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BIツール、Iot、そして全てのオンプレDBをクラウドに
米国時間の10/6~10/9に開催されましたAWS最大のイベント「re:Invent 2015」で様々な情報が発表されました。その中で、新しいAWSサービスからAWSの狙いについて、技術者視点で勝手に予想したいと思います。また、ここに記載されている内容について、サービス詳細の調査を行っていないサービスもあるため、1つのご参考にお考えください。
Amazon QuickSightによるBIツールのクラウド化
今回の新サービスの発表で、1番の予想外だったサービスは、QuickSightではないでしょうか?
現在まで、AWSは、データ分析の分野では、クライドDBまでのサービスしか提供しておらず、それ以降のグラフなどでのビジュアライズは、Tableauなどの優れたBIツールを使うしかありませんでした。そして、このような他社のBIツールを使うことは、AWS自体も推奨していました。しかし、QuickSightの登場により、このビジュアライズの作業自体もAWSで行えることになります。
Tableauのように優れたビジュアライズ機能などは、備わっていないと思いますが、AWS上のDBに接続するだけで、簡単に適切なグラフ作成までが行えるのは非常に魅力的です。
(詳しくは:Amazon QuickSightはTableauを脅かす存在になりうるのか)
AWS Iotを中心としたIotデバイスの処理エンジンをクラウド化
そろそろ出るのではないかと予想されていたのが、AWS Iotです。
これを使うことで「赤外線センサーの受信情報をしきい値をルールとして設定する」ことで、面倒なコーディングの手間を減らすことができます。また、デバイスがオフラインの時に情報を溜め込んで、オンラインになったら情報を送るなどのネットワーク機能なども含まれています。
このAWS IotからAmazon Kinesis(メッセージを送る機能)へメッセージを送ることで、複数のIotデバイスの情報処理をAWS上で一括で行えるようになります。更に、今回、Amazon Kinesisのメッセージ処理で様々な機能追加が発表されました。
1つ目は、Amazon Kinesisの追加機能です。従来までは、IotデバイスからAmazon Kinesisにメッセージを送り、そのメッセージをAmazon EC2(仮想PC)などに実装したプログラムで処理するしかありませんでした。しかし、新機能の「Amazon Kinesis Firehose」によって、自動的にAmazon S3(ネットワークストレージ)やAmazon Redshift(ビッグデータ向けDB)にデータをアップロードできるようになります。更に、新機能の「Amazon Kinesis Analytics」によって、Amazon Kinesisの情報をフィルタリングなどができるようになります。
2つ目は、Amazon Lambda(イベント起動のバッチ定義のようなもの)の追加機能です。Amazon Lamdbaは、Amazon S3を監視して、アップロードされたらバッチを起動することができるため、Iot向きです。今回の追加機能として、Amazon Lambdaのコーディング方法にPython言語が追加されました。そして、Python言語は、Iotのデバイス開発でも使用されることが多い言語のため、Iot開発者にとって馴染み深いものです。
3つ目は、仮想マシン(Amazon EC2/ECS)の新しいインスタンス(PCグレード)です。簡単な機能の場合、Amazon Lambdaで開発可能ですが、開発言語や機能制約のため、Amazon EC2などを使用する場面が発生する場合があります。そして、このIotのメッセージの処理の場合、大きなマシンパワーは必要なく、メモリ、CPUは、最小限の環境で大丈夫な場合があります。この様な小規模な仮想マシンのインスタンスとして、今回、発表された「t2.nano」が使えそうです。
この「t2.nano」は、メモリ構成は512MB、CPUは最小限の環境ですが、CPUバースト機能がありますので、負荷が一定時間に集中した時などにCPUパワーを上げる機能が備わってます。(バーストには一部制約があります)
AWS Database Migration Service、SnowballなどによりクラウドDBへの乗換が加速
今までAmazon RedshiftなどのDBへのデータのインポート処理として、インポート命令(コマンド)などが提供されていましたが、オンプレDBからAWSへのDBへの移行を行うためには、テーブル構成変更や移行システムの開発、そして、移行時間が重荷になっていました。しかし、今回の新サービス発表によって、AWSのDBへの移行負担が軽減されそうです。
1つ目は、「Database Migration Service」と「Schema Conversion Tool」です。これらを使うことでAWSのコンソール画面の操作だけで、異なる種類のDB間の移行を行うことができるようになります。
「Database Migration Service」では、インターネットに接続されたDB上のテーブル情報を、AWSのクラウドDBであるAmazon RDSにデータコピーが行えるようになります。更に、「Schema Conversion Tool」では、テーブル情報以外のユーザーファンクション(作成したDB関数)などの移行が行えるようです。これらのサービスによって、殆ど手を加える必要なく、低価格でAWSのクラウドDBへの乗換ができるようになります。
新サービスの発表では、オンプレ環境のORACLE、SQL Serverから、Amazon RDS(MySQL / Aurora / MariaDB)を例にしていましたが、その他の移行元のオンプレDBの種類、または、移行先としてRedshiftなどへも可能か気になります。
2つ目は、「AWS Import/Export Snowball」と呼ばれる暗号化保存を行う外付けハードディスクを使ったサービスです。如何にAWSのサービスが優れていても、インターネットの回線速度については、どうすることもできません。そのため、大量データのAWSサービスへのアップロード処理には、ネットワーク回線のスピードによって、何日も掛かる場合がありました。しかし、AWS Import/Export Snowballを使うことで、1台当たり50TBの大容量データを高速、かつ、安全にAmazon S3などにアップロードすることができるようになります。
(詳しくは:AWS Database Migration Service によってオンプレDBからの移行が加速する)
新サービスの追加でAWSはより「自由」になる
今回、ご紹介した新サービス以外にも、セキュリティ関係や開発支援関係の新サービスが多く発表されました。これらのサービスをうまく組み合わせることで、様々なソリューションをAWS上で実現できるようになります。そして、これらの組合せは、非常に豊富なため、導入先環境や技術者のスキルによって選択することができます。今回のイベントのキーノート1日目で、「自由」というテーマで様々な新サービスや事例が発表されましたが、まさに、自由にAWSサービスを組み合わせてクラウドに乗り換えることにより、今までのオンプレ環境の管理リスクから解放されると思います。