本記事は、株式会社ギックスの運営していた分析情報サイト graffe/グラーフ より移設されました(2019/7/1)
非計画購買を【計画的】に起こそう!
非計画購買を解明する本
「本当は何がものを売っているのか、誰にも分からない」
これは、CMプランナー時代の佐藤雅彦さんが、今をさかのぼること23年前、1992年に雑誌『宣伝会議』に連載するコラムの最終回で、広告会社に内定が決まった甥っ子へ贈ったメッセージです。
(中略)
でも、考えてみると、僕らは何か明確な理由があって、毎度商品を買っているわけじゃないと、その時ふと気づいたんです。
実は、パッケージが気に入ったり、広告に触発されたり、友人からの口コミで物を買うケースは稀。多くは、買う直前 ---”5秒前”に正体不明のナニモノカに背中をドンッと押され、僕らはモノを買っています。
これは、小売りの業界でいうところの「計画購買」「非計画購買」でいえば、主に「非計画購買」について語っていることになります。(だって、買う「5秒前」に決めたものは、”計画”購買とは呼べないですよね)
非計画購買のきっかけは「インストアプロモーション」だけではない
本書は、決して「コンサル的に体系化してまとめられた本」ではありません。具体例を並べて(いわゆる広告業界らしい”感覚に訴える分類”がされています)それを具体例として使うもよし、そこから何か気付きを得て考えるもよし、という仕立てになっています。ですので、これが「教科書」となるわけではありません。本書の冒頭でも「辞書的に使ってほしい」と書かれます。
その”使い方”に反してしまうものの、実際に本書の非常に面白いところは、「非計画購買」のトリガーを、インストアプロモーションに代表される「PLACE」と「PROMOTION」だけではなく、4Pすべてにおいて存在する、と定義しているところです。(そういう書き方はされていませんが、要は、そういうことだと私は理解しています)
もちろん、宣伝会議という媒体の特性及び、著者の草場氏がメディアプランナーというお仕事をされていることから、「いわゆるプロモーション的なもの」に注目しがちな部分はありますが、全体を俯瞰すると、4Pすべてを通じて「非計画購買」を喚起しようという考え方になっていることが分かります。
例えば・・・
- 「Bコースを選ばされるワタシ」の項では、PRICE(もちろん、商品ラインナップ設計も含む)に意味があると述べられます。
- 「黒に惹かれるワタシ」は、商品パッケージや、売り場の在り方に触れていますので、PRODUCT、PLACEに鍵があるわけです。
- 「頭文字Aに惹かれるワタシ」「”4”に惹かれるワタシ」「いいネーミングに弱いワタシ」は、ネーミングの話です。PRODUCTですね。
- 「”1+1”の魔法に弱いワタシ」は、ビック+ユニクロのビックロの話ですので、完全にPLACEの話です。
- 「贈り物をしたいワタシ」は、コカ・コーラの”名前入り商品パッケージ”=PRODUCTの話でもありつつ、同時にPROMOTIONの話と考えるべきでしょう。
という感じですね。このように、商品設計及び価格設定の段階から”非計画購買”を狙いに行くことが重要だと本書は説いています。
どうやって検証するべきか?
では、次の問題は、これらのインプットから「アイデア」を作った際に、どうやって検証していくべきか、です。
実は、小売店における非計画購買喚起については、かなり研究が進んでいます。そして、その因果関係(の仮説)を、検証する仕組みも徐々に整いつつあります。(代表的なものの一つとして、人流分析が挙げられるでしょう)
施策は打つだけでは意味がありません、最低限「最後の結果である販売情報・POS情報」で検証をしつつ、可能であれば「売場の人の流れ」「ソーシャルメディア上の反応」「サイトの訪問者数」「アンケートの結果」などの副次的要素をしっかりとチェックしていくことが重要です。
尚、この際に「検証できないものを、無理に検証しない」ということも重要です。検証できるものから始めましょう。できないものをやることは、労力の無駄です。カタいデータ、から着手するように心がけていただければと思います。
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