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消費者サービスを成長させる「主役は人間」のデータ活用 — 人気サービスを支えた宇川氏(ギックス顧問)が考える「データインフォームド」とは

AUTHOR :   ギックス

プロダクトマネージャーとして、6000万ダウンロードを超えるコカ・コーラ公式アプリ「Coke ON®」をはじめ、様々な企業のデジタルサービスの成長を支え、現在はco-PdM合同会社代表の宇川有人氏が、2025年4月、ギックスに外部顧問コンシューマー・マーケティング・エキスパートとして参画しました。宇川氏はNTTドコモ、日本コカ・コーラなどで複数の“消費者向けデジタルサービス””O2O(オンラインtoオフライン)サービス”を黎明期から手掛けてきた第一人者です。

本記事では、4月22日に開催される「GiXoデータインフォームド・サミット2025」で予定されている宇川氏とギックス代表取締役COO花谷とのパネルディスカッションに先立ち、そのキャリアの軌跡やギックス参画の背景、宇川氏の“データとの向き合い方”についてご紹介します。

“消費者向けサービス×デジタル”の領域で積み上げてきた20年のキャリア

花谷:外部顧問として宇川さんに参画いただけることになり、本当にうれしく思っています。

宇川:ありがとうございます。今回、GPN(GiXo Professional Network)の一員として、ギックスに参画することになったのは、とても面白いご縁だなと思っています。僕としても、自分のこれまでの経験や考え方と、ギックスが掲げる「あらゆる判断を、Data-Informedに。」というパーパスが非常にフィットするなと感じていて、今回のご縁をありがたく思っています。

花谷:GPNは雇用形態にこだわらず、各領域のプロフェッショナルがギックスの思想に共感した上で、当社の事業成長に向けて伴走していただくというコンセプトで運営されていますので、宇川さんのご参画は、当社としてはまさに願ったり叶ったりです。あらためて宇川さんのキャリアを伺えますか?

宇川:2003年から20年以上、消費者向けのデジタルサービスに携わってきました。新卒で入社したNTTドコモではiモードや「おサイフケータイ」の企画担当として、複数の事業会社さんとのアライアンスを通じて、プラットフォーマーとして消費者にさまざまなサービスを届けるということをやってきました。

この時に培われた感覚として、「自社」「パートナー」「消費者」の三方よし(Win-Win-Win)の関係性があります。ドコモ側はプラットフォームとして場を提供し、コンビニエンスストアや飲料メーカー、飲食店チェーンを始めとした多くの企業に参画いただいて。企業がやりたいことだけを押し付けるのではなく、プラットフォーマーとして、パートナー企業が実現したいことと消費者の期待をつなぐ“仲立ち”の立場で関わっていました。

コンシューマー・マーケティング・エキスパート(外部顧問)
宇川 有人(うかわ・ありひと)氏

2003年株式会社NTTドコモ入社。サービス企画、アライアンス、新規事業開発を担当。以来、リクルート、アクセンチュアなどで、デジタルマーケティングやEコマースの業務に従事。
2016年日本コカ・コーラ株式会社入社。Coke ON®サービスのプロダクトマネジャーとして、サービス企画・開発・運用・広告の全般をリード。2024年co-PdM合同会社を設立。流通・製造・サービス業を中心に、消費者マーケティング・データ活用の伴走支援を行う。2025年より、GiXo Professional Networkに参画。

宇川:その企業の魅力を最大に引き出すためには、業界特性や消費行動の理解に加えて、パートナー企業の強み・弱み、プラットフォーム利用者の特徴を把握したうえでの“掛け算”が必要です。そうした背景理解をベースに動いていたことが、後にも活きていると思います。

サービスを捉える際にも、企業視点・プロダクトアウトの「セリングプロポジション」なのか、消費者視点の「コンシューマーバリュー」なのか、そういった視点の違いを見極める感覚が、基本動作として身についたかなと。

花谷:まさに、相手企業と消費者、プラットフォーマーの三者を見ながら設計していたわけですね。

宇川:そうですね。その後、複数の事業会社とコンサルティング会社を経て、ドコモ時代のパートナーでもあった日本コカ・コーラ社に転じて、コンシューマーサービスであるアプリ「Coke ON®」のプロダクトマネジメントをしてきました。企画から開発・運用、広告やデータ活用など全般を立ち上げから9年ほどリードし、6000万ダウンロードを超える人気サービスに成長しています。現在はこれまでの経験を広く社会へと還元するためco-PdMという会社を立ち上げて、共同プロダクトマネージャーとして、クライアントのサービス成長・チーム強化・事業強化にコミットしています。

花谷:“Connecting the dots”というか、やってきたこと全てが繋がっているんですね。記者として編集をしていた時期もあったとか。

宇川:学生時代のアルバイトですけど、私にとって大きな経験になりました。

ライティングスキルの中では“簡潔に端的に伝える”もそうだけれど、“関心を持たれるニュースは何か”という嗅覚がすごく大事で。さまざまな読者の方がいる中で、誰に語りかけるのか、お互いの前提知識や切り口をどこに置くのかを整理して。たくさんの情報の中でも、何に反応してもらえるかというところを見極めてフォーカスし、タイトルをつける。これはビジネスプロデューサーやコンサルタントにも通ずる大事なポイントだなと。

