第8回:AWS × Azure × Google Cloud Platform を様々な角度から評価 ~AWSは絶対王者なのか?~|経営者のためのクラウド講座

  • f
  • t
  • p
  • h
  • l
title_cloud_knowledge_for_executives

テクノロジーだけがクラウドサービスの評価にはならない

今まで7回にわたってクラウドサービスの紹介を行ってきました。その中で3大クラウドサービスとして、Amazon社の「Amazon Web Services(通称:AWS)」、Microsoft社の「Azure」、Google社の「Google Cloud Platform」の各サービスについて説明してきましたが、実際のところ、どのクラウドサービスにするか迷われている経営者の皆さんもいらっしゃると思っています。世間一般的には、AWSの勢いがあり、様々な情報は入ってくると思いますが、他のクラウドサービスはメディアに載ることがAWSに比べて少なく、マイナー感はあります。

今回は、実体験や様々なメディアや人から聞いた話などを纏めて、公平な立場で3大クラウドサービスの特徴を説明したいと思います。

ガートナーのマジック・クアドラントではAWSとAzureが圧勝

前日、ガートナー(Gartner)の2016年の調査結果「Magic Quadrant for Cloud Infrastructure as a Service」が発表されました。(引用:AWSとMSがIaaS市場で圧倒–ガートナーの「マジック・クアドラント」 – ZDNet Japan)

ガートナーは、IT分野の調査・助言を行う米国の企業であり、ビジョンの完全性(Completeness of Vision)と実行能力(Ability to Execute)の2軸で評価しています。この調査結果によると、AWS と Microsoft(Azure) がリーダーに位置付けられており、他のクラウドサービスを引き離しています。また、Googleは、実行能力が低く評価され、ビジョナリーに位置付けられています。そして、他のクラウドサービスはニッチプレーヤーに位置付けられていることから、マイナーなクラウドサービスとなっていいます。

実際に3つのクラウドサービスを使った私の考えとしては、今回のガートナーの調査結果は非常に納得のいく結果でした。やはり、AWSは、テクノロジー的にもシェア的にも王者だと思います。その証拠として2016年第2四半期のAmazon社全体の営業利益の過半数がAWSによるものになっています。(参照:アマゾンの第2四半期、31%増収–クラウドが好調 – ZDNet Japan) そして、その AWS に追いつこうとしている Azure があり、この1位と2位の関係は何年も前から変わりません。他のクラウドサービスはというと、Google Cloud Platform は技術者同士のコミュニティーの中で話題にはなるものも、マイナー感は非常にあります。

3大クラウドサービスを様々な角度から評価

ガートナーの評価でもAWSは高く評価されていました。だからと言ってもAWSが本当に優れているのでしょうか? ここからはテクノロジー以外の視点も加えて、3大クラウドサービスを評価したいと思います。

幅広い要件と技術者に対応できる AWS

AWSは非常に多種のサービスを提供しています。今までご紹介したクラウドサーバークラウドデータベースでも多くのOSやデータベース種類をサポートしていることをご理解いただいていると思います。また、これらの主要サービス以外に100種類以上のオプションや小さなサービスが多くあり、これらのオプションやサービスを簡単に繋げることが出来ます。つまり、AWSは主要サービスを中心に様々なオプションやサービスをブロックのように組み合わせて、様々なサービスを簡単に構築できるのが特徴です。

また、システムを構築するために必要になってくるのがプログラミング言語です。AWSは、下記のAWS SDKと呼ばれるAWSの機能を使用するための開発ツールを使ってシステム構築をしますが、このSDKがサポートしているプログラミング言語の種類は大変多く、様々なスキルのプログラマーがAWSを使用することが可能です。(参照:[graffe]SDKとは?~ソフトウェア開発環境を作るためのツールセット~)

