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外部講演:パネルディスカッション発言録|【日立ITセミナー】収益を生むカスタマー・アナリティクスの実践手法 ~オムニチャネル時代の戦略的データ活用」

AUTHOR :  網野 知博

ビッグデータ活用は「目的」が先。目的を実現するのが「システム」。

株式会社日立製作所主催のセミナー「HITACHI ITセミナー:収益を生むカスタマー・アナリティクスの実践手法 ~オムニチャネル時代の戦略的データ活用」に登壇致しました。基調講演に登壇した後、パネルディスカッションにもお声掛けいただきました。

開催日時:2014年7月11日(火)14:30~17:00

講演は3部構成となっており、今回は、第3部のパネルディスカッションの発言録をご紹介致します。

  • 第1部:「収益を生み出すためのビッグデータ分析+戦略思考」(講演者:株式会社ギックス網野知博)
  • 第2部:データ分析で、お客様のこころをつかむ ~お客様の多様な価値観を理解する為のデータ活用術~(株式会社日立製作所:加藤 二朗氏)
  • 第3部:パネルディスカッション
参加者(敬称略):
  • 日立製作所 ソフトウェア開発本部 ビッグデータソリューション部 主管技師 加藤二郎氏(モデレーター)
  • 日立製作所 ソフトウェア開発本部 ビッグデータソリューション部 主任技師 石川太一氏
  • 日立製作所 ビジネス・アプリケーション本部 ビジネス・アナリティクス部 グループマネージャー 松村幸治氏
  • 日立製作所 ビッグデータソリューション本部 先端ビジネス開発センター 主任技師 吉田順氏
  • 株式会社ギックス 網野知博

パネル・ディスカッション 発言要旨

加藤さん:

テーマは既に決めてありまして、大きく3つのテーマに関して議論をしていきます。

①大量データが貯まっているので、活用できないか?
ビッグデータに関するアンケートを実施すると60%は基幹データの活用に興味があるという回答があり、SNSや非定型データ等よりもまずは自社にあるデータの活用法を考えている企業が多い為にこのようなテーマを設けました。

②PoCはやっているが、効果が出ない
実証実験はやっているが、なかなか成果や投資判断が下りないという声を聞くことが多いので皆さんのご意見を伺いたいと思います

③エクセルで十分ではないか?
ビッグデータといっているが、手元にあるデータを回すことでアウトカムを得るには十分なのか?ビッグデータという領域まで踏み込むべきなのか?という悩みもあるのかなと思います。

まずは、①大量データが貯まっているので、活用できないか?という点から始めさせて頂きます。例えば、「基幹データを大量に保有している」、「従来は捨てていたデータを、ストレージのコストが下がり、貯めていくことが可能になったけど、貯めて意味があるのか?」という質問を受けることがあります。このような質問に対して、どんな考え方やデータの活用方法があるかについて皆さんの意見を伺いたいと思います。まずは、網野さんいかがですか?

網野:

データを大量に持っているけど、活用したいという依頼は5-6年前からよく受けています。まずは、データをマネタイズするような新規事業をしたいのか、事業を強化する為に使いたいのかという切り分けをします。後者であれば、先ほど講演内容でご説明したように「そもそも事業を強化するために、どこにデータを活用すべきか」ということを明らかにするアプローチを取ります。そのデータが使えるか否かはその後に出てくる問題ですね。

前者の場合は考え方のアプローチが異なります。電子マネーやクレジットカード、POSなどの様々なログやWebアクセス履歴や流入キーワードなど「データは宝の山だ」と言われる事が多いです。そのため、「宝の山なら、なんかマネタイズしたい!」というご相談なのですが、情報を商材にするのはドル箱ではなくて、結構大変だよということを最初に説明します。持っているデータがいい素材だったとしても、その情報だけでビジネスを作るには不十分なので、価値を生むために欠けているピースを埋めれるようなデータを取れる仕組みを作らないとお金にならないということを理解して頂きます。

前者なのか、後者なのか、まずそのへんを切り分けて、それでもやりたいと言うのであれば、「じゃあ考えてみましょうか」という感じで進めているのが私のアプローチです。

加藤さん:

まずは、お客様の本気度を探るということですね。その為に明確な切り分けが必要ということですね。吉田さんは、大量データの活用に関して提案をする際にどんな点がブレークスルーになると思いますか?

