本記事は、株式会社ギックスの運営していた分析情報サイト graffe/グラーフ より移設されました(2019/7/1)
仮説を持って、打ち手を実行し、必ず検証せよ。
本日は、日経デザイン|バックナンバー:2014年12月号に掲載された記事、無印良品の「品ぞろえを豊富に見せる魔法の新什器」をご紹介します。
記事概要
ビジュアルマーチャンダイジングに力を入れる無印良品が、ここ数年、新店舗・改装店舗に導入している「新什器」がある。従来の、高さ1,500mmの什器に比べて、2,200~2,400mmと背が高い什器は「店内の見通し」を犠牲にしていると言える。
しかし、その結果として「目の前に商品が並ぶ」ため、商品が消費者の目線に入りやすくなり、「商品バリエーションが増えた」という意見が集まることとなった。
無印良品の特徴である「衣」「生(生活雑貨)」「食」の3つの商品群の、それぞれの特徴にあわせたVMDの基本指針を、2005年から設定していることと相まって、新什器導入店の売上は、前年比15~20%増という成果が得られている。
来店者に何を見せたいのか?を考える
この施策は、来店者に何を見せたいのか?を考え抜いたことにポイントがあると言えるでしょう。
多くの場合、何かを得るためには、何かを捨てる、という意思決定が必要です。(一石二鳥の施策も稀にありますが、まぁ「稀」ですね。)この選択をしないで施策を打つと、何が失敗だったのか、が良くわからなくなります。
今回は、店内の見通しが良い、ということよりも「商品がしっかりと目に入ること」を目的としたということになります。そして、これは「売上によって検証される」というゴールが明確に設定されています。当該記事より引用します。
一坪当たりの売上を上げるには、ボリュームを出す必要がある。しかし、ボリューム一辺倒だと、伝えたい内容や、商品が埋もれてしまう。
ファブリックの棚では、素材感を確かめられるサンプルを手が届きやすい位置に置いている。売上における比率が多い女性衣料は、マネキンを使って着こなしやカラーバリエーションをしっかりと見せている。店舗の奥に設けた食品の棚では、商品を大量に並べボリューム感を出し、店内での消費者の回遊を誘う。
消費者に「どうなって」欲しいのか?
店内の施策を考えるときには、「その結果、消費者はどういう風に感じ、どういう風に行動してくれるのか」を考えておく必要があります。
例えば、「人の流れを従来の時計回りから、反時計回りに変えたい」と思っていたとすると、仮に売上増進効果が無かった場合にも「人の流れは想定通りに変わってたかどうか」で評価することができます。あるいは、「セール品の前でもっと立ち止まらせたい」なども同じですね。
こういう中間指標をしっかりと設定できるように「仮説」「目的」をつくっておくことにより、「検証」が可能になります。上記の例でいえば、「人の流れ・立ち止まる時間の長さは変わったが、売上に効いていない」ということがわかれば「人の流れ・滞在時間への影響は与えられるので、あと、何を変えれば売上に効きそうか?」と考えることができます。あるいは、売上にマイナス効果がでてしまった場合は「そもそも、そういう風に人の流れを変えてはいけない」という学びが得られます。
これを「この棚配置で、売上をあげたいのだ!」とやってしまうと、売上が上がらなかったときに、何を直せばいいのかわかりません。
今回の無印良品の場合、顧客の声として「商品バリエーションが増えた」というものがある、とのことですので、中間指標として「顧客に、品揃えのボリューム感を感じさせる」ということを目標として設定し、その検証のためのアンケート調査を行った、と考えられます。仮に、これで売上が伸びなかった場合には「そもそも、品揃えが増えたと感じても売上には効かない」ということになりますので、違う打ち手を考えることができそうですね。
自社に限らず、他社の店舗などでも、そこに何らかの変更が加えられていた場合に、「これは、誰の行動を、どういう風に変えたいのだろうか?」という視点で評価していくと非常に面白いと思いますよ。