不確実性の高まりを”Data Informed”と”Agile”で乗り越える|考え方を考える

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新型コロナは不確実性を極限まで高めた

新型コロナ(COVID-19)が世界に広がり、各国で外出自粛などの動きが起こりました。既に世界で30万人もの人が亡くなり、その数はまだまだ増えると言われています。当然ながら、経済活動も大きな影響を受けています。

この事態を受けて、様々な企業、組織、個人が、アフター・コロナの社会、もしくは、ウィズ・コロナの社会について、予測・考察を進めています。少し検索すれば、コンサルティング・ファームや、大企業が発信したレポートを幾つも見つけることができるはずです。

これらに書かれた内容は、現時点では、そうなる、とも、そうならない、とも言い切れません。

なぜか。それは、今この瞬間が「極めて不確実性が高い」状況だからです。

何事もなかったかのように元通りになる可能性もあります。あらゆることが大きく変わってしまう可能性もあります。影響の大きさは、業種や業態によっても異なるでしょうし、地域や気候・風土などによっても異なってくるでしょう。

平常時、すなわち、連続性のある世界においては、理論的には無限に描けるシナリオに対して、現実的な判断基準が存在します。「これはありえない」「これは起こり得る」という切り分けを、(データに基づくか否かに関わらず)それまでの経験則によって行うことができるのです。
しかし、不確実性が高まると、これらの基準が(従来ほどには)使えなくなってしまいます。

そんな不確実性の高まった現在において、我々が取り組むべきことは「日々、変わりゆく状況を読み解き、それに柔軟に対応していくこと」です。

Data Driven から Data Informed へ。

不確実性が高いということは、すなわち「先が読めない」ということです。言い換えれば、これまでの「連続性のある世界」から、「非連続な世界」に変貌を遂げてしまったのです。

非連続な世界では、蓄積された過去データからパターンを読み解いて、それによって未来を予測する、という機械学習の「王道」ともいうべき活用が極めて難しくなります。

もちろん、コロナによる影響が限定的な領域であれば、これまでの機械学習モデルを適用し続けられます。しかしながら、どの領域が大きな影響を受け、どの領域がそれほど影響を受けないのかを、現時点で断定することができません。

現時点で言えることは「どの領域で、既存のモデルが使えるかはわからない」です。この状況下で取り組むべきは、「データによって導き出される正解を知る」という考え方にこだわり過ぎず、「データを元に、自らの頭で考える」というData Informedのスタンスに立つことです。
(関連記事: データインフォームドとは

当然ながら、考えるための材料をデータから抽出するために「変化」を機械学習によって検知することも可能でしょう。ビフォー・コロナとアフター・コロナ(もしくは、ウィズ・コロナ)で、何が変化したのかは、データ分析によって明らかにすることが可能です。

しかし、ここで出てくるものは、「変化の内容」に過ぎません。 仮説(=変化の理由)の ”種” なのです。

例えば、
・あるお店において、来客数が減っている、しかし、1回あたりの購買単価が上がっている
・世の中全般で、通勤経路を外れた駅/商業エリアでの買い物は減った、しかし、職場や自宅の最寄り駅付近の買い物が増えている
・家計支出において、旅行や娯楽に関する支出は減った、しかし、住宅関連支出は増えた
といった事象が、データから明らかになったとしましょう。

このような情報をインプットとして、そこから「人の生活様式の変化」を読み取るのは、人間の仕事です。これが、まさに、データによってインフォームドされた状態です。

なぜ、わざわざ、そんなことをしなければならないのか。それは「データで分かったことを、そのまま直線的に打ち手につなぐ」というData Drivenのアプローチでは、不確実性が高い状況に対応しきれないからです。一つの事実から直線的に物事を考えるのではなく、複数の事実を組み合わせて様々な仮説を考えだし、その中で「どれが正しそうか」を考えていくことが求められます。

「来客数が減っている」という事実と、「通勤経路を外れた駅/商業エリアでの買い物が減っている」という事実を組み合わせれば、『この店は、多くの人の通勤経路から外れているのではないか』という仮説が生まれます。
そうすると「来客数を元通りに増やす」というのは、極めて困難ではないか、と考える事ができます。
一方で「1回あたりの購買単価が上がっている」ということを踏まえると「まとめ買い需要がある」という可能性も見えてきます。
さらには「住宅関連の支出は増えている」ということを考えると「住環境が快適になるグッズを陳列すると、まとめ買い時の ”ついで買い” 喚起ができるかもしれない」ということも思いつけるかもしれません。

これは、データを読み解いて得られた情報を基にして、人間が考え出した仮説です。機械によって導き出された答えではありません。

不確実であるということは、明確な答えが無いということです。答えが分からない中で意思決定をするためには、可能な範囲のデータを用いて「確証はないが、こういうことではないか」という仮説を持つこと、そして、それをデータを用いて検証していく ”仮説検証型の思考様式” が重要となるのです。