吉田さん:

私はSEの方と一緒に、IT部門に伺うことが多いのですが、その中でよく聞くのが、網野さんの講演にもあったように、「社長、経営幹部が”何かビッグデータでできないのか?”と言われてまして、データは貯まっているんですが・・・」いうことケースですね。去年までは7-8割がそんな感じでしたね。IT部門に先ほどのような、「新規事業がやりたいのか?」ということ聞いても、話が進まないので、「事例を持ってきてください」と言われるのですが、事例が自社にハマらないことも多いので、ITと業務部門を週一回のワーキングテーブルに集めて考えることが多いですね。そこでベンダーという立場で「こんなことできるんじゃないですか?」とアドバイスをすることが多いです。その中で、IT部門はコスト削減の波に煽られて予算があまりないとケースがあります。その中で、いかにビジネスを大きくし、IT部門が主導権を握るのかということへの興味が高まっています。一方で、業務課題から入るとIT部門の力を発揮できないこともあります。そういう場合はSNSの活用や、店舗の中にセンサーを張り巡らせて、店舗の中の導線を見るといった、ビッグデータとはいえないかもしれないですが、ビッグデータっぽいトライアルを実施して、それを経営幹部にあげて、社内でアピールしてもらうという手段を取ってもらうこともあります。こういったアプローチに違和感を感じる方には、業務課題から入ることもありますが、そうすると「業務コンサルと変わらないよね」と言われることも多いので、お客様と話合いながら、その中でお客さんと筋道を作っていくことになりますね。

加藤さん:

確かにお二人の話を聞くと、コンタクトする部門で悩みが違うんですよね。大量データの活用という点で、ビジネスサイドは何か課題を解決するような糸口を見つけたい、IT部門はインフラ運用として業務を効率化したい等という思いがありますよね。インフラ側から見ていかがですか、石川さん?

石川さん:

私はデータベース運用やITコンサルをやっているので、情報システム部門の方と話すことが多いです。彼らも「ビッグデータを活用しろ」というお題に対して、悩んでいます。「データは貯まっています」、「大量のシスログ、ネットワークログがあるんですが、捨ててしまっています」というケースがあります。その中で、「このデータ量なら、Hadoopやりましょう、ストリームエンジンでリアルタイム制御しましょう」という話を私からするんですが、目的がないので、PoCとして実験までいっても、結果予算が取れないということが多いです。これは我々もお客様も悩んでいる点ですね。

加藤さん;

やはり、システム課題ありきでは、ブレークスルーできないということですね。フロントのお客様と接することが多い松村さんは、BAコンシェルジュという立場でどうお考えですか? ブレークスルーのポイント等あれば教えて下さい。

松村さん:

私は「データを誰が、何の為に、どういう形式で使うんですか?」というユーザーヒアリングから入ります。このヒアリングの結果はだいたい3つに分かれます。

一つ目は、「データ抽出」です。情報システム部の方がSQLを叩いて、抜いていたデータを自動化することですね。

二つ目は「データ分析」、三つ目はダッシュボードなどの「情報共有」です。データの活用という観点だと「情報共有」という部分が重要になってきます。二つ目の「データ分析」で止めてしまうと、「こういう分析、レポートが作れるんだ」という個人ベースのノウハウになってしまうので、活用という意味では「情報共有」までいけるかがデータ活用におけるポイントになってくるかなと思います。

加藤さん:

やはり、「なんの為にデータを活用するのかが明確でない」とい点が前に進まない原因なのかなと思います。後は網野さんが仰る本気度ですね。

網野:

そうですね。先ほどお伝えした「新規事業に活用する」というケースでは、情報システム部の方や既存の事業企画の方だけでは、限界があるのではないかと思います。データという素材を使ったビジネスは「新商品開発」と同じようなアプローチになります。我々もデータを使って何か新規事業をやりたいという時には、マーケティングのアプローチを取って、新商品を作る時と同じアプローチで、新サービスを作っていきます。データを使って何ができるかだけではなく、新商品を開発するプロセスで進めて行かないとビジネスとしてはHappenedしません。データハンドリングができる人たちだけでは、新規事業は作れないので誰が主体になるのかが非常に重要になります。一方で、そういった人材をつけてまで”本気”で立ち上げるつもりがあるのか?という踏絵にもなりますね。

加藤さん:

新規事業として、全く異なるアプローチが必要ということですよね。ある意味、目的をはっきりさせるということも考えると、吉田さんが仰ったようにそこまでいくとコンサルティング領域ですよね。そうなるとやはり、業務課題に取り組むというアプローチになるんですか?

