リーダーは「リーダーのやるべき仕事」に集中しろ
本日は、「最高のリーダーは何もしない ~内向型人間が最強のチームをつくる!~」をご紹介します。
リーダーの生き様を知り、リーダーになろう
刺激的なタイトルですが、本書の意味するところは「世の中の人が『リーダーらしいと思うような振る舞い』をせず、本当に『リーダーがすべき行動』をしましょう」ということです。決して、本当に「何もしない」のではありません。このタイトルは、”1億人のための統計解析”の帯に記載された「さよなら、データサイエンティスト」などと同様に出版社さん・編集者さんが”売れそうな名前”を狙ってつけたのかなーと邪推してしまいますね。笑
では、「最高のリーダー」が行うべき「リーダーの仕事」とは何なのでしょうか。それを紐解くためには、リーダーの持つべき”2つの能力”を理解しておく必要があります。それが、
①メンバーが共感して自ら動きたくなる、魅力的なビジョンをつくる力
②ビジョンをメンバーにしっかりと伝えて浸透させる力
の2つです。ということは、リーダーは「ビジョンをつくること」と「それを伝えること」が仕事だということです。この”ビジョン”のお話は先日ご紹介した「スーパーボス」でも出てきました。やはり、優れたリーダーは”ビジョンで人を魅了し、ベクトルを揃える”のですね。
従来型リーダーも否定しない
また、本書が非常にバランスが良いなと感じるのは、従来型のリーダー、すなわち「リードする(引っ張る)リーダー」も否定していないところです。
カリスマ型リーダーを全否定し、ビジョン型リーダーだけを肯定したいわけではありません。
「強いリーダーシップを発揮できる素地を持ちながらも、平時にはビジョン型に徹する」というように、状況に応じて両方のリーダーシップを使い分けられる人こそが、理想的なリーダーです。
戦略だって、時と場合に応じて柔軟に変更しないといけないのだから、リーダーシップの在り方だって、時と場合に応じて変えるべし、ということですね。はい。仰る通りでございます。ちなみに、このお話は、冒頭部分で述べられます。僕は、著者の藤沢久美さんを、本書を読むまで存じ上げませんでしたが、実務家らしいバランス感覚のある論の組み立て方だなぁと早々に感銘を受けまして、続きを読むのが楽しみになりました。
リーダーは考えつくせ
なお、僕が一番感銘を受けたのは「リーダーは考え続けるべき」というお話です。リーダーの意思決定は直感に依る、というカルロス・ゴーンの話を述べた後、著者はこのように続けます。
直感とは、考えに考えて考えつくした末に、ふと浮かび上がってくる決意です。単なる思い付きや何となくのヤマ勘ではありません。
ですから、リーダーの大切な仕事は、つねに考え続けることです。考え続けた人にしか、直感は降りてきません。
考えつくしたからこそ、どんな反論にも動じない信念が生まれてくるのです。
この思想は、コンサルタントの立場でも、非常に共感できます。コンサルティングという仕事は「正解」がない仕事です。従って、どこまで考えても考えきれるということはありませんし、その結論が100%正しいと言い切ることはできません。では、どうするのか。「これだけ考えて、この結論なのだから、(少なくとも僕には)これ以上のものは導き出せない」と言えるレベルまで持っていくわけです。事例調査もします、ヒアリングもしましょう。コスト構造分析なんかもやります。必要と思われることはすべてやり、それらのインプットを脳みそに放り込んで、全身全霊で考え抜くのです。そこまでやっても、100%はないのですが、しかし、最低限の自信をもってクライアントとの打ち合わせの場に臨むことが出来ます。
経営は、さらにその一歩先に進む必要があります。「不退転の覚悟で、右か左か決める」のです。考え抜かずにその場の思い付きで、なんてことができようはずもありませんよね。そんなことしてる人は”経営者”じゃないです。博徒(バクチうち)です。
今日から使えるノウハウが盛りだくさん
本書には、リーダーが、いますぐ使えるノウハウがてんこ盛りです。
- 正直であれ。
- 心配がなくなるまで、考えきろう
- 「言葉づかい」には細心の注意を払おう
- 敵をつくるな。そのために、メンバーを見下すな。信頼しろ。
- 何をしろ、ではなく、なぜするのか、を伝えろ
- メンバーが感じる喜びを「見える化」しよう
などなど。盛りだくさんです。さっそく今日からビシバシ実践していくぞ!と心に誓いました。
ただ、ひとつだけ疑問が・・・
これまで述べてきたように、本書は非常に優れた本だと思うんですね。ノウハウのカタマリです。ただ、ひとつだけ疑問があります。それは「この本、めちゃめちゃ売れてるけど、読者に、実践できるのだろうか」ということです。
僕の思う本書のポイントは「リーダーとしての心構え・生き方」であり、そしてそれをベースとして表出する「リーダーとしてのふるまい方」です。でね。これ、リーダー以外の人でもできるのかしら、、、って思うんですよ。
もちろん、リーダーの考え方を知り、それを目指す、というのは理想的ですし美しいことです。でも、実際問題、その立場にならないとわからないことってたくさんあります。ラッキーなことに僕自身は”経営者”という立場にいますので、明日と言わず、今日”この瞬間”から本書をフル活用していこう!と心に誓ったわけですが、果たして、いわゆる会社員として働く方が、本書をうまく活用できるのでしょうか。
経営者と、会社員の最大の違いは「制約の多さ」です。(もっと言うと、経営者の中でも、創業者経営者とサラリーマン経営者の間にも、同様の違いがありますね。)最大の制約は「自分の言葉でビジョンを語る」という機会が少ないということです。実際、本書の中にも、以下のような記述があります。
役員会などで社長の話を聞く機会が比較的多い役員たちとは違って、中間管理職と言うのはビジョン伝達の障害となりがちだからです。
中間管理職にあるリーダーたちは、社長と共にする時間がさほど多くないうえ、目標などを受け止める立場ですから、どうしてもビジョンの共有よりも、ノルマや数字の下達に重きを置きがちになってしまう。
こういう状況を打破する”経営者”の下で働く方々は、それぞれのポジションに応じて「ビジョンを語るリーダーのロール」を果たすことが出来るでしょう。しかし、多くの会社はそうなっていません。(っていうか、多くの会社がそうなってたら、本書は書かれてませんよね)
ということで、いわゆる経営者ではない人たちが、本書をどのように活用するのかが僕にはわかりません。
しかしながら、本書が良書であることは間違いないので、弊社のマネジャー層に強制的に読ませてみて、どういう風に感じ、また、何をどういう風に実践していくつもりかをヒアリングしてみたいと思います。え?強制的に読ませる時点で、ビジョン型リーダーじゃないんじゃないかですって?はっはっは。ま、いいじゃないですか。細かいことは。w