ラーナビリティを考える(1):効果的な学習能力 と 効率的な学習能力|”考え方”を考える

AUTHOR :  田中 耕比古

学ぶ力 を 定義する

以前、ラーナビリティを高めよう、というタイトルで「学習能力」について考察しました。今回は、前回よりも「学習能力を構成するスキル」に焦点を当ててみたいと思います。

より多くを学び取るために

ラーナビリティとは、前回述べたように「同じ経験(インプット)から、より多くを学び取る能力」のことです。しかし、それをスキルとして捉えると、継続的かつ再現性のある学びを実現するためには「同じ投下リソースから、より多くを学び取る能力」も必要になると言えるでしょう。

即ち、

  • 同じインプット(経験・知識)から、より多くを学び取れる = 効果的に学ぶ能力がある
  • 同じ投下リソース(時間・金銭)から、より多くを学び取れる = 効率的に学ぶ能力がある

と言えるでしょう。

効果的に学ぶためには

同じインプットから、より多くを学び取る(=効果的に学ぶ)ためには

  1. 本質を理解する力
  2. 概念化し、個別事象に応用する力
  3. 形式知としてまとめる力

の3つが必要です。

まずは、自分がいま何を経験しているのか、その経験から何を学ぶべきなのかに関して、目の前の事象を分解し構造的に捉え、その本質を理解することが重要です。例えば、先輩の営業トークを聞く機会があったとすると、「打ち合わせの目的」「持っていきたかった結論」「そこに至るストーリー」「行っていた事前準備」「次の打ち合わせ設定のコツ」などの多くの要素があるでしょう。そういった要素にうまく分解して捉えなおし、それぞれのポイントにおいて、どういうコツがあるのかを考えるわけです。

しかし、そうして理解した本質も、そのままでは他の事象に応用できません。そこで「概念」として捉えなおすことが求められます。先ほどの営業トークの例を、同じ商品の営業トークにしか使えない、のは問題です。違う商品・サービスの営業活動にはもちろんのこと、そこで学んだ内容は「上司を説得するため」であったり、「仕入れ先と価格交渉するため」であったり、あるいは反対に「情報システム部門の主張を(自分が)理解するため」というようなことにまで応用できます。なぜなら、この場合の本質は ”相手を納得させるためのうまい説明方法” なのですから。

さらに、ここで終わりにしては、せっかくの学びが再利用しにくくなります。学んだ内容を、自分なりに整理し、まとめましょう。いわゆる「形式知化」というやつです。多くの人は、学んだ内容を記憶にとどめようとして、忘れてしまいます。紙でもwordやpowerpoint、あるいは社内ブログなど、なんでも良いので「他人が読んでも分かるレベル」に昇華して、記録しておきましょう。

効率的に学ぶためには

同じ投下リソースから、より多くを学び取る(効率的に学ぶ)ためには

  1. 計画を立てる力
  2. 計画通りに学ぶ力
  3. 学びのプロセスを振り返り、反省・改善する力

の3つが必要です。

学ぶということについて、計画を立てないといけません。ここでいう計画には2種類あります。「(業務遂行もしくはキャリア形成のために)どんなスキル・知識を身に着けていくか」という中長期的な学習計画と、「あるスキル・経験を身に着けるために、どういう手順で学習していくか」という短期的かつスコープの狭い学習計画です。この両方について、実現性のある内容に絞込み、選択可能な学習手段を見極めて、計画に落とし込んでいかねばなりません。

せっかく立案した学習計画も、実行されなければ絵に描いた餅です。学習計画の通りにしっかりと学習することが重要です。前回も述べた通り、世の中でいうラーナビリティは学習意欲(モチベーションなど)というニュアンスが強いのですが、この「学習を実行する」というポイントに着目しているのかもしれません。(が、それだけでは不十分だというのは、ご納得いただけるところかと思います。) もちろん、モチベーションが高いだけでは学習計画を遂行することはできません。スケジュール管理や、他のタスクとの工数配分など、備えるべきスキルは数多くあります。

最後に、この学習プロセスそのものに関して、PDCAを回しましょう。思った通りに学べているか。学べていないとしたら、計画が悪かったのか、実行面で問題があったのか。あるいは、予定通りの学習ができているとしても、今後の学習効率を改善するために、何かできることはないか。学ぶ、というプロセスそのもとについて、学びを得るわけです。

6つの力を身に着けて、学べるオトナになろう

学びとは、自分自身の力で勝ち取るものです。誰かに与えてもらうものではありません。学ぶという行為は、他人のために行うものではありません。自分自身のために行うものです。しっかりと学ぶことは(いわゆる学問であっても、ビジネス上のスキルあるいは知識であっても)、将来の自分に向けての投資です。学べば学ぶほど、大きなリターンが期待できます。

一番わかりやすいリターンは、「給料(=収入)」です。学歴によって収入に格差があるのは説明するまでもないでしょうが、ビジネススキルを身に着けることで給与は上がります。(社内で上がらなくても、転職するという道が拓けます。)

やりたい仕事に就く「機会(チャンス)」の多さも、リターンの一つでしょう。「できないけど、やりたい」と「やったことはないけど、やる能力は磨いている」は別物です。多くを学び取ったスキルフルな人間は、前者ではなく後者の立場で転職活動に臨めます。もちろん、起業すると言う選択をする場合にも、スキル・知識が無ければ成功の確率は上がりません。

将来の自分に対する投資活動たる「学び」を、より効果的且つ効率的に行うために、上述した6つのスキル「本質理解力」・「概念化力」・「形式化力」・「計画立案力」・「計画遂行力(学習実行力)」・「学習プロセス改善力」を、社会人の早い段階で身に着けるべきなのです。

次回以降、これらの6つのスキルについて、詳しく考察していきたいと思います。

※本記事のスキル定義は「1st draft」という位置づけです。考察を進め、詳細化していく中で、よりよいフレームワークを導き出せた場合には、変更する可能性がありますので、ご注意ください。

ラーナビリティに関する記事はコチラ

SERVICE