それぞれの“項目”の数字をどう決めるのか:分析とビジネスケース作成の深イイ関係(4)

AUTHOR :   ギックス

InとOutのバランス

結局のところ、ビジネスケースはリターン(メリット)とリスク(デメリット)の差分の確認でしかないということが、前回までの話で分かっていただけたかと思います。リターンには事業による収入に加え、コスト削減や投資削減、事業拡大や事業外収入など大きく分類しただけでも項目は豊富にあり、自身がどれだけ版図を広げるかによることが大きいです。そのリターンを生むために必要な投資額やコスト増分、人件費などを積み上げれば支出は計算できるはずです。
実は、ビジネスケース策定で、この項目を上げきることは、実はそんなに難しいことではありません。特に支出はカンタンなはずです。問題はリターンを生じさせる要因をきちんと決めて項目の数字を決められるかにかかっています。それさえできればあとは収入と支出のバランスが取れるかどうか、現実的かどうかという判断になります。
 

ビジネスケースをみせて説得するつもりで作る

実際に経営コンサルタントが事業の戦略を立案する際に必ず言われるであろうことがあります。それは「要は儲かるの?」ということです。人や場合によって言い方は異なりますが、例えば社長であれば「結局いくら投資資金を用意すれば何年でいくら返ってくるの」となりますし、営業部長であれば「何社に営業して、何社と成約すれば、いいかわからないと現実感がなくって、その事業がいいかどうかなんかわからないよ」など戦略が言葉だけで語られているとしっくりこない人も多いです。そのような方々を説得するための必殺技が定量化であり、ビジネスケースであるのです。その時に、それぞれの人が気にするであろう数字をちゃんと盛り込んで、切り出して、ケースに組み込んでおく。そのことを意識して作るだけで、項目はちゃんと洗い出せますし、その決め方だっておのずから見えてくるものになります。
 

大切なのは、何か一つ動かせない数字から始めてしまうこと

決めていかなければならない売上側の計画は、どれだけ顧客を獲得できるかにかかっている場合が多いと思います。当然商品によっても違うと思いますし、単価によって獲得のスピードやシェアも異なってくると思います。セールスパーソンの数や能力によっても違いますし、概況によっても異なってくると思います。
ビジネスケースつくりの初心者が陥りがちなのは、それぞれの数字が関連している多次元方程式となるビジネスケースにおいて、それぞれの数字がちぐはぐで現実感を失っているビジネスケースになってしまうことがあります。そうならないためのポイントは、スタートとなる基準の数字を先に決めてしまい、そこから議論、ケースつくりを始めてしまうことです。
例えば、友人がパン屋を出店するというビジネスケースであれば、まずいくら用意できるのか(自己資金+借入)からしかはじめようがありませんし、売上が数百億円の大企業の新規事業であれば、年間売上が数千万円しか行かない新規事業など認められるわけありませんので、少なくとも初年度売上が数億円で3年後には数十億円になるという売上目標からビジネスケースを作っていくことになるはずです。
 
ビジネスケースの枠ができて、スタート位置とゴール位置が見えてきたところで次回はいよいよそれぞれの前提をどうおいていくのかを決める話をしたいと思います。

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