2:8 の法則(パレートの法則):上位2割で合計の8割を占める|戦略用語を考える
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- POSTED : 2015.10.16 08:21
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世の中、偏ってるのが普通なんです
各種戦略用語をご紹介するこのシリーズ。本日は「2:8の法則(にはちのほうそく)」という愛称でも有名な「パレートの法則」をご紹介します。
上位2割で全体の8割
さて、いきなり本稿のタイトルと、冒頭の一文を覆すようなことを言いますが、パレートの法則=2:8の法則というのは誤解なんですって。どちらかという、2:8の法則の愛称がパレートの法則、と考えたほうが良さそうです。
パレートの法則とは?
パレートの法則、というのは、その名の通り、パレートさんが発見しました。例によって例の如く、wikipedia先生に教えてもらいましょう。
パレートの法則(パレートのほうそく)とは、経済において、全体の数値の大部分は、全体を構成するうちの一部の要素が生み出しているという説。
80:20の法則、ばらつきの法則などと呼ばれることもあるが、本来は別のものである。イタリアの経済学者ヴィルフレド・パレート(Vilfredo Federico Damaso Pareto)が発見した冪乗則である。経済以外にも自然現象や社会現象等様々な事例に当て嵌められることが多い。
ただし現代で言われるパレートの法則の多くは、法則と言うよりもいわゆる経験則のたぐいである。自然現象や社会現象は決して平均的ではなく、ばらつきや偏りが存在し、それを集約すると一部が全体に大きな影響を持っていることが多い、というごく当たり前の現象をパレートの法則の名を借りて補強している場合が少なくない。
冪乗則ってなんやねん?ってなりますよね。ぼくもなります。っていうか、そもそも、なんて読むねんって感じですよね。「べきじょうそく」です。要は「両対数でグラフを描いたら、線形になるヤツ」という程度の理解で良いと思います。興味のある方は「wikipedia|冪乗則」「wikipedia|パレート分布」あたりをチェックしてみてください。(ちゃんと寄付しましょうね。)
ま、そんな話はあるものの、コンサル界隈で使われる「パレートの法則」という言葉は「上位2割で全体の8割を占める」という意味ですので、実用上は同じものだと思っていて大丈夫です。たぶん。
じゃぁ、2:8の法則とは?
で、そのパレートの法則という愛称をつけられている2:8の法則(にはちのほうそく)とはどういうものなのでしょうか。これも、wikipediaの「パレートの法則」に例示がありますので、そちらを引用します。
- 現代でよくパレートの法則が用いられる事象
- ビジネスにおいて、売上の8割は全顧客の2割が生み出している。よって売上を伸ばすには顧客全員を対象としたサービスを行うよりも、2割の顧客に的を絞ったサービスを行う方が効率的である。
- 商品の売上の8割は、全商品銘柄のうちの2割で生み出している。→ロングテール
- 売上の8割は、全従業員のうちの2割で生み出している。
- 仕事の成果の8割は、費やした時間全体のうちの2割の時間で生み出している。
- 故障の8割は、全部品のうち2割に原因がある。
- 所得税の8割は、課税対象者の2割が担っている。
- プログラムの処理にかかる時間の80%はコード全体の20%の部分が占める。
- 全体の20%が優れた設計ならば実用上80%の状況で優れた能力を発揮する。
まぁ、そういうことですね。2割で8割を占める、って奴です。それにしても、マーフィーの法則感がそこはかとなく漂ってますね。まぁ、いいんですけど。
実際、どういう風に使ってるの?
ということで、なんとなく「パレートさんって人が言ってたことに近い感じのことらしい」ということと「なんか、世の中って、2割集めたら8割になるんだってさ」みたいな空気は掴んでいただけたことと思います。ぶっちゃけ、コンサル界隈の住人と話すだけなら、これくらいわかってれば十分です。
どうやって計算するの?
