この連載では「会社を強くする ビッグデータ活用入門 -基本知識から分析の実践まで-」で取り上げたビッグデータやアナリティクスの活用事例を抜粋し、ご紹介していきます。
書籍の中では大きく2つの場合で事例を区分しており、まずは4回に渡って「①他社活用」の場合のビッグデータやアナリティクスの活用事例をご紹介します。
①他社活用:他社や外部に向けた情報提供によるサービス提供にビッグデータを用いている事例 第1回〜第4回
②自社活用:自社の競争力強化にビッグデータを用いている事例 第5回〜第12回
価格に関するビッグデータを分析し、価格予測を実現
予測情報の提供という点では、フェアキャストなどがあります。「旅行業界向けの全フライト予約データ」を元に、「フェアキャストサイト上に表示されている航空券価格が今後上がるか、下がるか、増減幅はどの程度かを予測し、今が「買い時」がどうかを利用者に提示」するサービスを提供しています。現在はマイクロソフトの「ビング・トラベル(Bing Travel)により提供されています。
買い時と言う点ではもう一つ面白い事例があります。ディサイド・ドットコムと言う企業は利用者が検索した商品が買い時か、否かを提示し、「今後xx週間以内に、価格が上昇or下落する」という分析結果を提示しています。ただし、的中率に関する記載はありません。これらは、「数百のオンラインショッピングから収集した10万点以上の電子機器やデジタル家電の価格データを日時で取得したり、これらの商品に関して記載されているブログやニュース、プレスリリースなどの情報から、モデルチェンジの可能性が無いか、新商品の発表予定は無いか」なども確認されているようです。
どの企業にとっても将来の予測は競争力強化につながる羨望のテーマかもしれませんが、それでも業種業態によっては、将来のトレンドをいち早くつかむ事が劇的な競争力の強化につながる企業もあるでしょう。そういった企業では、外部向けの情報提供としてではなく、自社のR&D機能やMD機能の強化へ向けた情報活用として検討して行く事ができるでしょう。
ザラなどに代表されるファストファッションは店頭の売上げを即座に把握して、生産計画に反映しています。裏の開発・生産体制を見れば、ザラは1~2週間で改良商品を作って店舗へ補充できる体制を整えています。したがって、自社の販売データを即座に集め分析する事が非常に重要な競争力の源泉になっています。
ザラは自社のデータを使えますが、そのような企業が自社の販売実績以外からも確度が高い予測情報を仕入れる事ができれば、その競争力は更に増して行く事ができるでしょう。
ですが、企画してから店頭に並ぶまでに1年近くもかかるようなSPAやアパレルブランドであれば、ビッグデータを用いたタイムリーな情報収集もそこまで効果的に活用することができません。
「儲け話のメカニズム」や「キードライバー」に基づき、競争力を検討して下さい。
分析結果を提供することにより自社の新たな事業やサービスとしている企業は数多く存在していますが、それらの事例も自社にとって競争力を強化するためにインプット情報を活用しているととらえれば参考になる事例ももっと増えてくると考えられます。
次回に続く。
ビッグデータに関してより詳細にお知りになりたい場合はこちらを
会社を強くする ビッグデータ活用入門 基本知識から分析の実践まで
連載:ビッグデータ活用入門のエッセンスをご紹介 エントリー一覧
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