本記事は、株式会社ギックスの運営していた分析情報サイト graffe/グラーフ より移設されました(2019/7/1)
「関所」はログのポイント
本連載ではログについての説明をさせていただいています。前回はわたしたちが「ログ」という言葉を耳にする以前から実際に触れていた「ログ」を紹介しました。今回は「移動」に関するログを説明します。「入鉄炮に出女」「箱根八里は馬でも越すが越すに越されぬ大井川」とは共に「箱根の関所」を題材にした言葉ですが、このような「関所」は昔から「ログの記録場所」として代表的なポイントでした。「移動」を記録したいという意図は昔から共通のものであったわけです。現代私たちの周りにも、以下のような「移動」に関するログがあります。
入室退室ログ
みなさんの会社ではオフィスに入る時にカードキーを使っていらっしゃいますか?また取引先を訪問したときに来客用カードをもらって入り口ゲートを通ったことはありませんか?このカードキーを入り口にかざしてドアを開ける時「~~~さんが入室した・ゲートインした」というログが記録されています。このログは盗難等の問題が発生した際に入退室の動向を追跡する為の元データとして利用されます。
鉄道利用ログ
みなさんは列車で移動する時にICカード乗車券を使っていらっしゃいますか?私はSuicaを使っています。Suicaと同様に利用できるICカードとして関東圏ではPASMOもありますが、この他にICOCA,PiTaPa,TOICA,manaca,Kitaca,SUGOCA,nimoca,はやかけんなど数多くの交通系ICカードがあります。この交通系ICカードによる鉄道の利用履歴もログとして記録されています。いつ改札機を通って駅構内に入場し、いつ改札機を通って駅構内から退場したのか?このデータはまさにログそのものです。このログはみなさんにも閲覧可能で、ICカードをお持ちの方が券売機にカードを入れると「利用履歴を見る」という旨のボタンが表示されます。これを選択すると利用履歴を見ることができます(Suicaであれば直近50件)。このログを月々の交通費清算の元データとして活用していらっしゃる方も多いのではないでしょうか?
また、このログは鉄道会社側でも管理されており、駅ごとの乗降客数の把握や混雑区間・混雑時間帯の把握などに役立てられています。
位置情報
みなさんがスマホの地図で目的地検索をなさった時に「自分の現在位置」が地図上に表示されているのを見たことはないでしょうか?この実はこの位置情報もログなのです。地図検索のサービス提供者はこのログを解析することで「いつどこに何人ぐらいの人間がいたか」という情報を得ています。
注…そう思うとちょっと怖いと感じる方々もいらっしゃるかもしれませんが、通常の位置情報記録には「個人を特定する情報は一緒に記録しない」という配慮がなされています。またサービス提供者も個人を特定できる情報をあらかじめ抹消した状態でログデータを取り扱っています。
ちなみに位置の手がかりとなる情報は、
- スマホが人工衛星(GPS衛星)から取得した情報を元に自分の位置を割り出す事
- スマホが自分の接続している無線LAN(WiFi)基地設置場所の情報を得る事
- 携帯電話の基地局が端末の情報を得る事
などから得られます。
(上記3は、犯罪捜査など非常に特別な場合に限られます。)
実は、移動ログには2種類のログがある
ここまで記事を読んでくださって、お気づきになったかたもいらっしゃるかもしれません。上記の「入室退室ログ・鉄道利用ログ」と「位置情報ログ」には記録方法に大きな違いがあります。
関所型(まちぶせ型):
「入室退室ログ・鉄道利用ログ」はこちらにあてはまります。ログを記録する際の「捕捉位置」は固定されているタイプです。「何月何日何時何分に、ここにいたのは、誰?」というログが記録されます。
追跡型:
「位置情報ログ」はこちらにあてはまります。ログを記録する際の「捕捉位置」が固定されていないタイプです。「何月何日何時何分に、誰さんは、どこにいた?」というログが記録されます。
従来一般的に「追跡型のログから関所型のログの情報を作り出す事は可能だが、逆は難しい」といわれてきました。しかし追跡型ログは今まで技術的な理由からログそのものを記録する事が困難であった事も事実でした。これが近年スマートフォンの普及によって追跡型ログの記録が可能になり新たなサービスの誕生へと繋がっています。「待ち合わせをしている友達が道に迷ってこれない」といった場合、以前であれば携帯電話で会話をしながら説明していましたが今ならLINEで位置情報をメッセージとして送信すれば、相手に自分のいる場所を伝える事ができます。このように移動に関するログはログの中でも急速に用途を拡大しているログのひとつなのです。
次回は「健康」に関するログを説明します。