本記事は、株式会社ギックスの運営していた分析情報サイト graffe/グラーフ より移設されました(2019/7/1)
POSデータ分析が小売ビジネス把握の「根幹」
POSデータが、販売情報であり、それを情報系システムで活用することが鍵である、と別の記事で述べました。当記事では、それについて少し深く考えていきます。
商売の「全容」を掴め
POSデータが「販売情報」であり、また、そもそものPOS=Point-of-Salesが意味するものが「販売活動」であるということは既に述べました。
小売業とは「小口」で「販売」する商売
小売業は、卸売業とのセットで用いられる言葉です。卸売業が小売業者に販売し、小売業者が最終消費者に販売します。
そもそも、小売の「小」とは何か、と考えると「小口取引」の「小」だと考えるのが妥当でしょう。(企業と最終消費者との取引は、マイクロソフトのビル・ゲイツさんなどを”消費者”として高額・大口取引をするなどの例外的な場合を除いては、基本的に「小口」になりますからね。)
その「小売」の履歴を記録しているのPOSデータを集約すると、何が分かるのでしょうか。
「売れた」を知ることが、商売の基本
POSデータ分析においては、POSデータに含まれる「何が(What)、いつ(When)、いくつ(How many)、いくらで(How much)売れたのか」という情報を基に分析していくことになります。
ここに「誰が(Who)」が含まれていない、のは、実はとても重要なことです。(わざわざ書いていませんが、当然ながら「どこで(Where)」は、”当該店舗で”あるいは”当該レジで)ということで含まれています。)
通販事業者に代表される「ID付きPOS」を保持する小売業者、あるいは、T-Pointカードなどの”会員情報”との紐付け手段を持った小売業者を除いては、「誰が(Who)」買ったのかという情報は、得られません。
昨今の風潮として「One-to-One Marketing」などがもてはやされているため、どうしても焦点を「顧客」に当てたくなります。しかし、「何が売れたのか」をみることが商売の基本なのは間違いありません。
「買った」と「売れた」の関係性
ID付きPOSデータ(ID-POS)を用いて分析することには、もちろん意味があります。これは「顧客」を主語にして「(その人が)何を買ったのか?」と考えるアプローチです。
しかし、その前に「自社・自店舗」を主語にして「(その店では)何が売れているのか?」を考えることをおろそかにしてはいけません。
買ってくれるお客様を個別に捉え、必要に応じてセグメンテーションをすることで、どのように「買ってもらうか」を考えることも経営において非常に大切なことですが、その一方で、そもそも、自社が取り扱っている商品のうち、何が(総体としての)お客様に受け入れられているのかを知ることは「自社の存在意義・提供価値」を知ることに繋がります。
多くの小売業が見過ごしている課題は、「棚に置いてあるものしか売れない」という厳然たる事実です。いくら人気商品でも、棚に並べておかなければ、お客様がどれだけ欲しいと思っていても、実際に買われることはありません。
良くある例ですが「コンビニのシーチキンマヨネーズおにぎり」のお話を例にとります。コンビニのシーチキンマヨネーズは「大人気商品」です。そこで、多くのコンビニでは、大量に仕入れて陳列します。その結果、他のおにぎりが売り切れても、棚にはシーチキンマヨネーズが残っている、ということが起こりそうです。その結果、その時間におにぎりを買いにきたお客様は・・・必然的にシーチキンマヨネーズおにぎりを手に取ることになるでしょう。
さて、ここで問題です。果たして「シーチキンマヨネーズおにぎり」は、本当に”大人気商品”なのでしょうか。あるいは、その時間に「シーチキンマヨネーズおにぎり」を買ったお客様は、シーチキンマヨネーズおにぎりを”好き”なのでしょうか?
この状況を把握するためには、POS情報で「どの時間帯にどのおにぎりが売れているのか」を分析するだけで十分です。(もちろん、店頭在庫数や廃棄情報などの情報があるに越したことはありません)
自社のビジネスを知るために「販売」を押さえよう
いきなり「顧客別分析」をする前に、ひょっとしたら、まだまだできることがあるのではないか? あるいは、もう十分やりつくしたはずのPOS分析に、根本的に見落としていることがないか? を、立ち止まって考えてみてはいかがでしょうか。
貴社が蓄積している膨大なPOSデータすなわち販売情報は、ビジネス拡大のための「宝の山」かもしれませんよ。
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