第6回:クラウドサーバーはアイディア次第で使用用途は無限大|経営者のためのクラウド講座
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- POSTED : 2016.08.01 08:16
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目次
クラウドサーバーはオンプレミスとサーバーと使用感は同じ
前回は、クラウドサービスの主要サービスの1つであるストレージサービスのクラウドストレージについて説明しました。今回は、開発したWebアプリケーションやバッチプログラムなどを配置して、実行する時などに使用するサーバーサービスのクラウドサーバーについて、経営者の皆さんに抑えていただきたいポイントだけを説明したいと思います。また、今回もオンプレミスのサーバーとAmazon社の「Amazon Web Services(通称:AWS)」、Microsoft社の「Azure」、Google社の「Google Cloud Platform」のクラウドサーバーの比較をしたいと思います。
クラウドサーバーとは?
クラウドサービスのクラウドサーバーとは、クラウドサービス上にOSの入ったサーバー環境を構築し、インターネットを通して遠隔操作するサービスです。クラウドサービスを行っている企業によっては「クラウドサーバー」の事を「仮想コンピュータ」や「仮想デスクトップ」、「リモートサーバー」などと呼称している場合がありますが、今回はこれらを「クラウドサーバー」に統一して説明したいと思います。
クラウドサービスのクラウドサーバーと聞くと「専門の技術者でないと扱えない」というイメージを持たれる方も多いと思いますが、実際は、オンプレミスのサーバーと同じ感覚でククラウドサーバーを使うことが可能です。オンプレミスとクラウドサービスの違いは、サーバーが物理的に近くにあるか遠くにあるかです。
クラウドサーバーは遠隔操作でサーバーのOSにアクセスする必要がありますが、クラウドサーバーのOSがWindows系の場合は、Windowsの標準ソフトの「リモートデスクトップ」によって、クラウドサーバーのOSにアクセスすることができます。アクセスすると下記のように「リモートデスクトップ」のウィンドウ内にOSの画面が表示されます。このリモートデスクトップ上では、普通にマウス/キーボードで操作が行え、ファイル転送もコピー&ペーストで行えます。そのため、Windowsを普段使っている人なら抵抗なくクラウドサーバーを使えると思います。
また、クラウドサーバーの記憶内容は、クラウドサーバーをシャットダウンしても消えることはありません。クラウドサービスの解約を終了するか、クラウドサーバーのイメージを削除するまで永久的に残すことが可能です。
3大クラウドサービスのクラウドサーバーを比較
AWS、Azure、Google Cloud Platform にもそれぞれクラウドサーバーがあり、Amazon EC2(Elastic Compute Cloud)、 Azure 仮想マシン(Virtual Machines)、Google Compute Engine というサービスがあります。これらのクラウドサーバーは、クラウドサービスのブラウザ管理コンソール(ポータル)などから簡単に環境を用意することが可能です。
クラウドサーバーの1つのサーバー単位は「インスタンス」と呼ばれています。このインスタンスは、CPUやメモリ、OSなどの組み合わせから構成されています。このインスタンスを選択して、クラウドサーバー環境を用意するのですが、非常に組み合わせ数が多いため、選定基準に困られる場合があると思います。そのため、これらの選ぶポイントについて、下記の表を参考に説明したいと思います。
インスタンスの組み合わせ
下記のAzure 仮想マシンの例のようにCPU(コア)、メモリ(RAM)、ディスクのサイズから用途に合ったインスタンスを選択します。しかし、Amazon EC2 と Google Compute Engine は、記憶媒体(ディスク)は組み合わせの中に含まれていませんので、別のサービスを合わせて使用する必要があります。(別のサービス準備の操作は難しくありません) 記憶媒体を別のサービスとする事で、必要な記憶容量だけ使用できる反面、インスタンスの使用料金以外にも記憶容量分の使用料金が加算されるため、注意が必要です。
また、クラウドサーバーの性能は、CPUコア数が大きく影響します。CPU種類によっては、性能が良いものもありますが、大きく左右するものは、CPUコア数です。なぜ、CPUコア数なのかと言いますと、クラウドサービスの実態は高性能のサーバー群であって、世の中に存在するCPUを使っているためです。そのため、いくらCPUコア数が多いクラウドサーバーを使用しても、実行するプログラムがCPUの並列処理に対応していなければ何の意味もありません。
OS
クラウドサーバーに入れるOSは、インスタンスの組み合わせ選択後にOSを選択します。選択できるOSは、各クラウドサーバーによって異なり、Azure 仮想マシン はサーバーOSの Windows Server シリーズ以外に、一般向けの Windows 8.1 や Windows 10 が選択できます。また、Google Compute Engine は Linux系のOSが充実しており、使いやすいの Ubuntu から歴史のある FreeBSD まで幅広く用意しています。