花谷:宇川さんの書き方・伝え方から感銘を受けたと言う社内のメンバーが多いですが、この頃から培われたものだったんですね。

株式会社ギックス
代表取締役COO/Data-Informed事業本部長
花谷 慎太郎

京都大学工学部卒業後、日本工営株式会社、IBM Business Consulting Services 社(現日本IBM株式会社)を経て、2012年、株式会社ギックス創業メンバーとして取締役に就任。2023年10月より株式会社ギックス代表取締役COOに就任。

“主役は人間”、データインフォームドの本質

花谷:宇川さんがデータを扱うようになったのはいつ頃からでしょうか?

宇川:デジタルサービスに携わってきたので、ずっとデータを扱ってはいましたが、クラウド環境の進化もあり、「Coke ON®」サービスに携わっている頃に、飛躍的にデータ活用の質と量が広がったと思います。サービスを成長させるために様々なデータを活用する中で出会ったのが「データドリブン」に対する「データインフォームド」という考え方でした。

花谷:初めてお会いしたのもその頃でしたね。我々もパーパスに置いている言葉ですが、宇川さんは「データインフォームド」についてどのように捉えてますか?

宇川:“主役は人間”というところが肝だと思いますね。「データドリブン」という言葉の方が有名ですが、”データが示すものが真実で、これに従うことが正しい”というニュアンスにモヤモヤしていたので、「データインフォームド」の考えがしっくりきました。データは不完全なものであり、サービスを提供する側が、顧客にどのような価値・体験を提供したいのか、目的や意思が定まっていてこそ、正しくデータの隙間を埋めて顧客と向き合うことができます。

大前提として、データは企業の所有物だから好きに使って良いものではなくて、消費者が預けてくれているものだと思っています。企業はお客様自身により良いサービス体験として還元するために、誠実に向き合うことが大事だと。

花谷:謙虚な姿勢は非常に重要ですよね。顧客に対してもですし、データというのは不完全であって、わかること・できることには限りがあるという大前提を意識しておかないといけないというお話も教えていただきました。

宇川:数回の購買行動でその人を知った気になるべきではない、ということですね。ごく当たり前のことなんだけど、データ界隈ではそれが起こってしまっている。

人の行動ってものすごく複雑なものだし、衝動的で感覚的なものだったりする。それに対してデータが炙り出せるものはあくまで一部であって。手元にあるデータだけを事実として解釈を短絡的に繋ぐことで、正しくない結果を導き出してしまうこともあります。

花谷:都合のいいストーリーを創作してしまうみたいな話も起こりますしね。

宇川:そうなんです。SNSでいいねしてくれたから好意があるはず、というのは誤りだと誰でもわかる。でも実際にビジネスアナリティクスなどで短絡的に似たような結論を導き出してしまっていることも。このようなところから顧客理解の齟齬や過剰リコメンドのようなケースが生じています。

花谷:相手の立場に立つ、押し付けない、という当たり前のことだけれど、それがデータ分析で本当にできているか?と。

宇川:ギックスはデータが持つ力や使い方を知っています。だからこそ今後はデータの限界についても深く理解して、誠実に消費者だったりデータと向き合っていくっていうところが、データインフォームドな姿勢として重要なんでしょうね。

花谷:ありがとうございます。宇川さんの“主役は人間”という考え方に深く共感しました。

当社は現在「顧客理解No.1カンパニー」を掲げて、データを用いた顧客価値の最大化を目指しています。この思想と、消費者と長年向き合ってきた宇川さんのご経験が非常に親和性が高いと感じていて。そうした知見を、ギックスのクライアントにも届けられると思うと、本当に心強いです。

宇川:リアルなお店では、お客さんの様子を見て「今この声かけがちょうどいいな」など考えますよね。それをデジタルでどう実現するかが“データインフォームドな接客”で、私がこれまで向き合ってきた領域。

今後はギックスの外部顧問として、DIコンサルティングサービスの一環として、消費者向けサービスの視点を生かして、クライアントのサービス成長や顧客価値の最大化に向けて向けたデータ活用を支援していきます。

“人間を主役にするデータ活用”を深掘る──GiXoデータインフォームド・サミット2025に登壇

2025年4月22日には「GiXoデータインフォームド・サミット2025」が開催され、宇川氏と花谷のパネルディスカッション「データインフォームドの本質〜データへの向き合い方〜」も予定されています。

当日は、本記事で語られた「データとの向き合い方」や「データインフォームドな接客」、そしてプロダクト開発の裏側にある“思想”をさらに深掘りしてお伝えする予定です。

宇川氏がこれまで実践してきた、「人間を主役としたデータ活用」の全体像が語られる貴重なセッションに、ぜひご注目ください。

お申し込み:https://disummit2025.peatix.com/

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