本記事は、株式会社ギックスの運営していた分析情報サイト graffe/グラーフ より移設されました(2019/7/1)
目次
ID-POS分析は「買い手」の行動分析に踏み込むことを意味する
先日の「POSデータ」「POSデータ分析」に引き続き、本日は「ID-POS」について解説します。
ID-POS=購入者を識別できるPOSデータ
ID-POSとは、ID付きのPOSデータのことです。POSデータが「何が(What)、いつ(When)、いくつ(How many)、いくらで(How much)売れたのか」を意味する情報でしたが、ここに「誰に(売れたのか)=誰が(買ったのか)」という情報が追加されると「ID-POS」になるわけです。
ID-POSの取得できる業種・業態
IDが付いているPOS、すなわち、誰に売ったのか or 誰が買ったのか が分かるのは、どういう業種・業態でしょう。
最初に思いつくのは、ポイントカードシステムを導入している小売業者です。この場合は、ポイントカード利用者に関しては「誰」という情報を管理することができます。(紙にスタンプを押す「スタンプカード」だと、POSデータに対して”誰が”という情報を連携することができないので、「誰」という情報はわかりません。)最近は、Tポイントカードに代表される、企業間での共通ポイントを導入しているところもあります。その場合は、複数の企業を横断した状態で、ID付きのPOSデータを蓄積することができます。但し、”ポイントカード利用者”に限る、ということには注意が必要です。
また、Amazonや楽天などの通販事業者も、IDの付いたPOS情報を保持しています。通販の場合は「自宅に届ける」前提で利用されますので、ポイントシステムを導入していない場合にも(まぁ、そんな企業は殆どありませんが)住所入力の手間削減などの理由から、会員登録する必然性が高くなり、ID付きの比率が高くなります。
配達という意味では、小売ではありませんが、デリバリーピザなどは、必ず「電話番号」「届け先住所」が必要なので、人に紐づいた情報管理が可能です。以前は、店舗別に顧客を管理していた時代もああったようですが、最近はチェーン内で顧客DBを一つにまとめて管理する企業が多いです。特に、インターネット注文が増えてきており、ログイン→注文→再ログイン→前回注文の履歴から選ぶこともできる というような、ECサイトとしての機能も拡充されているようです。
iTunesや、VODサービスなどのオンラインコンテンツ販売や、チケット販売なども、販売履歴がIDに紐づいていますね。
POSよりは少し情報の粒度が大きくなってしまいますが、クレジットカードは、IDに紐づいた購買情報という意味では、ID-POSに近い情報になります。(厳密にいうと、具体的なwhatが分からず、where止まりになっているケースが多いです)
また、このあたりは「POS」とは呼びませんが、ソーシャルゲームもIDに紐づいて管理されていますし、銀行や保険なども個人に紐づいて情報管理されています。
ID-POSは、顧客の購買行動を明らかにする
IDのつかないPOSデータの分析は、基本的に「何が売れたのか」という観点での分析となることは以前述べました。「顧客」「買い手」を特定できないために、そこはブラックボックスとして「売れ方」を分析するしかないわけです。(もちろん、それだけでも分かることは沢山ありますが)
一方、このPOSデータに「ID」が付いた途端に、そこには「買い手」という軸が増えます。この軸は、非常に強力ですので、それまでの「販売実績データ分析」が「購買行動データ分析」に様変わりします。
その人は、何を買っているのか?がわかる
まず、人の単位で情報を束ねられるため、最初に考えることになるのは「その人は、何を買っているのか」です。同じものを沢山買うのか。沢山買う場合も、一度に沢山買って頻度は低いのか、数は少ないが高い頻度で買っているのか。そういうことを分析していくことになります。
その人の属する「集団(セグメント)」は、何を買っているのか?がわかる
続いては、その人が属する集団すなわちセグメントが、何を買っているのか、を考えます。その人が30代男性であれば「30代の人は何を買うのか」「男性は何を買うのか」「30代男性は何を買うのか」という風に切り分けていくことになります。
その人の、購買行動で「集団(セグメント)」を再定義することができる
さらに、その人の購買行動を「集団の定義=セグメントの切り口」にすることもできます。火曜日に沢山買い物する人、あるいは、来たら必ずおでんを買う人、みたいな感じですね。一般的に使いやすい例としては「高額商品を買う人」「来店頻度が高い人」などでしょうが、先述の「火曜日に沢山買い物する人たち」という集団を他の集団と比較するのも、着眼点としては悪くないと思います。
いろいろできるからこそ、まずは基本に忠実に!
POSデータにIDが付与されただけで、分析の選択肢は大きく増えます。しかし、だからといって、闇雲に分析作業を進めるのは得策ではありません。
やはり、POSデータ分析で「売れ方」を知ることが分析の最初の一歩であるべきで、その上で、ID(=購買者)の単位で分析していく、という手順が良いと思います。特に、事業の全体構造を考えるという観点では「ビジネスとして、どこが儲かっているか」を踏まえたうえで、「その儲けに貢献しているのはどういうお客様か」と考える方が、実態把握に適しています。(もちろん、これは、経営方針として「お客様個々人のニーズを満たすことが大前提」等の考え方に、異を唱えるものではありません。データを有効に活用するためには、上記のアプローチで取り組んで実態把握・課題検知を行った上で、”打つべき施策”は社是や経営方針に合致するものを選び出す、ということが望ましいと考える次第です。)
分析の切り口を多面的に持てる時こそ、シンプルな分析で全体を把握していく努力を怠ってはいけません。
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