クラウドサーバーの使用用途
クラウドサーバーの使用用途を考えた場合、24時間365日稼働し続ける大規模サービスを思い浮かべる方も多いと思いますが、クラウドサーバーは、早く、手軽に、そして安く使えるため、大規模サービス以外でも様々な活用方法があります。これから、下記の表に沿って、サーバーサービスの一歩進んだ使用方法について説明したいと思います。
24時間365日稼働し続けるサービス
24時間365日稼働し続けるサービスにとって、サービスの停止は死活問題です。そのため、オンプレミスのサーバー環境の構築には、非常に時間をかけ「アクセス数が急激に増えたときの回避策」や「稼働中のサーバーが想定外の事態になった時に代用のサーバーに切り替える仕組み」などの障害対策を何重にも構築する必要があります。
しかし、クラウドサーバーには、これらの「もしもの場合の対策」が標準機能、またはオプション機能で用意されています。標準機能としては、サーバーにハードウエア障害(故障)があったとしても、利用者側は全く意識をしない間にクラウドサービス側で自動的に対処してくれます。これらのリカバリー機能によって、Amazon EC2 は 99.95% の可用性(連続して稼働し続ける能力)があります。また、急激にサーバー負荷が上がった場合にサーバー台数を自動的に増やす「オートスケーリング」機能や負荷を分散させる「ロードバランシング」がオプション機能として追加することも可能です。
この完成されたクラウドサーバーを月々1万円台の使用料金から始めることが可能です。また、短い時間でクラウドサーバーの処理性能を上げることも可能ですので、システム負荷状況によって徐々に処理性能を上げることも可能です。(参照:第3回:クラウドサービスのシステムリリースの早さと安さの秘密)
スポット処理
動画処理や分析処理では、時々、パソコンで耐えられないほどの高負荷の処理を行うことがあります。このような時にクラウドサーバーをスポット処理として使用した場合、サーバーの準備時間と費用を大幅に減らすことが可能です。
下記のイメージは、現在(2016.08.01)、クラウドサーバーで最も高性能な Amazon EC2 の X1インスタンスです。このインスタンスは、CPUコア数が64個(vCPUはAWS内での処理性能単位)、メモリが1,952GBという規格外の性能です。これほどのサーバーをオンプレミスで用意しようとした時、1,000万円以上の出費は覚悟した方がいいと思います。しかし、Amazon EC2 は $13.338/時間 という手の届く金額設定になっています。また、インスタンスを停止している間はインスタンス使用料金が掛からないため、使用したい時間だけ使えば、それほど大きな出費にはなりません。
昔は、負荷のかかる処理を行う場合は、非常に高価な機器が必要でハードルが高かったですが、クラウドサーバーを使用することで、環境の導入時間と費用を抑えられるため、簡単に高負荷の処理が行えるようになりました。
検証用・クラウドコンピューティング
クラウドサーバーを必要な時に必要な時間だけ使う用途は、高性能なクラウドサーバーだけではありません。ある程度の性能のクラウドサーバーの場合は、検証用、またはクラウドコンピューティングとして使用することも可能です。
クラウドサーバーは、停止中はインスタンス使用料金が発生しません。その特性を生かして、開発したアプリの検証環境として、様々な動作環境を作成して動作検証を行い、検証が終わったら次回の検証環境として停止・保管していることが可能です。また、クラウドサーバーのイメージ(OS設定、保存情報)は、複製することも可能なため、1つのインスタンスに対してアプリのインストールなどの環境設定を行い、そのイメージを何個も複製する事で、多くの利用者に対して同一の動作環境を提供できます。(アプリのライセンスの管理には注意)
このような検証用・クラウドコンピューティングの用途でクラウドサーバーを使用する場合は、Azure 仮想マシンが最適だと考えています。理由として、Azure 仮想マシンのOSとして、Windows 8.1 / 10 が選択できるため、Windows ユーザーには扱いやすいためです。また、Azure 仮想マシンのインスタンス構成の中には、記憶媒体の容量も含まれているため、インスタンスを完全に停止した状態では、一切の使用料の課金が発生しないためです。
クラウドサーバーはクラウドサービスで最も自由度が高いサービス
このように早く、安く使えるクラウドサーバーは、Windows のリモートデスクトップを使うことで、サーバー以外の用途でも使えることを分かっていただけたと思います。
また、クラウドサーバーは、クラウドサービスの他のサービスのように機能に特化していない反面、クラウドサーバーのOSに対して、アプリのインストールなどのカスタマイズが行えることで、様々な場面で使用することができます。そのため、クラウドサーバーだけでそれなりの規模のシステムを構築することは可能です。しかし、大規模なシステムを構築する場合は、クラウドサーバー中心に他のどのクラウドサービスをの機能を組み合わせるかが重要になってきます。
次回は、クラウドサービスの主要サービス紹介の最後の記事として、データベースサービスについて説明したいと思います。
連載:経営者のためのクラウド講座
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