本記事は、株式会社ギックスの運営していた分析情報サイト graffe/グラーフ より移設されました(2019/7/1)
大事なのは「来店時にどこまで決めていたか?」
本日は、小売業において非常に重要視される概念「計画購買」と「非計画購買」について解説します。
まずは、世の中的な定義から
計画購買とは「もともと予定していた購買」です。非計画購買とは「当初は考えていなかった購買」です。
書籍:インストア・マーチャンダイジング(流通経済研究所)によると、まず、購買行動は4つに分類されます。
- 購買予定があり、購買した →計画購買
- 購買予定が無く、購買した →非計画購買
- 購買予定があり、購買しなかった →購買中止
- 購買予定が無く、購買しなかった →非購買
このうち、1と2を抜き出して整理すると、
「1.計画購買」は、ブランド計画購買(商品名”綾鷹”まで決めていた)とカテゴリー計画購買(”ペットボトルのお茶”という程度には決まっていた)に分かれる。「2.非計画購買」は、家庭内の在庫切れなどの必要性を思い出した”想起購買”、他の商品との関連性から必要性を認識した”関連購買”、値引きなどの条件により購入意向が喚起された”条件購買”、商品の新奇性などにより衝動的に購入する”衝動購買”の4つに分類される。というこが分かります。
なお、このどちらにも含まれない「代替購買」という概念があります。これは、購買予定なしで購買した、という分類上は非計画購買に含まれるべきものですが、「そもそも、別のモノを買おうと思っていたが、それが無かったので、違うモノを(代替的に)買った」ということで、概念として区分けしているようです。
これらを図にまとめると、下記のようになります。
で、なんなんだっけ?
というわけで、世の中的な定義は分かりました。しかし、これは、現実世界の購買行動に照らし合わせたときに、なにを意味しているのでしょう。
要は「境界線」の議論
結局のところ、どこまでが非計画購買で、どこからが計画購買なのか、を一旦線を引いてみた、と言っているにすぎません。しかし、現実的には、その線は「何本でも引ける」はずです。
購買に向けたプロセスとして整理してみるとそれは、明らかです。
図にまとめてみましたが、購買に至るプロセスというのは、「入店を決めた」「獲得便益を決めた」「カテゴリーを決めた」「ブランドを決めた」「購買した」という流れになるハズです。
図中の例では「コンビニで明太子おにぎりを買う」ということにおける、完全なる”非計画購買”を想定して書いています。
それぞれのプロセスで決めているのは「入店:向かいにあるファミレスでも隣のセブンイレブンでもなく、目の前のローソンに入る」「獲得便益:小腹がすいたので、何か食べるものを買おう」「カテゴリー:サンドイッチではなく、おにぎりを食べよう」「ブランド:鮭でも梅干しでもなく、明太子にしよう」ということです。
これを”都度都度、その時点で決める”というのが、100%純粋な”非計画購買”なわけです。
それって、タイミングの問題でしょ?
では、反対に、最初から全部決めていたら、100%純粋な”計画購買”ということですよね。
この「最初っていつやねん?」というのがポイントですね。要は「来店時に、どこまで決めてたの?」って話なわけです。
その視点に立つと、計画購買か非計画購買かという明確なラインを引くことには、あまり意味がありません。結局は、「程度問題」なのです。
敢えて、便宜上線を引くならば、ブランド計画・カテゴリー計画のほかに、便益計画・入店計画という段階がある、というのが適切でしょう。
来店したときに「店に入ることだけ決めていた」なら、それは入店計画購買です。来店したときに「空腹を満たすことを決めていた」なら、それは便益計画購買です。
逆転の発想をしてみよう
そこで、視点を逆に向けてみましょう。要は、上で定義した各段階の「計画購買」は、「何について”非”計画購買なのか」と考えるということです。そうすると・・・
- 入店計画購買=便益非計画購買
- 便益計画購買=カテゴリー非計画購買
- カテゴリー計画購買=ブランド非計画購買
- ブランド計画購買=(非計画要素ゼロ)
と置き換えることができます。
このように定義すれば、「相手が求めているもの」が理解できるため、打ち手すなわち伝えるべきメッセージの議論がしやすくなります。
(後編に続く)