【”考え方”を考える】文字が多いパワーポイントは、本当にダメなのか?|目的・用途に応じた資料作成
- TAG : Strategy & Art | 思考の型
- POSTED : 2015.05.18 09:02
f t p h l
目次
言いたいことがクリアなら、文字が多くても大丈夫だぞ!
本日は、世の中でよく言われる「このパワポ、字が多いなー」あるいは「なんだよ、細かいなー」というコメントについて考えてみたいと思います。
文字が多いパワポとは何か
文字が多いパワポというのは、どういうものでしょうか?世の中に公開されている「パワポ」資料を見てみましょう。
プレゼン1つで3,000万!戦略コンサルのプレゼンテーションまとめ というサイトで、政府系プロジェクトで公開されているコンサルティングファームのパワーポイントがたくさん紹介されています。こちらのリンク先から、いくつか引用します。(余談ですが、上記リンクにまとめられているコンサルファームの資料は非常に参考になります。”本稿を通読した上で”全てに目を通してみると良いと思いますよ。)
ATカーニー社の例)
アーサー・D・リトル社の例)
こういうのを見た瞬間に「げっ、こまかっ」もしくは「うわっ、字、多っ」となる方も多いでしょう。読む気を無くしてしまったりしますよね。気持ちはわかります。ええ、わかりますよ。
文字が多いと嫌がる理由=目的が共有されていないからだ!
しかし、これらのパワーポイントは、決して「悪い資料」ではありません。それなのに、拒否反応を示してしまう人が多いのは何故でしょう。
多くの場合、目的が共有されていないことに、その原因があります。
プレゼン資料なの? 報告書なの? 討議用資料なの?
世の中には、パワーポイント=プレゼンテーションツール、という思い込みがあります。しかしながら、そんな風に考えていらっしゃる方にとっては大変残念なお知らせなのですが「パワーポイントのアニメーション機能を使っているコンサルタントは、超レアキャラ」です。
パワーポイントは、「図」と「字」を自由自在に組み合わせることができます。(ワードは、「レイアウトの自由度」がイマイチなのです。)この自由度の高さが便利なので、コンサルタントは「伝えたいことを、うまく伝えるための”1枚の絵”をつくるツール」としてパワーポイントを使います。
そうすると、必ずしも「プレゼンテーションの場でのみ使われる」とは限りません。目的によって、”絵の描き方”が変わってくるわけです。
主な資料の作成目的としては、
- 端的な情報を限定的に記載して、聴衆の興味・関心を惹きつける「プレゼン資料」
- 後から誰が読んでも、誤解無くすべての情報を理解することができる「報告資料」
- なんらかのフレームワークや議論の地図に則って、論点や議論の経緯を記載した「討議用資料」
というところでしょうか。
このうち、最初の「プレゼン資料」を取り上げて「文字が少なくて、パッと伝わる資料が欲しいんだ!」と言う方が多いのだと思うわけですね。しかし、それは「パワポだから文字が少ない」のではなく「作成目的がプレゼンだから文字が少ない」のです。他の場合には、文字が多かったり、図が細かかったりするのは”当たり前”なのです。
先ほど引用したコンサルティングファームの成果物は「誰が読んでも分かる報告資料」ですので、字が多くて当然ということになります。
細かい紙を見たくないという「言い訳」をさせるな
この「目的をあらかじめ共有しておく」ということは、上司にしてみれば「これからプロジェクターで投影される資料は、字が多いですが、それは”プレゼン資料じゃない”からですよ」と最初に言われる、ということを意味します。
そして「字が沢山書いてあることには、かくかくしかじかの理由がある」ということを、理解してもらいましょう。例えば「本番のプレゼン(例えば部長会)で●●部長が何をお話されるかの具体的な内容を今日この場で決めきってしまうために、敢えて、細部にわたってしっかりと書いています。この場でお話しした結果を受けて、次回までにプレゼン資料のたたき台を作ってくるので、そこで”プレゼンで使う紙”の確認とさせていただきたいです」みたいな感じです。(つまり、これは「討議用資料」ということですね)
ここまでキチンと伝えて「それでも、俺は、字が多い紙なんて見たくないんだー!ふざけんなー!!ぐあー!!!」という方は、やや論理性に欠ける方だと思いますのであきらめてくださいねって、まぁ、普通、そんな人は管理職にはなれませんので、きっと大丈夫(なハズ)ですよっ!(笑)
でも「無駄に字が多い」のもNG
その一方で、世の中には「無駄に文字が多い」資料が沢山あるのも事実です。具体的には、
- 言いたいことが絞り切れておらず、多くの事柄を並列的に書き連ねている
- 記述されている物事の「レベル感」がバラバラで、どれとどれが”同じグループ”なのか理解できない
- 持って回った言い回し(修飾句)が多く、伝えたいことの本質が分からない
などの問題を含んだ資料が散見されます。
これは、「構造化する」「概念化する」「サマライズ(クリスタライズ)する」というようなテクニックで克服する必要があります。
特に「サマライズ」を意識しよう
構造化や概念化も非常に大事なのですが、特に「文章を短くする」ということで考えると、サマライズ(要約)が大切です。
関連記事(サマライズの手順:クリスタライズする前に文書化しよう)でも書きましたが、「言いたいこと」を先に明確にしなければ、簡潔な文章は書けません。多くの場合「簡潔な文章が書けない」原因は「要約能力が足りない」のではありません。単に「何を言いたいのか自分でもよくわかっていない」のです。
これを解決するには、とにかく、まずは「冗長でいいから、文書にしてみる」ということです。その中で「自分は果たして、どれが言いたいのか?」と自問することが、資料の文字数を減らすために、とても重要なステップになります。
結論:字が多いパワポはアリ。字が多いプレゼンは微妙。
というわけで、結論として言えるのは「字が多いパワポ資料」は存在して良い、ということですね。その一方、「字が多いプレゼン資料」は、ケースバイケースですが、あまり好ましくない、と言えます。(ちなみに、読んだだけでは分からない資料を、補足説明もつけずに安易に”slideshare”で配布する、という風潮は、あんまり好ましくないと僕は思うんですよね。)
また、無駄に字が多いのはNGです。できる限り「簡潔に」表現するために、サマライズ、クリスタライズを心がけてください。
もちろん、プレゼンも「先に言いたいことありき」で作るべきです。このあたりは「連載:プレゼンのコツ」をご参照いただければと思います。
f t p h l