吉田さん:

確かに我々のマイスターサービスはコンサルティング×分析を合わせたサービスものです。我々は分析部隊がいる日立研究所や日立コンサルティングというコンサル部隊も持っています。以前は分断されていたこれらの組織を、ひとつの組織としてまとめて、上流から下流まで支援できるサービスを始めました。以前は研究者が客前に立つことも多かったので、突然難しい分析手法の話になってお客様が混乱することもあったのですが、お客様にどんな価値を提供できるのかというところまで説明できるような状態になった今は、データ活用の目的から、実際の分析作業までを支援できるようなサービスを提供しています。これにより、お客様の業務課題解決に取り組んでいるというのが現状です。

加藤さん:

いくつかお話がありますが、新規事業にしろ、事業の強化にせよ、データ活用には意思が明確でないといけないということですね。個人的に思っているのは、分析を活用する上での体制、お客様側での人員の確保も必要になりますよね。「Hadoopやりたいんだけど、自社に技術者がいないんだよね」というようなケースも経験しました。データ活用の目的を定めるということも含めて、体制という面で、いかがですか?

網野:

分析して結果を出すには、「分析する仕組み(システム)」、「分析する人・組織」、「施策を実行する人・組織」という3役が必要なります。それをいきなり全てクライアントに求めて、それが無いと実行できないと言うのは無理ですよね。私は以前IBMにいたので、メーカー側の心理は分かります。仕組みを作るために高い箱(ハードウェア)や高いソフトウェアを買ってもらえばそれだけでハッピーです。しかし、最初からデカい箱とソフトを押し付ける、分析する人は自前で揃えてね、というのはあんまりじゃないかと思うんですよね。ですので、我々は生データがあるなら、それをそのまま預かり、ガリっと回して分析し、「こんな結果が出ました、我々はこう解釈したので、こんなアクションを試しに実施してもらえませんか?」というアプローチを取ります。つまり、三つ目のアクションだけを、クライアントさんにお願いすることにしています。それにより、施策の結果が良かった場合にはプロセスを定常化するために、それに対して、システムや業務プロセスを作っていきます。そうなったら、我々だけで全てをまかなうことはできないので、プロセス作りはコンサルに、システム作りは日立さん等にお願いしてもらえばいいと思っています。

我々は、「データ活用を試してみたいんだけど、いきなり箱買うとか人採るとか無理だよ。」という企業様のアンメットニーズを埋めにいっている感じですね。

加藤さん:

トライアルを実施する上で、専門的な技術が必要になるので、そこを担うということですね。松村さんは実際に現場を見て、実際にツールを使いこなせていないといったことって経験としてありますか?

松村さん:

そうですね、最近セルフBIという単語があります。ユーザーが自分でレポートを作ったり、分析ができるといったものになります。レポートは作れるけど、元データとなるインプットがうまく取れていません、レポートが出るまでに半日かかりますというという問題が出てくるケースもありますね。その場合は要件が明確になっているので、そこから分析基盤を整えるというアプローチを積極的に進めていますね。

加藤さん:

トライアルをやった上で、基盤を整えるというサービスも必要だということですね。吉田さんの経験の中で、お客様側で実際に体制を作ってくれた企業ってありますか?

