本記事は、株式会社ギックスの運営していた分析情報サイト graffe/グラーフ より移設されました(2019/7/1)
会員情報とレシートを紐づけると集団(セグメント)ごとの購買行動を分析できる
会員情報の入った会員マスタ
前回の記事『会員番号から複数のレシートを紐づけ”ID-POS”を作る|レシートから考えるPOSデータ分析(10)』では、会員番号があると複数のレシートを紐づけることができるということを書きました。今回は、この会員番号が紐づけられたレシートについて、どのような分析ができるのかを考えてみます。
前回の記事で作成した会員番号の入った”トランザクションテーブル”を再掲します。
このテーブルはセブンイレブンのレシートから作ったもので、ここに記載した「会員番号」は電子マネーnanacoの会員番号でした。
さて、このnanaco、小銭のやり取りをしなくても済むのでとても便利なものですが、初めて使う前に”ある事”をしなければなりません。それは、会員情報の登録です。名前、生年月日、性別、住所、メールアドレス、などを登録しなければnanacoを利用できるようになりません。
このような会員情報は、下に示すようなテーブルで管理されていることでしょう。
このような会員情報の入ったマスタテーブルを「会員マスタ」と呼びます。当然ながら、nanacoを持つためには、全員が会員情報の登録を行わなければならないので、「会員マスタ」には全会員の会員情報が入っていることになります。
ここで、注目すべきは”会員番号”です。この番号は入会時に会員ごとに割り当てられる番号で、この会員番号がレシートに記載されています。つまり、この「生年月日」や「性別」といった会員情報は、レシート上の情報、すなわち購買履歴情報とつながっていることになります。本来は、会員マスタには全会員分のデータが入っているはずなので、全会員分の購買履歴を会員情報と紐づけることができるわけです。
会員情報によって集団(セグメント)ごとの分析が可能になる
前回の記事で、上に掲載したレシートから作成したトランザクションテーブルからは会員の購買行動がわかると書きました。その具体例として、
- 4月の購買回数は3回
- 4月の購買額に合計1,156円
- 4月の1回あたりの購買額は385円
- 4月に利用した店舗数は1店舗
を挙げましたが、この行動をした会員は「男性」「30歳」「東京都在住」であることが、会員番号によって紐づけられた会員マスタの情報からわかります。
この「男性」「30歳」「東京都在住」といった”属性”が紐づけられたことにより、”属性”ごとに傾向を見ることができるようになります。それぞれの属性ごとに集計すると、例えば「4月の男性会員一人あたりの購買回数はxx回」、「4月の30歳の会員一人あたりの購買額はxxxx円」「4月の東京都在住の会員の1回あたりの決済額はxxx円」といった値を求めることができます。
このように、会員番号によって複数のレシートの情報が紐づけられただけでも大変に価値がありますが、会員番号を通して会員情報と紐づけられるとその価値はさらに向上します。記事『「自社」の電子マネーと「他社」の電子マネーの違い|レシートから考えるPOSデータ分析(9)』にも記載しましたが、会員情報を自社で”保有”することは小売業者にとって重要なことになります。
ただ、記事『ID-POS分析とは(後編) ~POS分析の3ステップ。大事なのは”基本”から始めること~ |データ分析用語を解説』にも書いた通り、会員情報を用いた分析は難解です。まずは基本の分析から始めていくことが大切になります。