情報技術が分かる”企画部門”の育成こそ、競争力の鍵
ICTとは、 Information and Communication Technologyの略です。日本語では情報通信技術と訳されます。ITという言葉と非常に似通っているのですが、wikipediaを参照すると、なかなか興味深い一文があります。(引用文中の赤字箇所)
情報技術(じょうほうぎじゅつ、英: Information technology、IT(あいてぃー))は、情報処理特にコンピュータなどの基礎あるいは応用技術の総称。通信 (communication) を含める場合はICTと言う。 米国のITAAの定義では「特にソフトウェアによる業務やコンピュータのハードウェアなど、コンピュータをベースとした情報システムの、教育、設計、開発、適用、実装、保守、管理」である。ITは電子的なコンピュータやコンピュータソフトウェアを使用して、情報に対するセキュリティ、変換、保管、処理、転送、入出力、検索などを取り扱う。 日本では戦前以来の縄張りに由来して、通信事業は総務省の所管であるため、総務省はICTの語を、経済産業省はITの語を用いることが多い。 (wikipediaより)
なるほど、、、。やはり、省庁の壁は高くそびえたつのですねと痛感しつつ、今回のニュースななめ斬りでは、総務省が発行する「クラウド&ビッグデータ時代のICT利活用ハンドブック」について取り上げてみたいと思います。(ギックスの得意領域とする”ビッグデータ”の話題ですのでスルーできませんでした)
総務省の取組み
総務省の取組みは、ICT利活用の促進(総務省サイト)という名称で、下記の取組みに力を注いでいます。
- ICT高度利活用における地域活性化
- コンテンツ流通の促進
- ICTを使った協働教育等の推進
- 高度ICT人材の育成
- 情報流通連携基盤の実現
- 医療分野のICT利活用の推進
- 情報セキュリティ対策の推進
その中で、高度ICT人材の育成に関して、「高度ICT利活用人財育成ブログラム開発事業」という取組みが行われていました。取組み内容を引用します。
【概要】 産業界等から人材不足の指摘がある高度ICT利活用人材の育成を支援するため、平成23年度及平成24年度に実施した「高度ICT利活用人材の能力・要件・人材に関する調査研究」等を踏まえ高度ICT利活用人材を育成するために必要なカリキュラムを体系化し、「高度ICT利活用人材育成カリキュラム」を開発するとともに、高度ICT利活用人材を継続的に育成するための方策を検討しています。
正確さを期するあまり、似たような言葉が繰り返して書かれていますが、要するに、「ICT人材を育てるためのカリキュラムをつくって、それに沿って育成します」という事です。 もう少し詳細に言うと、平成23年度には「クラウドの活用」に関するカリキュラムをつくり、平成24年度には「クラウド活用で”ビッグデータ”に対応する」ためのカリキュラムをつくったので、いよいよ平成25年度には、その内容を実際に研修コースに落とし込んで、実際にトライアルで研修をしてみている、という状況なわけですね。
その活動の全体を表現するために作られたのが、今回ご紹介する「クラウド&ビッグデータ時代のICT利活用ハンドブック」なのです。前段が長くなってしまってすみません、、、。
ICT利活用ハンドブック
このハンドブックは、総務省のサイトからPDF形式でダウンロード可能です。ご興味のある方は、原典にあたられてくださいませ。
ビッグデータを活用する、ということが各企業における”直近の課題”となっている今日、この総務省の取組みは非常に興味深いものです。ビッグデータを取り扱うためのスキルセットを体系的に整理する、と言う試みは、評価されるべきだと考えます。また、ハンドブック内に記載されている「人物像(役割モデル)」もギックスの考える「企画部門がデータを取り扱う」という思想と合致します。
人物像(役割モデル)
「部門を超え、経営・現場に働きかける高度ICT利活用人材」ということで、ハンドブックでは「高度ICT利活用人材」について、以下の記述があります。