吉田さん:

そうでね、まだ道半ばというところですね。大きな企業の中では社内の研究開発部門でまかなえるのではないかということに気付く方が増えましたね。我々が持っている研修サービス通じて、社内で体制を整える支援をすることもありますが、ただ、お客様にとってもコア、ノンコアな業務の改善なのか、定型・非定型な分析なのか等の切り分けをし、どこまで自社でやるか、アウトソースするのかを議論しているというのが現状です。日立側のリソース問題から見えてくることもあります。我々は200名の分析部隊を抱えていますが、専門領域等が異なるので、どういうところに人を割くかという点を試行錯誤しているので、その中で培った経験をお客様に共有することなんかもあります。

網野:

我々が支援しているビュカードさんでは、我々が分析結果を提供しているサービスを実施しながら、自社の中で分析の素養がある方を担当としてアサイン頂き、我々が家庭教師となって彼らに学んで頂き、自社でも回せるような体制を作って頂いております。そして、自社の社員がある程度育ちつつあるタイミングで、並行して社外から分析やマーケティングがわかる人を中途で採用しています。この順番をビューカードの経営者の方が非常に意識していまして、いきなり自前でやるのは無理だからGiXoを雇って時間を買おう、しかしずっと彼らに頼むわけにはいかないので、GiXoを使って社内の人を教育しつつ、そして専門家を中途採用で外から入れて、社内の人間にスキルをトランスファーしていこう、そして次の領域をまたGiXoを使って回して行こうというサイクルを回しています。いきなり中途採用で人を取っても分析を活用する、データや顧客と言う観点で物事を進めると言う文化が根付いていないと中途採用で来た人は浮いてしまってすぐに辞めてしまう事が多いですが、それを受け入れられる文化や風土を作ってから積極的に中途採用を進めているあたりが非常にうまい経営をされる企業だと感じております。

大手企業だと人事ローテーションがあるので、アナリティクスという職種を専門家として育てるのか、社外から人を取るのか、子会社を持つのか、といった判断は非常に難しいですよね。とはいえ、これはこの30年間でIT・情報システム部門が通ってきた道と同じなので、その辺はうまく遣って行く事ができるのではないでしょうか。ただ、一朝一夕にはいかないということですよね。

加藤さん:

データ活用の目的を明確にし、プロを使って社内で試しにやってみて、その上で体制を長期的な視点で考えるということですね。では、次の設問です。

「PoCをやっているが、投資につながらない」という点です。トライアルまでいっても、価値訴求がうまくできずに、実行につながらないということですよね。

石川さん、いかがですか?

石川さん:

今私が一番知りたいのは、「本当にお客さんはビッグデータに投資するのか」ということです。ブームにはなっていますが、体制や人材が揃えられない、アウトカムが想像できないから踏み込めないという方が多いと思います。ビッグデータ市場が大きいと言われている中でお客さんの財布事情はどんな感じなんでしょうか、網野さん?

網野さん:

メディア側を刺激する意見をあえてぶち込んでみますが、このビッグデータブームは完全にメディアによって作られたものだと思っています。先の講演でお話した通り、ビッグデータブームの背景はテクノロジーの進化から来ているものですが、本質的な背景などを無視してメディア側が流行らせたいと言う想いが強いようですね。メディアはブームを作ると、メーカーが高額の広告枠を買ってくれるので、それはブームにしない手はありませんよね。そして、思惑通りプチブームが到来しつつある。笑

そしてそれを見た経営者の方々が「ビッグデータでなんかやれ」というのですが、ぶっちゃけほとんどの方が「で、何するんだっけ?」という状態にあると思います。ですので、現時点ではそこまでお財布の中身が用意されていないと思います。ブーム先行、期待値先行で結局失望されて終わってしまうのが非常に怖いですよね。実際にはもの凄く経営の高度化に寄与する可能性のある領域ですので。

石川さん:

私も同じような印象を受けています。テクニカルな話をお客様にしても、課題を掘り下げるとDWHに関するものだったりするわけです。売上の実績すら見えていなくて、ビッグデータ活用以前に足元に課題が山積みという企業もあります。

加藤さん:

松村さんは実際のビッグデータ活用に向けた提案でどんな印象を受けていますか?

松村さん:

そうですね、BIツールもコモディティ化が進んでいます。私が思うのは、PoCはパフォーマン性能等を見ていますが、本来は網野さんが言われていたPoBC(プルーフ・オブ・ビジネス・コンセプト)であるべきだと考えています。先ほど楽屋で話を聞いたばかりですが。笑

加藤さん:

一つの目の話に戻ってしまいますが、PoCで何を求めていますかということになりますよね?ツールの性能評価だけでは、投資につながらないので、成果を出せるのかが重要ですよね。吉田さんがやっている実験では、その後どのような話につながるんですか?