ここからは、「とはいえ、さすがに、もうちょっと踏み込んでおきたい」と言う方のための解説です。
まず、2:8なのかどうか?を確認する方法からです。手順は簡単です。
- まず、数字を集める(部署別の売上とか、商品別売上とか、交差点毎の交通事故の発生件数とか)
- 続いて、それを”大きい順”に並べる
- 大きい方から順番に”全部足していく”
- 最後に、その総合計に対して、どの時点で80%に到達したかチェックする
と言う流れです。この結果、例えば、100種類の商品のうち、上位20商品くらいで合計の80%に達していたら2:8ですね。
ほんとに、2:8になるの?
実際問題、世の中の多くの物事が、そんなにきれいに2:8になるのか、というお話があります。
答えは「まぁまぁ、なります」です。
例えば、「商品カテゴリ別売上」を分析してみるとします。実際に、ある小売業者のデータで、カテゴリ毎に、SKUを売り上げ上位から並べて合算し、その比率を見ると、以下のような結果が得られます。
カテゴリによって違いはありますが、上の二つでは、上位23%の商品、あるいは、上位21%の商品でカテゴリ売り上げの8割(=2:8)に到達していますね。下側の二つのカテゴリでは、3割くらいになっていますが、それでも、3割くらいの商品で、売上の8割を占める(=3:8)、という偏り具合になっていることがわかります。
つまり、「まぁまぁ2割くらいで、8割くらい占めるものだよね」ということです。
※ちなみに、たまたま昨日、別の小売業者さんの1ヶ月間の販売データを分析していたところ、上位18.5%のSKUで”総販売個数”の80%を占めていました。世界は、そんな感じになってるんですよ。ほんとに。
で、何が分かるの?
尚、勘違いしていただきたくないのは、別に「2:8だったから良い」というわけじゃない、ってことです。反対にいえば「2:8じゃないから悪い」ってことでもないです。単に「2:8くらいになってても、特殊なことじゃないよ」ってことなんですね。
重要なのは誰だ?
まず、この分析でわかるのは、「8割の売上を占める2割の重要顧客は誰だ?」あるいは「8割の売上を占める2割の重要商品は何だ?」ということです。
つまり、100人の顧客に100万円の売上の場合、上位20人で80万円占めてる!ってわけです。そりゃ、その20人が誰なのか知りたいですよね? あるいは、100商品で100万円の場合に、上位20商品で80万円を占めている、ということだったりします。20商品は何だ!?ってなりますね。(なお、この状況が同時に起こっている場合、20商品が20人の顧客に売れている比率が0.8×0.8=0.64くらいになっていても、なんら不思議じゃないってことです。)
こういうことを考える際に、上位の何十人?何十社?何十商品?をチェックすれば、売上の「大半」を押さえられるのかが明確になるのが、2:8の法則をチェックする一つのメリットだと思います。
尚、明らかに重要なのは誰か?何か?ということがわかるからといって、短絡的に「売上の小さい顧客・商品が重要じゃない」と考えるのは危険です。このあたりは”ロングテール”という概念になってきますが、「Amazon vs リアル書店」で考えてもらうとイメージがつくかと思います。
ビジネスの”構造”が特殊じゃないか?
上記は、かなり”あたりまえ”の使い方です。もう一歩踏み込んで「事業の構造」を考えに行く、という使い方は、通好みです。
つまり、2:8=普通 ということが大前提ですので、1:9=寄りすぎじゃないか?、3:7=分散しすぎじゃないか?、という風に考えられるわけです。
もちろん、1:9だと寄りすぎなのか、3:7だと散りすぎなのか、を機械的に判断することはできません。しかし「おかしいのじゃないか?」「普通じゃないのではないか?」と気づくことができます。この”気づき”こそが、分析において非常に重要です。
この気づきから、仮説を編み出そうと試みたとき、このグラフは、単なる「パレートの法則」という言葉を離れ、戦略的に考えるためのツールになるわけです。
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