2023年4月にギックスに新規事業領域を担当するManaging Directorとして参画した浅井圭輔と、ギックス代表取締役CEO網野。外資系コンサルティングファームの戦略部門で同僚だった二人が、キャリアを歩む中で感じてきたコンサルスキルと事業運営スキルの関係性について語りました。
GiXo Professional Network 経由での参画
株式会社ギックス 代表取締役CEO 網野知博(以下、網野/画像 左):
浅井さんとは、20年来のお付き合いですが、同じ会社に所属してお仕事をするのは15年ぶりくらいですよね。当社に参画してくれて本当に嬉しいですし、参画直後からバリバリ価値を出していただいて、とても助かっています。
同社 Managing Director 浅井圭輔(以下、浅井/画像 右):
ありがとうございます。網野さんが会社を作ったという時から注目していたので、お誘いいただいたときは嬉しかったです。
網野:
じゃぁ、もっと早くに声をかけるべきでしたね(笑
浅井:
いやー、僕も割と忙しかったので、なかなかそういうわけには(笑
網野:
何年か前に、クライアントのビルで偶然すれ違いましたよね。
浅井:
そうそう。そうです。まだ、ギックスがIPOする前でした。あの時に少し立ち話をして、「ああ、やっぱりちゃんと頑張ってるんだなぁ。さすがだなぁ。」と思ったんですよね。その後、IPOしたというニュースで「おお、すごい!」と思ってご連絡したんですよ。「おめでとうございます!すごいですね!」って。
そうしたら、その連絡に対して「ありがとう。絶賛人材募集中なんで手伝ってよ」って返事が飛んできましたけど(笑
網野:
あたりまえじゃないですか、虎視眈々と狙ってますよ(笑
浅井:
さすがにすぐその場というのは難しかったんですけど、半年くらいしてから少しずつお手伝いができるよという話になり、GiXo Professional Networkの一員として、ギックスの仕事をお手伝いするようになりました。
網野:
猫の手も借りたい、というか、戦略コンサル上がりのひとは、同じネコ科でも虎とか豹みたいな感じですからね。戦闘力の高い「猛獣の手」を借りられるならいつでもウェルカムですよ。一緒に仕事をしていく中で、ぜひ当社により深くかかわってほしいというお話をして、今年(2023年)の4月に浅井さん参画のプレスリリースを出させていただきました。
事業会社経験とコンサル経験の化学反応
網野:
浅井さんも私も、事業会社経験とコンサルファーム経験を併せ持つキャリアなので、新しい事業を作っていくフェーズでは会話のプロトコルが合うなぁと日々感じています。浅井さんにはギックスの新規事業領域の企画・推進を担当してもらっていますが、他社での同様の領域の経験なども踏まえると、新規事業の難しさとか面白さみたいなところは、どういうあたりだと考えていますか?
浅井:
面白さ、みたいなのは世の中のいろんな人が語ってると思うので(笑)、ちょっと違う角度で。
やっぱり、新規事業って「フタを開けてみないとわからない」というのが怖いですよね。創りたいもの、創りたい世界観を頑張って具現化するんだけど、それを使ってもらえるかどうかわからない。どれだけヒアリングを重ねても、どれだけ詳しくユーザー調査をしても、本当のところはわからない。恐怖心とにらめっこして、我慢できるか?っていうところですよね。我慢力、胆力の世界ですよ。新規事業は。
だから、「どれだけその事業に熱中できるか」が大事だと思って取り組んでいますね。
網野:
それ、結局「面白さ」の話してますよね(笑
浅井:
たしかに、そうかもしれない…(笑
ただ、これを面白いと思って挑み続けることができるのは、コンサル経験が活きてるなと思うんですよ。
網野:
いいですね。その話、私もすごく共感できる気がするので、とても聞きたいです。
浅井:
そんな深いことは言わないんですけど(笑)、新規事業を考えるときって、当たり前ですが「市場、競合、自社」を分析するじゃないですか。セグメント分けして、市場規模出して、既存の競合とか潜在的競合の動向を把握しに行って、自社のケイパビリティを洗い出して、むしろそれによってどんな制約があるかを考えて。こういうのって、コンサル時代に文字通り「死ぬほど」やってた作業なので、体に染みついてますよね。
物事を整理する筋肉が鍛えられているという感じ。
網野:
わかります。私もギックスを経営しながら、そういう感覚を強く感じています。もちろん「経営者」として振る舞うべきタイミングでは、意図的にそうした論理的思考、コンサル脳を手放して、直観に身を委ねて発想を膨らませるときもありますが、体の奥底には基本動作として染み込んでるなと思います。
浅井:
こういう基本動作、基礎能力があるおかげで、近視眼的にならずに済むし、抜け漏れも回避できます。こういうのを「無意識で」できるのは、正直、楽ですね。
網野:
まぁ、当時、我々、めちゃめちゃ大変な思いをして頑張ってたので、スキルが身についてないとか役立ってないとかいう話だと報われませんしね(笑
コンサル経験に加えて、事業会社での経験が新規事業領域の仕事に役立っているという実感はありますか?