一般に「高度ICT利活用人材とは、情報システム部門で求められる人材」と思われがちだが、そうではない。実際、先進企業57社へのヒアリング結果からは、「部門ごとの職掌に捉われず、組織を横断して活躍できる。自らデータの利活用を実践し、社内にその価値と効果を伝えることで普及させることができる人材」というイメージが浮かび上がってきた。
要するに、情報システム部門≠高度ICT利活用人材ということですね。では、誰が「高度ICT利活用人材」なのか。
導入時にはデータ分析やデータ利活用を推進するために、投資対効果や具体的な事業イメージなどの判断材料を集めて経営層と折衝する。併せて現場に対しても、ニーズや課題を的確に把握し、部門ごとの利害関係までを調整した上で、現場目線のICT技術を選定する。
利活用時にはリアルタイムの経営判断材料を作成して経営層に提供し、併せて実際に動いてくれる現場に対してビッグデータ利活用の価値と効果を啓発する
経営層と現場の間に立って折衝および推進ができることが重要なわけです。つまり、企画部門が想定されることになります。さらに、
当然ながらICTに関して一定のリテラシーを持ち、自らビッグデータを利活用することで現場の旗振り役となる
ということで、ICT(経産省的に言うとIT)の知見がある企画部門、情報システム部門と同じ目線で話すことができる企画部門が求められてくるということですね。これは、まさに、ギックスが想定する「データを自ら扱える企画部門」そのものだと言えるでしょう。
キャリアパス
この「高度ICT利活用人材」のキャリアパスについても、本ハンドブック内ではこのように記述されています。
ビッグデータの利活用を推進するには、データの利活用そのものにこだわることなく、「データを利活用してビジネスに役立てる」という高い目的意識を持つことが重要となる。つまり、社内外の状況と現場のニーズを正しく吸い上げ、事業全体を俯瞰(ふかん)しようとする取り組み姿勢が求められる。言い換えれば、「経営の視点」となる。
新しい人材領域となる「高度ICT利活用人材」には、このように業務プロセスを俯瞰できる視点が求められる。
業務プロセスの全体像を把握し、事業全体を俯瞰する「経営の視点」を保持する。これは、まさにCxO(Chief X Officer)に求められる資質です。ギックスでは、CMOという役割が日本において一層重要になると考えていますが、これはCIOであっても、CTOであっても、立ち位置・専門領域が違うだけで、持つべき視点は同じ「経営全体を見渡す」ということなのは間違いありません。(余談ですが、ギックスでは、CMOは『マーケティング課題を解決する』のではなく、『経営課題をマーケティング視点で解決する』ことが求められていると考えています。)
高度ICT利用人材の育成が、益々、重要な意味を持っていくのは間違いないでしょう。
今後の展開
この取り組みは、今後、民間企業が主体となって、カリキュラムに準拠した研修コースを実施していくことで広められていくようです。
今回、この取組みについてギックスに情報をご提供くださったのは、カリキュラム及び研修コースの開発に深く関わり、今後は研修実施に注力する株式会社 豆蔵の金子さん、中山さんでした。開発された研修コースのマテリアルも見せていただきましたが、非常に網羅的・体系的にまとめられており、「ビッグデータを”自社で”活用するということは、いったいどういう領域につかうことなのか」を考えるための最初の一歩としては申し分ないだろうと感じました。(むしろ、2日間のコースであのボリュームだと、間違いなくお腹いっぱいになるので、受講時には常に「自社・自部門に照らし合わせてみる」ということをお奨めします)
尚、金子さん・中山さんは、「高度ICT利活用人材シンポジウム」の運営にも携わっていらっしゃるとのことなので、ご興味のある方は参加されてはいかがでしょうか。(2014年2月12日に福岡、2月27日に東京、3月7日に大阪で開催されるそうです。)
この取組みに限らず、「データをキチンと取り扱える人材」「ICT/ITを理解し、それを経営および事業運営に活かすことができる人材」を増やしていくことが、今後の”競争力”強化の鍵となるでしょう。官庁においては、総務省・経済産業省という省庁の壁にこだわらず、日本という国の競争力強化のために歩調をそろえていただきたいと思うと共に、個々の企業においても、人材の育成とそれを活かせる組織づくりが急務だと言えますね。