意思決定して実行するまでの仕組みを構築していないと意味がありません。マーケティング会議のような場で数字を出して、同じデータを見ながら意思決定していくというのはいい試みだと思っています。今回ビューカードさんと取り組んでいるようなことが他の企業でも採用して頂ければと思っています。
これでパネルディスカッションを終わらせて頂きます。
本日はありがとうございました。
【成果出す会社に学ぶデータサイエンス講座:記事リスト】
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- ギックス網野・花谷 講演内容(前編)
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