浅井:
もちろんあります。どちらか一方ではなくて、両方をミックスしているのが良いんじゃないかなと思いますね。そもそも、コンサルでいろいろな業界・企業の事例を見てきて、そこで膨大なバリエーションの知識が得られます。それを一つ一つの具体例で置いておくのではなくて、エッセンスを抜き出して整理・体系化することで、再利用性を高めていくわけじゃないですか。
そこに、事業会社の経験が合わさってくる。コンサルとして関与するのと、事業会社の中で実務を担当するのとでは、当然ながら受ける「圧」が違います。自分でバッターボックスに立って、ヒットを打たなければいけないし、ヘッドスライディングをしてでも出塁して、勝利をつかみ取らなければいけない。論理的な正しさだけじゃなくて、実際にお客さんに商品やサービスを知ってもらって、使ってもらって、お金を払ってもらうために、必要なら店頭に立ったり、チラシを配ったりしないといけない。何をやったかではなくて、売上がたったか、利益が出たか、の話になりますよね。血を吐く思いで、実務者として売上・利益のリアリティを極限まで追求する。
コンサルのキツさと、事業責任者としてのキツさは、やはり別物です。どちらがキツいかではなくて、どちらもそれぞれキツいなと。
ただ、そういう事業会社でのキツい経験も、コンサルスキルで客観的に捉えて体系化し、再利用可能な知識・ノウハウとして自分の中に蓄積してきました。コンサル脳と事業会社経験が、私の中で良い「化学反応」を起こしてるんじゃないですかね。
新規事業を生み出せる組織・文化ができてきた
網野:
私も、ギックスをつくってからの10年で、いろんな新規事業にトライしてきたんですよ。当然ながら、会社の規模も小さくて投資余力もないので、コツコツと小さく小さくトライアルを回していました。ギックスは、コンサルティングという高収益ビジネスを祖業として持っているので、そこで稼いだ収益を投資に回して新規事業にトライする、というスタイルでした。まだ売上が1億円とかそれくらいのタイミングでしたから、数千万円の投資をするようなリスクは冒せなかったんですよ。一撃で致命傷になってしまいますからね。
浅井:
地道で着実な事業運営ですよね。大きく赤字を掘って、一気に勝負をかける、みたいなことは考えなかったんですか?
網野:
Beyondgeの野上さんにも似たようなことを聞かれましたよ(笑
その時も言ったんですが、「向き不向き」がありますよね。人には。
浅井:
なるほど。いや、でもそれ、とても大切なことだと思いますけどね。自社のケイパビリティ、自分のケイパビリティを見誤ると、あまり良い結果にはつながらないですよ。
網野:
そうなんですよね。まぁ、そんなわけで、いっぱい新規事業にトライして、いっぱい失敗してきたんですよ。小さくトライするから業績影響も軽微だし、そもそも上場前だったということもあって、世の中にはほとんど知られてないんですが、ほんとにたくさん失敗しましたよ。
浅井:
まさに、多産多死ですね。新規事業の王道ですよね。そして、やっとマイグルが生き残った。
網野:
マイグルはデータインフォームドの思想を組み込んだ、良いプロダクトになっています。ここ数年は、売上規模が大きくなってきて、さらに上場もしましたので、投資余力も出てきました。もちろん、一撃で致命傷になるような大博打は考えていませんけれど、しっかりと「戦略的投資」ができる体制が整ってきました。
浅井さんという馬力のあるエンジンを使って、新規事業領域を積極的に狙っていきたいなと考えています。アクセル、床までベタ踏みで(笑
浅井:
正直、GiXo Professional Network という形でギックスに関わり始めるまでは、「データ分析特化型コンサルティング・ファーム」だと思ってました。創業メンバーの顔触れもそうだし、利益を稼ぎやすいモデルですからね。
ただ、関わってみると印象が変わりました。もちろん、データ領域のコンサルティングで大きな価値を出している、というのは想像通りだったんですけれど、その隣に「自社プロダクトで社会変革を実現するぞ」という志があった。