吉田さん:

そうですね、例えば天気をBIで予測する際に、的中率がどうかという話をしても進みません。分析結果をアクションにつなげていける人がどれだけ社内にいるかという点が需要かなと思います。日立製作所は博報堂と組んでマーケティング領域の支援をするような提案をしています。異業種と組むことで、我々の分析と博報堂さんのマーケティング領域の強みを活かして、課題解決につなげられるということもあると感じています。

加藤さん:

やはり吉田さんが仰るように、実際の性能検証だけでなく、効果まで検証しないと投資までつながらないということですね。いかがですか、網野さん?

網野:

そうですね、PoC、プルーフオブコンセプトなので、どんなコンセプトをプルーフするかが重要ですよね。

例えば、この規模のデータ量を想定の時間内に処理できるのか、と言うコンセプトを証明するケースなら、いきなりハードウェアを持ち込んで回してみるというのでよろしいと思います。ですが、どれだけの処理時間で対応できるのか、ではなく、ビジネスとして価値が出るのか、つまり、あるビジネスに対するコンセプトを証明する場合はアプローチは異なります。今日は時間がないので、PoBCについて詳しく知りたいかたはITproの記事を読んでみて下さい。

石川さん:

網野さんに質問なんですが、情報システム部の予算が減らされている中で、彼らを手助けするようなアプローチってあるんでしょうか?

網野:

情報システム部門はもっと高飛車になってもいいと思っています。笑

彼らは何十億という予算を握っているわけですよね、対して現業部門、事業部門はシステムを使いながら、自分達のビジネスをエンハンスメントして行きたい訳です。であれば、現業部門から「こんなことやりたいんだけど」と情報システム部門に依頼し、情報システム部門は「RoIなどを見ながら、これは価値ありそうだから、お前のところのために予算を投下するよ、仕組みはこっちが考えてやるからさ。」くらいに強く出てもいいんじゃないかなと。言い換えれば、現業部門は自ら成果を出すためのシステム活用を学んで、その仕組みを実現するためにそれをシステム部にアピールする。システム部門はそれを安く・早く・使いやすく実現する方法を常に学んで、システム部に提供して行く。USなどだと普通にそういう会社もありますよね。昔はシスコさんに伺ったらそういうやり方をしていました。

システムによってビジネスを拡大できることはいっぱいあるので、情報システム部門はビジネス側の要望をジャッジして、実現をさせてあげる役割であっていいと思っています。なかなかやるのは難しいのですが、そういうことをご理解して頂ける経営者の方をナーチャリングしていかないと、日本はますます立ち後れてしまうというところもありますね。これはもはやシステム部だけの問題ではなく、企業の問題なのですけど。

加藤さん:

我々もお客様の意識を変えるようにリードしていかないといけないということですね。本当にビジネスを変えられるのかということを検証しないといけない、社内の起案に関してもビジネスに対してどういう効果を生み出せるのかという検証の提案をしないと投資へのブレークスルーにならないので、そういうことを包括できるアプローチを我々が支援していかなといけいないということだと思います。

では、最後の質問にうつります。「実はエクセルで十分なのでは?」という点です。

ビッグデータは量ではなく、アウトカムがビッグであれば、ビッグデータだという網野さんのお話も含めて、手元でデータハンドリングする上でのツールやプロセスをどう考えるべきかということを議論したいと思います。

まずは網野さんからお願いします。

網野:

企画部やビジネスを実行する側の方に生データをいじってもらって、何が見えるのかを体験してもらうのが一番だと思っています。それに最適なのがエクセルであればエクセルで始めてもらえばいいのかなと思っております。エクセルでできることは沢山あるんです。とはいえ、エクセルだとトランザクションデータは1週間分も回らないかも知れません。しかし1週間分だけでも、こういう傾向を得ることができて事業構造を理解できた。すると、更に前月対比で見たい、前年対比で見たい、曜日毎や天候毎に見たい、イベントや外部環境の変化も参考値に入れたい、などと人間の欲がでてきます。笑 そうなった際に、日立さんから巨大なシステムを買えばいいと思っています。そういうところから始めればいいんじゃないかなぁと。

加藤さん:

まずは、効果を体感してもらうということですね。とはいえ、エクセルだけでは我々商売にならないんですが、エクセルライクなものやエクセルと親和性が高いようなものってありますか?

