他人が思い通りにならないからといって失望してはいけない
子供もいない僕ですが、子持ちの友人がFacebookで強く推奨していた絵本「クネクネさんのいちにち きょうはマラカスのひ」をご紹介します。
あらすじ
クネクネさんは、マラカスが大好きです。友人のパーマさんとフワフワさんと「マラカスの会」を結成して、ときどきマラカス発表会をやっています。クネクネさんは、その日に向けてめちゃめちゃ練習しますが、難易度の高い振付けのため、なかなかうまくいきません。
そして、当日を迎えます。ホストであるクネクネさんはランチの用意もして、万全のもてなしをします。パーマさんとフワフワさんのマラカス演奏をきいてから、ランチを振る舞います。
ランチ後、ついにクネクネさんの出番がやってきますが、成功しません(お腹いっぱいだったことも一因です)。そして、ランチでお腹いっぱいになって眠くなってしまったパーマさんとフワフワさんは、その失敗の姿をみることもなく爆睡です。クネクネさんは、部屋でしくしく泣きます。
その後、パーマさんとフワフワさんが目をさまし、クネクネさんを慰めます。そして、クネクネさんは、再度ステージに上がります。
クネクネさんは何を間違ったのか
この物語からは、いくつもの学ぶべきポイントがあります。その中で、僕が注目した3つについてご紹介したいと思います。
1.敗因分析の重要性
クネクネさんは、失敗します。あんなに練習したのに。
しかし、彼(彼女かもしれませんが、本稿では便宜上、”彼”とします)には再度演奏する機会が与えられます。ここで重要なのは、同じ過ちを繰り返さない事です。ひょっとすると、当日を乗り切るだけであれば課題を明確化しなくても特に問題は無いかもしれませんが、「ときどき開催する発表会」である以上、次回開催までに課題を特定し、再発防止に努めなければなりません。
そもそも、これまでにも何度か「発表会」をやっていたハズなのに、なぜ、今回こんな失敗をしてしまったのか?が問題です。
なぜ、自分は失敗したのか、と己に問い、その原因究明をすることを怠れば、次もシクシク泣くことになりかねません。痛み・辛さを嘆くのではなく、また、結果オーライを喜ぶのでもなく、真摯に向き合うことが重要です。
経験を核として、想像力を養うことが重要なのです。(関連記事:ギックスの本棚/アイデアは才能では生まれない)
2.優先順位付けの重要性
課題の特定と合わせて行うべきことは、優先順位付けです。
今回は「発表会」ということでした。主題は「マラカスの発表」にあります。しかし、クネクネさんは、自慢の自家製パンと、いちごと、ふかした芋を用意し、デザートにマフィンも用意しておもてなしをしました。この行為自体は、素晴らしいのですが、しかし、優先順位の観点では疑問を感じます。
もちろん、発表会という名の下に、3人で集まって楽しく時間を過ごすことが目的だった、とも言えますが、だったらシクシク泣いてる場合じゃないです。そうすると、やはり「ちゃんと発表したい」「演奏を成功させたい」ということを考えるべきです。その場合には「お客様である二人にはしっかり食べてもらっても、演技を控えた自分は少なめでやめておく」、あるいは「二人も含めて少なめに食べて、自分の演技が終わってから、しっかり3人で食べる」というようなことを考えねばなりません。
また、提供したメニューも、炭水化物過多(=糖質過多)なため、急激な血糖値の上昇およびその後の低血糖によって急激な眠気をもたらすことも考慮すべきでしょう。コーヒーくらいでは、眠気に勝つのは困難です。
目的がブレるのは失敗の素です。
3.”他人”と”自分”の境界線のあり方
そして、クネクネさんの最大の失敗は「他人が、常に自分に興味を持ってくれている」という誤解です。
親は(一部例外を除いて)子供を無条件に可愛がります。家族とはそういうものですよね。しかし、世の中は「自分中心」ではまわりません。「自分」が【主人公】なのは、あくまでも「自分の世界」においてであり、「他人」にとっての「自分」は【脇役】です。
自分にとっての主人公たる自分からみれば、思い通りにならない脇役たちは理解できません。なぜ、思った通りに動いてくれないのか?と不満に思います。しかし、視点を相手側に移すことができれば、世界は変わります。彼ら彼女らにとっての自分は、脇役なのですからね。
それを踏まえて、お互いに、【主人公】と【脇役】を適宜使い分けられる関係性を築くことが対人コミュニケーションの基本です。(と、書きながら、僕自身、いろいろ反省しています・・・)
期待値コントロールが非常に重要
上記の3つのうち、特に大切だと思うのは、3つめの「他人との境界線」だと僕は思います。
そして、そのためには「期待値コントロール(エクスペクテーション・コントロール)」が重要だと思います。
一般的に「期待値コントロールという言葉は、「相手が、自分に対して抱いている”期待”の量をあげさせすぎない」という意味で使われることが多いと思います。しかしながら、人が心を平穏にして生きていく上で大切なのは「自分自身が、他人に対して抱く”期待”の量をあげすぎない」ことです。他人は決して、期待した通りには動いてくれません。
その前提を踏まえ、敢えて「自分が、相手に何を期待しているか」を伝えるのがコミュニケーション円滑化のコツではないかと思います。これにより「自分自身の、相手への期待値」が明確に共有されますので、その後は、相手が主導権を持って(一般的用法での)期待値コントロールをしてくれるハズです。
クネクネさんの場合「今回は発表会がメインだから、ランチは少し遅めにすることで良いか?」という確認や、「練習したからしっかり見てほしい」という要望を出した方がよかったのではないでしょうか。そして、それを受けて、パーマさんやフワフワさんは「お腹が空いたからしっかり食べたい」という希望や、「ちょっと眠くなってしまったので、申し訳ないがお昼寝してからにしないか」という提案を行うべきですよね。
ホームパーティーやお花見などの企画をたくさんしてきた僕ですが、相手に対して明確な「期待」をあらわさず、自己完結してしまっていたことを強く反省し、やっぱり絵本って奥が深いな(あるいは、日本絵本賞 大賞は伊達じゃないな)と思うのです。
ちなみに、こんな小難しいこと考えないで、素直に読めば、ホワンとした素敵な絵本として楽しむこともモチロンできますので、購入をご検討される親御さんは、安心してご購入いただければと存じます。はい。