社内はコンサルタントばっかりなんだろうなと思ってたんですが、実際には、ビジネスを企画する人がいて、ソフトウェア・エンジニアがいて、そういう人たちがしっかり活躍している。
事業運営スタイルとして、とても正しいアプローチだと思うんですよ。私も、戦略ファームの経験が合計12年になるので、「継続案件獲得」に頼ったビジネスのむずかしさは強く感じています。戦略案件、コンサルティングプロジェクトで得た収益を原資にして、何か新しい取り組みをやっていこうというのはしっくりきますし、それがプロダクト事業であるというのも納得です。
網野:
メンバーの多様性と、アセットの多様性が、新規事業領域に進むための鍵だなと思っています。
そもそも、プロジェクトから得られた収益だけじゃなくて、得られた知見も「原資」にする、というのがギックスのプロダクトの考え方の根底にあります。
浅井:
データ分析のノウハウ、経験をしっかりと体系化してますよね。コンサルティングの中で得たもので、本当に再利用性の高いアセットを作っているし、既存のアセットを活用する中で機能強化も進めている。
プロジェクト推進に使う社内向けの分析ツールとか、データ処理ツールとか、レポーティングツールも、とてもよくできていて、生産性向上に効いてるのもすごいなと思っています。
そうしたアセットを作る、強化するという考え方が社内全体、すみずみにまで浸透しているなと感じています。そして、その延長線上に「ソリューション」に昇華するというものがある。それを世に出していくのがプロダクト事業。
言うは易しで、これは結局、みんなできないんですよね。ギックスの独自性であり、強みだなと思います。
網野:
我々の出自がコンサルティングであることは、とても大事なことだと思っているんですよ。
特定のプロダクトを掲げて、その周辺領域をカバーしていくという、いわゆる「プロダクト中心主義」のアプローチは取りません。
ギックスは「クライアントが何をすべきか」を構想するところからスタートします。やるべきこと、向かうべき方向が見えてきたら、それを実現するためにギックスのアセットを使うと時短になりますよ。早期に効果を得られますよ。という風なかたちを目指している。「事業中心主義」とか「クライアント中心主義」とかいうイメージですね。
浅井:
おもしろいですね。コンサルティングとプロダクトの垣根が無い感じですよね。
網野:
その通り!!!
あ、大きい声出してごめんなさい。興奮しちゃいました(笑
いや、でも本当にその通りなんですよ。だから、ギックスは「単一事業セグメント」なんです。プロダクトを売っているのか、コンサルティングを売っているのかは、手段の違いであって、目指している成果はあくまでもクライアントの課題解決です。
クライアントの事業を伸ばすために、プロダクトが適していればそれを使うし、適していなければコンサルティングでご支援する。コンサルティングの中でアセット群を積極的に活用しながら、新しいアセットを生み出して、そのアセットがプロダクトを産んでいく。ギックスの3つのサービス(DIコンサルティング、DIプラットフォーム、DIプロダクト)は、そういう有機的でシームレスな関係性にあるんですよね。
それらを無理に区分しようとすると、サービス間の売上按分をとても恣意的に行うことになってしまうので、むしろ不誠実なことになるなと思っているんです。もちろん、どこかのタイミングで切り分けたほうが良いと判断すればそうしますが、当面は、単一事業セグメントとして、クライアント企業への価値貢献を行いたいなと思っています。
浅井:
これまでに蓄積されたアセット、これから生み出されてくる新しいアセットをしっかり理解し、それらを基軸に「新規事業」として企画・推進していくのが私のミッションだと認識しています。クライアントへの価値提供という大義を胸に、事業立上げに尽力していきます。
網野:
心強いです。ぜひ、一緒に頑張っていきましょう。あと、仲間をもっともっと集めましょう。
浅井:
きっと、これを読んでる人が「俺のことかな」って思ってますよ(笑
網野:
そう、そこの、あなた。あなたです。連絡、待ってますからね!(笑