目次
クラウドサービスの課金体系・支払方法のポイントをまとめる
経営者の皆さんが一番気になるのが、クラウドサービスを使用料金ではないでしょうか? 実際に具体的な月々の支払料金を見積もろうとしても、非常に課金体系が複雑でお困りになっている方も多いと思います。今回は、クラウドサービス全体の課金体系の考え方、支払方法の注意点をAmazon社の「Amazon Web Services(通称:AWS)」、Microsoft社の「Azure」、Google社の「Google Cloud Platform」を中心に説明したいと思います。
クラウドサービスの課金体系は2種類
クラウドサービスの課金体系は複雑ですが、大きく分けて2種類あります。この2種類に分けることで複雑な課金体系を整理していこうと思います。
使用時間による課金
1か月のクラウドサービスの使用時間による課金体系です。使用時間の単位は「時間単位」であることが殆どですが、稀にバッチ処理に特化した一部のクラウドサービスのでは「100ミリ秒単位」のサービスもあります。使用時間による課金が発生するクラウドサービスには下記のようなサービスがあります。
- サーバーサービス(OSが入っているサーバー)
- バッチサービス
- データベースサービス
この課金体系の注意点として、24時間365日稼働しているサービスでも月の使用料金が変わるということです。携帯電話の定額プランのように毎月決まった使用料金ではなく、2月は28日分、3月は31日分の使用料金が発生します。月々の使用料金のブレ幅の割合は大きくありませんが、使用しているサービスの規模が多くなれば、大きな金額になりますので意識しておいたほうが良いと思います。
使用量による課金
1か月のクラウドサービスの使用量による課金体系です。使用量には、データ記憶容量、通信容量、実行回数など様々あります。使用量による課金が発生するクラウドサービスには下記のようなサービスがあります。
- クラウドストレージの保存料金(データ記憶容量)
- クラウドストレージの入出力のためのデータ転送料金(データ通信容量)
- メッセージ送信サービスの送信回数(実行回数)
クラウドサービスの様々なサービスを組み合わせて運用している場合、クラウドサービス全体の使用料金の中で、使用量による使用料金が占める割合はそれほど大きくありません。しかし、サービスの拡張やユーザーの増加などで意図しない間に使用料金が膨らむのが、使用量による使用料金です。そのため、定期的に使用量をチェックする必要があります。
複数の種類の課金が発生する場合がある
クラウドサービスの1つのサービスでも、複数の種類の課金が発生する場合があります。例えば、サーバーサービスの場合、使用時間による課金、サーバー内の記憶領域(使用量による課金)、そして、データ転送料金(データ通信容量)の3種類が発生する場合があります。
このように細かい課金条件全てを考慮して見積もりを出すのは非常に困難です。そのため、概算見積もりでは、比較的に金額の大きい「使用時間」や「記憶領域」の使用料金を中心に見積もりすることをお勧めします。
クラウドサービスの利用料金についての注意点
クラウドサービスの使用料金の支払い方法も特殊です。クラウドサービスの支払い方法は、日本企業のように請求書が送られてきて、それに対して銀行口座に振り込むような手続きではありません。これから私がクラウドサービスを使用から2年間で気付いたクラウドサービスの使用料金についての注意点について説明します。
支払い方法がクレジットカード決済になる
クラウドサービスをインターネットから契約する際に驚く内容としては、契約者の情報のほかにクレジットカード情報を必ず入力しなければいけないことです。AWS、Azure、Google Cloud Platform の3つのクラウドサービスでは、毎月の使用料金の支払いはクレジットカードから引き落とされ、口座自動引落しなどの別の支払い方法はありません。クラウドサービス契約後に引き落としクレジットカード情報は変更できますが、法人用のクレジットカードは用意していた方が良いと思います。
支払い通貨が米ドルになる場合がある
Azureの支払い通貨は日本円ですが、AWS と Google Cloud Platform の支払い通貨は米ドルになります。そのため、支払金額がドル/円の為替相場に影響されます。更にクレジットカード支払いですので、カード会社から請求書が発行されるまで、実際に日本円でどれだけの請求が発生するかは分かりません。クレジットカードによって為替レートの取り方が違いう場合がありますので、この点を考慮してクレジットカードを選ぶ必要があるかも知れません。
サービスの使用料金とは別に税金がかかる
クラウドサービスの各サービスには、それぞれ1時間、または1か月でどれだけの使用料金がかかるかのホームページで公開されています。しかし、これらは税抜きの金額です。日本の場合は、この金額に消費税が加算されます。また、条件によっては米国売上税などがかかる場合もあります。消費税だけでも8%も使用料金に加算されてしまうため、無視できない金額になります。
サービスを設置する場所で使用料金が異なる
クラウドサービスの中のサービスを開始するとき、どこの場所にサービスを設置するかを決める必要がある場合があります。(クラウドサービスでは、この設置場所を「リージョン」と言っています) もちろん、日本企業なら日本国内にサービスを設置した方が物理的な場所が近いため、通信速度の面で有利です。しかし、日本にサービスを設置した方が、米国などより高めに利用料金が設定されています。
下記は、AWSのEC2というサーバーサービスです。上が日本(東京)の場合の使用料金、下が米国東部(バージニア北部)の使用料金です。約3割高く日本の使用料金が設定されているのがわかると思います。利用料金を下げるために、日本国内でのサービス利用が多くない場合は、海外でのサービス設置を検討しても良いと思います。
クラウドサービスの課金代行を利用する
クラウドサービスには複数のサービスがあり、全体的にどれだけの使用料金が分かりずらいと思います。この問題を解決するためにインターネットから行える下記の公式見積ツールがあります。
しかし、クラウドサービスの月々の支払いが、クレジットカードになるなどの理由により会社として導入が難しい場合があります。これらを解決する手段として、クラウドサービスのサービス見積もりから、月々の支払いを請求書発行と口座振り込みにしてくれる「課金代行」を行っている企業も幾つかあります。
次回は、クラウドサービスのシステムリリースの早さと安さの理由について説明したいと思います。
連載:経営者のためのクラウド講座
- クラウドを使えない大企業は、ベンチャー企業と戦えるのか
- クラウドサービスの課金体系・支払方法は複雑 (本編)
- クラウドサービスのシステムリリースの早さと安さの秘密
- クラウドサービスのシステム開発に求められる技術者とは
- クラウドストレージによって安く・安全にデータを保存する
- クラウドサーバーはアイディア次第で使用用途は無限大
- クラウドデータベースは高ければ良いって物ではない! 特徴を見極める必要がある
- AWS × Azure × Google Cloud Platform を様々な角度から評価 ~AWSは絶対王者なのか?~
- クラウドサービスのサーバーレスは銀の弾ではない
- クラウドサービスの機械学習サービスの整理