本記事は、株式会社ギックスの運営していた分析情報サイト graffe/グラーフ より移設されました(2019/7/1)
小売関係で読んでないとモグリと呼ばれても仕方ない一冊
本日は、公益財団法人 流通経済研究所の「インストア・マーチャンダイジング /製配販コラボレーションによる売場づくり」をご紹介します。
基本を「徹底的に」整理した良書
店内の顧客行動に着目して体系的にまとめられた一冊です。2008年初版と少々古い本ではありますが、小売業界に関わる方には、強く一読をお勧めしたい本です。
フレームワークでしっかり整理されていて分かりやすい
まず、本書は、冒頭で「ISM=インストア・マーチャンダイジング」の位置づけを定義してくれています。この整理のフレームワークが、網羅的で分かりやすいです。
まず、小売業の利益構造から考えて、リストアップしてくれます。分かりやすいように「オレンジ」がISMの直接的影響・「黄色」がISMの間接的影響を受ける要素と塗り分けました。
また、メーカーの場合は、「店内の販売力強化」に当たります。
購買行動を理解しろ
第1章では、インストアマーチャンダイジングについて語られますが、非常に重要なのが第2章です。「第2章:消費者の購買行動の見方と基本的特徴」こそが、本書のもっとも重要なパートだと思います。
3章のフロア・マネジメント、4章のシェルフ・スペース・マネジメント、5章のインストア・プロモーションなどは、この第2章の「考え方」に基づいて実行されるべきオペレーションの話です。
「購買行動を理解する」ということの”意味”と”視点”をしっかり押さえてから、後半に読み進むべきでしょう。いくつか引用します。
商品を購買するという意思決定について、もう少し詳しく記述すると、「何か問題があり、その問題を解決するためにいくつかの案を考慮し、その中で最適と思われる選択肢を選択する」という一連の行動になります。(中略)
このことは、購買の意思決定が消費者の情報処理行動の一形態であるとも考えられます。(中略)その中心は、「欲求認識」→「情報探索」→購買前代替案の検討」→「購買」の流れです。
各段階について簡単に説明すると、以下のようになります。
- 欲求認識:現在の状態が望ましい状態とは異なることを認識すること
- 情報探索:欲求を充足させるために、記憶や周囲の情報を探す事
- 購買前代替案の検討:意思決定の候補となる幾つかの案に対して、取得した情報をもとに検討を行うこと
この一連の過程を考えると(中略)意思決定前の過程において、なんらかの働きかけをすることで、その後の決定の結果が大きく異なると考えられます。
消費者の意思決定の各過程について、その特徴を整理し、データで確認する必要があります。
具体的には、消費者に対しいつ商品を訴求するかといった観点で、「消費者の購買の計画性」、また、訴求する方法に対して基礎的な事実を確認する目的で「売り場内滞在時間」「店頭における動き(客動線)」について把握する必要があります。
購買した商品は、消費者が視認した商品の何割かになります。つまり、「視認した商品数×買上率」で定義されます。非計画購買の点数を上げるには、この式で定義された要素である、「視認した商品数」をあげるか、もしくは「買上率」を上げるかになります。
「視認した商品数」を上げるには、とにかく商品を見てもらえばよいわけですから、店内をくまなく見てもらうような工夫をすることです。つまり、客動線を伸ばすような工夫をすることが大事です。(中略)
「買上率」を上げるには、視線が止まった商品について適切な訴求をすることが重要になります。
いかがでしょうか。本書の中に詰まったエッセンスを、この第2章でしっかりと胸に刻み込んでから、3章以降で実践的なノウハウを身につけるのが、本書の正しい読み方だと思います。是非、お試しください。
インストア・マーチャンダイジング―製配販コラボレーションによる売場作り