分析力を武器とする企業
今回は題名の通り、分析力が競争優位になるという強いメッセージを持った一冊を紹介します。
ちなみに、同じ著者の「分析力を駆使する企業」というのもあります。こちらも近日中にご紹介する予定です。
この本におけるビッグデータの定義
”ビッグデータ”という言葉自体使われていません。
そもそも「ビッグデータ」という言葉が世間に浸透し始めたのは2011年頃、この本の発売が2008年なのでまだ「ビッグデータ」という言葉が存在していなかった(もしくは世に浸透していなかった)というのが正しいですね。
分析に必要なデータ量や種類に言及しておりませんが、データ量が多ければいいというわけではなく、自社の業績のカギはどこなのかを見きわて、そこを中心にデータを集めるのが賢い方法だとしています。
どんな時にこの本を活用するか
こんな悩みをお持ちの方にオススメします。
「自社でアナリティクスを始める(又は強化する)ために何をすべきか」
分析力を武器にするまでのロードマップ(P.178)ではステップ毎に取るべき意思決定や投資判断がまとめられています。
もちろんこのロードマップに従えば、物事が万事うまくいくわけではありませんし、コストやリソースの問題は触れていませんので別途考える必要があります。前回ご紹介した「最強のビッグデータ戦略」では人材や組織の要件が触れられていましたが、この本のロードマップではそれより前の段階、「そもそもうちの会社って分析とかできる状況にあるの?ないなら何から始めればいいの?」という問いに対する筆者なりの答えが記されています。
この本で印象に残ったこと
データ分析例のひとつとしてシスコ・システムズでの財務への応用という事例があります(P.106)。
決算報告をよりスピーディーにしたという内容なのですが、読みながら?が浮びました。決算報告は適切な時期に正確な数字を提示すればいいのではないかという疑問です。しかし、実際は決算処理速度向上により、経営業況を把握するサイクルをより多くまわし、経営判断の質を高めることが目的でした。
分析となるとマーケティング活動などをイメージしがちだった為に、自社の競争優位性に経営判断の質を選択し、それを高める術としてデータ分析を活用している点は、「データ活用は経営を高度化するための手段のひとつ」という位置づけを再認識しました。