この連載では「会社を強くする ビッグデータ活用入門 -基本知識から分析の実践まで-」で取り上げたビッグデータやアナリティクスの活用事例を抜粋し、ご紹介していきます。
書籍の中では大きく2つの場合で事例を区分しており、合計8回にわたり、「自社活用:自社の競争力強化にビッグデータを用いている事例」」のビッグデータやアナリティクスの活用事例をご紹介します。
A:他社活用:他社や外部に向けた情報提供によるサービス提供にビッグデータを用いている事例 第1回〜第4回⇒掲載済み
B:自社活用:自社の競争力強化にビッグデータを用いている事例 第5回〜第12回
今回は「④製造・物流」に関するビッグデータ活用事例です。
ビッグデータ活用事例:製造・物流
実は「製造・物流」、特に物流領域において、データの活用というものは非常に一般的です。そのため、外部に公表されるような”セクシーな”事例ががなかなか出てこないのが実状ですが、少し変わり種をあげたいと思います。
早和果樹園はみかん栽培の高度化のためにビッグデータを活用しています。
みかん栽培において、果樹園内に設置した5つのセンサーから20種類のデータ(気温、湿度、土壌温度、水分、降雨量、日射量など)を収集し、みかんの生育との相関分析を実施し、次期の栽培方法の改善を行っているとのことです。
今までのデータでは荒すぎてポイント数が少なく、相関分析にまでたどり着かなかったのに対し、センサーデータを活用し、データが大量になる事で相関分析のためのポイント数が増え、はじめて実現可能になった手法です。20種類のデータに及ぶ説明変数が大量に存在するため、目的変数をいろいろな切り口に設定してもその相関や因果が見えてくるでしょう。
例えば、みかんのサイズ、糖度、害虫の被害状況、熟す時期などの目的変数に対して、説明変数との関係を見て行くことができます。
農業において、天候に左右されずに品質が高い商品を安定して栽培するということはかつては夢のような話だったと思います。そのような夢がある程度現実に近づくとともに、成功すれば他の企業も追従し、その競争社会の中でよりよく、より上手く経営した企業が生き延びて行くことになります。今後は農業の事例はもっと増えてくるでしょう。
セメント企業のセメックスでは、ミキサー車に搭載されたGPSから送信される位置情報を用いて、痛みやすく輸送が難しいセメントを迅速かつ正確に輸送するために、予測モデルを活用し、輸送プロセスを改善しています。
センサーデータやGPSによる位置データは非常に大量のデータを集める事ができるため、物流や倉庫の在庫の最適化などに関して、今後も活用が進んで行くはずです。
リスク管理の際にも紹介しましたが、センサーデータの活用によるオペレーショナルコストの削減は、今後も更に活用事例が増えていくと考えられます。企業の競争力強化にはオペレーショナルコストの削減は必要不可欠であり、このような最適化によるコスト削減と言うものは非常に固い効果が見込まれるからです。
次回に続く。
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会社を強くする ビッグデータ活用入門 基本知識から分析の実践まで
連載:ビッグデータ活用入門のエッセンスをご紹介 エントリー一覧
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