論理では語りきれない「経営の力」
本書は、出光の創業者をモデルにした半フィクションというか歴史小説というか、なんと呼ぶべきなのかわかりませんが、とにかく、なかなかに熱く、そして、深く考えさせられる一冊でした。
信念を曲げない
彼の生き方は「信念を持って、曲げない」に尽きます。その信念は2つ。
- 自社の利ではなく、国家(日本)の利を考える
- 従業員は家族。
こんなの口ではなんとでもいえるけど、本当に実現できる人なんて、そうはいないでしょうね。
途中、何度も苦難にぶちあたります。コンサル的な立場としては、その賭けは無謀すぎる、と思う部分もたくさんあります。しかし、その「信念」に基づいた意思決定を貫き、彼は成功します。
もちろん、何度も失敗します。戦争・敗戦を通じ、自己の力の及ばぬところで翻弄されます。しかし、その都度、断固たる意思決定と、人間的な魅力で乗り越えます。そしてまた、その人間的魅力の源泉も、先述の「信念」でした。
経営における「信念」と「再現性」
この本を読むまで、経営は、ロジックとアートの合いの子だと僕は思っていました。アートには、才能も含まれますが、とはいえ、結局は「スキル」の問題だと考えていました。
しかし、やはり、そこには「気持ち」という説明のつかないものがあるのかもしれません。
経営者は、ブレてはいけない。
経営者は、信念を貫かねばならない。
これは、想像以上に過酷なことです。自分が決めて、自分が責任を取る。正解など無いなかで、臆さずに立ち向かう。こんな過酷なことを「サラリーマン」として生きながら”心に抱きなさい”というのは、やはり無理難題なのではないかと思います。(「経営者マインドになれ」なんて、暴論だとおもうわけです)
経営者の自叙伝的なものを読むたびに「たまたま成功しただけだろ」と僕は思っていました。また、「それ、再現性はどうなんだよ」と突っ込みたくなることもしばしばあります。しかし、本書については、「この人だから成功したんだな」と納得できますし、「この人なら、もう一度、ゼロから戦えと言われても成功しそうだな(再現性ありそうだな)」と思いました。
もちろん、小説であるわけで、多くの脚色もあるのでしょうが、自分が「経営者」として戦えるかどうかを計る試金石になりうる良書だと思います。経営者を志す方は、ぜひご一読の上、よければ、僕に感想を教えてください。
尚、僕は、「ああー、僕ってば経営者には向いていないなぁ」と痛感しているところです。いやはや。