また、AWSはユーザー同士が繋がる機会が大変多いです。4半期に1回のAWSパートナーミーティングでは最新のサービスの事例紹介、そして懇親会でのパートナー同士の繋がりを作ることも可能です。また、AWS、またはパートナー企業が主催するイベントも大変多く、その中で最大のコミュニティーのJAWS-UG(Japan AWS User Group)は、各地で様々なイベントを開催しています。その中で年に1回の JAWS DAYS では全国から数百人のユーザーが集まり、生きた事例紹介などが行われる祭りのようなイベントがあります。このようなイベントが大変多く、技術者同士、または企業同士が繋がる機会が大変多いことから、技術者としてはAWSを使えることはステータスでもあり喜びでもあるのです。

日本企業のニーズに合う Azure

クラウドサービス業界シェア2位のAzure。1位のAWSに比べるとサービスの種類は少なく、コミュニティー勢いは弱いです。しかし、Microsoft社には、古くからWindows OSとOfficeソフトによって、AWSにはないMicrosoft社とパートナー企業との太いパイプがあります。そのため、Microsoft社は、自社のOSやOfficeソフト、SharePointなどと一緒にAzureの導入をサポートしてくれます。そのため、既に多くのMicrosoft社のソフトを導入している企業では、Azureを導入するメリットは多くあります。

また、他のクラウドサービスでは、使用料金がドル単位であるため、為替の影響がありましたが、Azureは使用料金が円単位になるため為替の影響は受けません。また、請求書をもとにした銀行振り込みも可能であるなど、日本企業の細かいニーズに対応してくれるため、他のクラウドサービスより導入しやすい面もあります。

また、Azureのテクノロジー的には、AWSと類似するサービスが多いですが、画像処理や分析を行うMedia Services、Windowsログの収集・分析を行う Azure Log Analytics などAWSにはないサービスも提供しています。また、大量データを分析するクラウドデータベースの Azure SQL Data Warehouse は、数分で起動・停止によって必要な時間にだけ使用できるため、Amazon Redshift に比べて使用料金を抑えることが可能です。そのため、業種・業態によってはAWSよりAzureのサービスがマッチすることがあると思います。(参照:Azure Log Analytics(ログ分析)で、Amazon EC2のWindowsログを監視する)

尖ったサービスの Google Cloud Platform

ガートナーの調査結果では、AWSとAzureに大きな差がついてしまった Google Cloud Platform。他の2つのクラウドサービスと比べると圧倒的にサービスの種類は少ないように思えます。また、イベントやインターネットから事例や技術などの情報量が少なく、新規システム構築のハードルが高いです。しかし、Google Cloud Platform は、機械学習やビッグデータ分析のサービスが充実しており、大量データの分析サービスの Google BigQuery では、ツリーアーキテクチャと呼ばれる分散並列処理があり、条件によっては他のクラウドサービスの大量データ分析サービスより早く・安く処理できる場合があります。(参考:Google Cloud Platform は真のクラウドサービスの先駆者なのかもしれない)

複数のクラウドサービスを併用することも選択肢の1つ

新規のクラウドサービスのシステム構築するために、クラウドベンダーを1社に絞ることが多いです。しかし、1つに絞ることは選択肢の幅を狭めている事には変わりありません。クラウドサービスは使用料による課金のため、必要なかったらサービスを削除すれば、それ以降の愛用料金は一切かかりません。そのため、様々なクラウドサービスを検証・選定し、それぞれのクラウドサービスの強いサービスを組み合わせて、クラウドベンダー跨ぎで1つのサービスを構築することも選択肢の1つだと思います。

連載:経営者のためのクラウド講座
  1. クラウドを使えない大企業は、ベンチャー企業と戦えるのか
  2. クラウドサービスの課金体系・支払方法は複雑
  3. クラウドサービスのシステムリリースの早さと安さの秘密
  4. クラウドサービスのシステム開発に求められる技術者とは
  5. クラウドストレージによって安く・安全にデータを保存する
  6. クラウドサーバーはアイディア次第で使用用途は無限大
  7. クラウドデータベースは高ければ良いって物ではない! 特徴を見極める必要がある
  8. AWS × Azure × Google Cloud Platform を様々な角度から評価 ~AWSは絶対王者なのか?~ (本編)
  9. クラウドサービスのサーバーレスは銀の弾ではない
  10. クラウドサービスの機械学習サービスの整理
関連記事
  • f
  • t
  • p
  • h
  • l