Waterfall から Agile へ

思考様式が仮説検証型になると、物事の進め方も、それに適応していく必要があります。

そこで出てくるキーワードがAgile(アジャイル)です。一般的には、システム開発用語として使われることが多いのですが、必ずしもそれに限らずに適用可能な概念です。ひとことで言えば、「状況に応じて、どんどん変化していくことを大前提にしよう」というアプローチです。やってみて、違っていたら変更/改善する、という「反復(イテレーション)」をプロセスとして組み込むことで、本当に必要なモノ、本当に役立つモノ、本当にやるべきこと、をどんどん明らかにしていきます。

対義語として挙げられるのは、Waterfall(ウォーターフォール)、すなわち、「滝」です。これは、伝統的な物事の進め方で、不確実性が低い状態に対して適合性が高いやり方です。最初に、何が必要かを完全に定義します。そして、その定義通りに物事を進めます。順番通りに工程を進めていき、後戻りすることはありません。その様が「滝を下るようである」ということで、ウォーターフォールと呼ばれます。

しかしながら、今日の社会は、コロナによって、非常に不確実性が高まっています。何がどちらの方向に振れるか、またその振れ幅がどれくらい大きいのかを現時点で断言するのは困難です。

そこで、「アジャイル型で物事を進めていく」ことの重要性が増します。状況がどのように変化しているのかをタイムリーに捕捉し、当初の想定と同じか違うかを確認し、同じであればそのまま継続し、違っていれば対応策を検討の上、実行に移すのです。

これは、先ほど述べたデータ・インフォームドの考え方と、非常に相性が良いアプローチです。すなわち
・その時点で分かっている情報で、一旦「こうじゃないか」と仮説を持つ
・できることを、できる範囲で実行してみて (ツールや仕組であれば、プロトタイプを作ってみて) 、その結果や進捗状況をデータで確認する
・データによる確認結果やプロトタイプの状態をもとに議論や判断を行い、軌道修正の必要性を見極める
・軌道修正が必要なければそのまま実行を続け(もしくはプロトタイプに機能を追加し)、軌道修正すべきということであれば、対策を練る(もしくは機能変更を行う)
という流れで物事を進めていくわけです。

大切なのは、常に可能な限り最新の情報を収集することと、足りない部分は頭の中で補って意思決定をすることです。そして、誤りが検知されれば、躊躇せず、即座に方向転換を行うのです。 このように物事(プロジェクト、あるいは、開発)を推進すれば、不確実性の高い状況を乗り越えることができるはずです。

なお、コロナ以前から、ウォーターフォール型の進め方の限界は各所で指摘されており、アジャイル型で物事を進める機運が高まっていました。現在の不確実性の高まりを好機と捉え、アジャイル型の推進体制に大きく舵を切るべきではないでしょうか。

その場にとどまるためには、全力で走り続けなければならない(It takes all the running you can do, to keep in the same place.)

これはルイス・キャロルの「鏡の国のアリス」に登場する「赤の女王」のセリフです。

一般的には、生物の進化の話と紐づけた「赤の女王仮説( Red Queen’s Hypothesis )」として扱われることが多いのですが、企業・事業の社会への適合性向上、あるいは、個々人の成長に関するキーフレーズとして捉えることもできます。

物事が変化し続ける世界において、立ち止まるということは、退化を意味します。変化に適応しない種(企業、事業、個人)は絶滅の道を辿ります。

何度も申し上げるように、昨今、社会の不確実性が非常に高まっています。この状況においては「昨日の事実で明日を判断する」ことはできても、「これまでの経緯で1年後を判断する」ことは、極めて難しいと言えます。

そのため、「昨日の事実で明日を判断する」を、高速に、短サイクルで繰り返していくことが求められます。そう、データ・インフォームドです。アジャイルです。

昨日の答えに囚われすぎることなく、日々、最新情報を用いて自らをアップデートしていきましょう。そして「世界がどちらの方向に向かっているのか」「世界がどう変わるのか(あるいは変わらないのか)」「状況がどういう形で落ち着くのか」「そのとき、自社・担当事業・自分自身は、どのようにしてその状況に適応するのか」を、考えるのです。

社会の変化をしっかりと捉えること。そして、その変化の兆候を読み解いて「確からしい仮説」を導き出すこと。その仮説を検証し、変えるべきことは変えること。これを繰り返すのが ”走り続ける” です。

こうして、全力で走り続けたものだけが、変わり続ける社会・市場環境の中に、しっかりと ”留まり続ける” ことができるのです。

弊社は、データ・インフォームドとアジャイルの2つの武器を両手に携えて、この「コロナ禍」と呼ばれる事態に挑みます。弊社の関わるクライアント企業様が不確実な状況を単に乗り越えるだけではなく、その強みをさらに研ぎ澄まし、市場の中で確固たる競争優位を築けるよう、全力を尽くしてご支援します。

現在直面する「不確実な時代」をしっかりと乗り越え、日本全体、ひいては世界全体が、より良い形に発展することを目指して歩んでいきましょう。

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