内容は平易だが「ソーシャルリスニングの”入門書”」ではない
この本は、良書です。ソーシャルリスニングに取り組む場合、一度は目を通すべき本だと思います。しかし「入門書」かというと疑問が残ります。つまり「いつか読むべきだけど、最初に手に取る一冊なのか」ということです。
本書は、非常に多くの事例を含んでいます。ですので、ソーシャルリスニングをやったことがある人にとっては、自分の取組みをより深くするためのアイデアや、他に自社でどんな取り組みができるか、を理解することには役立つでしょう。しかし、反対に「いろんなことができる」ということで、経験がゼロの状態で読むと、迷子になってしまうと思います。
いろいろ悩むより、やってみよう。
とはいえ、現状、本書よりも優れた「リスニングの指南書」が、他にあるわけでもありません。従って、「初心者」の方は、以下のステップで本書を活用すると、ソーシャルリスニングの世界に入りやすいのではないでしょうか。
- 冒頭の「リスニングの定義」を読み『全体感』と『目的の種類』を掴む
- 第2章「リスニング・ソリューションの評価と選択」を読み、『手法の種類』を知る
- 実際に、どれかひとつをやってみる(リスニング目的xリスニング手法)
- やってみた目的と手法の組み合わせに類似する事例を本書から探して読む(深堀り)
- 他の目的と手法について、本書で理解する(知識の拡大)
『目的』の種類は、p.4以降「ソーシャルリスニングの応用範囲」ということで、記載されます。抜粋すると、
- マインドセット(モノの見方、考え方)の理解
- 顧客・潜在顧客のプロファイリング
- 市場変化の早期検知
- 問題の察知
- 競合他社の分析
- ターゲット化とセグメント化
- 売上の牽引役の発見と売り上げ予測
- アンケート調査の補足
- イノベーション、R&D(研究開発)、コ・クリエーション
- コンセプトのテスト
- ブランドの特徴の発見、評価
- メッセージの開発、評価
- レピュテーション(評判)を脅かすリスクの特定
となります。また『手法』の種類については、p.22~31で語られる5つとなります。(同様に抜粋します)
- 検索エンジン
- ソーシャルメディア・モニタリング
- テキスト分析
- プライベート・コミュニティ
- リスニング・プラットフォーム・ベンダー
最後の「プラットフォーム・ベンダー」はさておき、最初の4つはイメージしやすいモノでしょう。ただプライベート・コミュニティは既にコミュニティが存在しなければ立ち上げに時間がかかりますし、テキスト分析は専門知識と専用ツールの準備が必要です。従って、一般的には「検索エンジン」「ソーシャルメディア・モニタリング」のどちらかから開始することとなると思います。
従って、先述した5つのステップの 【3. 実際に、どれかひとつをやってみる(リスニング目的xリスニング手法)】は、例えば・・・
- ソーシャルメディア・モニタリング x 競合他社の分析
→Yahoo!リアルタイム検索で、競合商品について検索してみる
というようなことになるでしょう。
※専用ツールを活用した事例にはなりますが、ギックスで実施した「競合比較」のレポートをご参考までに、ご紹介しておきます。
ギックス総研:市場調査課/エナジードリンク調査(2013年2月実施)
その上で、本書の「事例」を読むと、ソーシャルリスニングの世界が、それまでよりも「具体的に」「リアルに」そして「身近に」感じられるようになること請け合いです。そして、その時には、本書を手にとった時点では”初心者”だった方も『本書の真価』に触れることができるハズです。
尚、いかに「データを読み解くか」という部分は、多分に”センス・感性”に依るところも大きいでしょうが、一人ですべてをまかなう必要はありません。(弊社では、データを読み解く能力は「データアーティスト」と定義しています。詳細はコチラ。)
ぜひ、「リスニングの試行」と「本書の読み込み」を何度も繰り返し、深遠なるソーシャルリスニングの世界へ漕ぎ出しましょう。