松村さん:

網野さんが仰るように、実はエクセルって結構賢いんですよ。回帰分析や近似曲線をひくことができちゃうんです。一方で、分析者が増えてくると「情報の共有」という観点で情報共有基盤としてのBIツールがあってもいいんじゃないかなと思いますね。あとは、セキュリティー等の観点でも規模が大きくなってくるとそういう部分をサポートできるツールが必要になってきますね自分で作ったレポートのレイアウトを保存しておけば、誰かがそのレポートを開いた時に最新版のデータで見ることができるといったメリットはありますし。

網野:

念のため言っておくと、私はエクセルが最強だと言っているわけではありませんよ。笑

事業企画の方に試しに使って頂くのであれば、簡易なBIツールでもエクセルでも何でも良いから、まずはとにかくローデータを使って遊んでみてよと言う事です。試してもらった上で、その後の実践編に入って行けば良い。私は別にマイクロソフトにお金をもらっているわけではありませんので、エクセルをお勧めしている訳ではありません。笑

加藤さん:

ますはデータに触ってごらんということですね。

網野:

そうなんです、なんでもいいんです。例えば、統計解析をしたいのであれば、Rという統計解析もできる無料のソフトウェアがあります。SPSS等を導入しないでもまず使ってみればいいと思いますね。それによって統計解析によりどんなことがわかるのかと知ってもらいたいですね。安価で便利なものが今はたくさん出てきているので、まずは試してみて欲しいんです。それで価値を感じたら、日立さんのようなしっかりした会社さんに話を持っていき、しっかりしたシステムを構築すれば良いと思っています。

加藤さん:

なるほど。石川さんはインフラ側の立場からどのようにお考えですか?

石川さん:

私達もいきなり1千万円以上するシステムの予算をお客様に用意して頂けるとは思っていません。やはりPoBCの段階で効果が見込める、予算も取れそうだという段階まで、手軽なツールでやってみて、その先でIT要件が膨らむのであれば、プラットフォームまで検討して頂くという流れが自然かなと思います。

加藤さん:

吉田さんはマイスターとして、簡易的なツールも使われるかと思いますが、いかげですか?

吉田さん:

私自身は最近エクセルを使うことが多いです。日立のHiRDB、BIツール、エクセルを組み合わせた仕事に携わることが多かったからなんですが、エクセル地獄にはまっています。笑

HiRDBは早いので、すぐ結果が出てきます。出てきた結果をエクセルで加工していく際に、エクセルの処理能力が追い付かずということがあります。エクセルは100万行までいけるからと、70万件のデータ処理を依頼されたのですが、メモリ不足で待ちの時間が長くなったりすることがよくあります。モノは使いようで、エクセルでどこまでやるのか、どこからはDBを活用するのかということを考えないと時間のロスが大きくなりますね。ツールの処理性能は年々上がっているので、エクセルとツールのバランスを意識することも必要です。網野さんが仰っていた、2次属性データを付ける際には大量のクロス集計をしていくことになるので、エクセル地獄に陥る可能性があります。よく使う2次属性があるのであれば、DBの中に予備の項目を設けてDB側で工夫して処理する事も試行錯誤していく上で意識して頂けるとエクセル地獄を回避できると思います。

加藤さん:

先ほど網野さんにお話にあったような、データ価値を体感するにはハンドリングのハードルが低いもの、そこから本格的にデータ活用に取り組む際にはどの領域でツールを使うのかという線引きを見極めるべきで、その辺を専門家の我々にお任せ頂けると良いですね。笑

本日の結論としては、「何の為にデータを活用するのか明確にして、実際に試してみて、価値を検証する。その先に実現方式やシステム化があるのではないか。」ということだと思います。網野さんの講演の話にあった「儲け話のメカニズム」や「キードライバー」ということを主語にデータの活用を考えていけば、ビッグデータで陥りがちな悩みを回避できるのではないかということだと思います。本日はありがとうございました。

※速報版のため記載内容に誤記を含んでいる可能性があります。

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